2024年8月号|特集 アルファの夏!

【Part2】|幻の名盤『リンダ・キャリエール』物語

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解説

2024.8.9

文/小川真一


まるで古い友人同士のように過ごしたニューオーリンズでの対面


【Part1】からの続き)

 「物事が急速に動き出したのは、今年(2024年)の1月です」リンダ・キャリエールの制作を担当した蒔田聡氏はこう語る。

 「今年がアルファミュージックの創立55周年ということで、記念の作品としてリンダのアルバムを出すという、プロジェクトの目標ができました」。
 「色々とクリアしなければならない事柄があったのですが、最大の難関はやはりリンダさん本人の承諾ですね」。

 “リンダを探し出せ!”
 この糸口を見つけたのが、現在のアルファミュージックの代表である見上チャールズ一裕氏であったのは、Part1で語ったとおりだ。

 「リンダさんと何度もメールでやり取りをしている間に、僕のロサンゼルスへの出張が決まったんですよ。“もしカリフォルニアに住んでいるのなら会いたいですね”というメッセージを出したんです」。
 彼女の返事は「ごめんなさい、今はルイジアナに戻っちゃったんですよ」。

 少し前までは、西海岸で暮らしていたようなのだが、生まれ故郷のルイジアナ州に引っ越してしまったのだ。というわけで今度は、Zoom(遠隔ヴィデオ・コミュニケーション)を使っての会見の約束をしたが、その時はリンダが風邪をひいてしまい延期になってしまう。こんな調子で、“幻の歌姫”とのすれ違いは続いた。

 想いが叶ったのは、昨年(2023年)の6月。
 「“6月に出張でニューヨークに行くけど、ルイジアナまで飛べば会えますか?”とメールを送ったら“ニューオーリンズで会いましょう”と返信がありました」。
 互いにペン・フレンドと会うような、ときめきを感じたのではないだろうか。やっとリンダ・キャリエール本人と会うことができるのだ。