2024年8月号|特集 アルファの夏!

④小坂忠『HORO』|サブスクで聴くアルファの歴史的名盤

会員限定

レビュー

2024.8.6


小坂忠
『HORO』

1975年1月25日発売

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1. ほうろう
2. 機関車
3. ボン・ボヤージ波止場
4. 氷雨月のスケッチ
5. ゆうがたラブ
6. しらけちまうぜ
7. 流星都市
8. つるべ糸
9. ふうらい坊


シティポップの原風景を描き出した日本初の本格的なR&Bアルバム

 以前にもどこかで書いたことがあるが、個人的に東京で生まれ育ったミュージシャンが街の空気と共に演奏した音楽こそがシティポップだと思っている。80年代のきらびやかな時代のサウンドはどこか人工的、作為的であり、都電が街中を走っていた光景を眺めて育った者たちから自然と生まれた音楽が都会的だったと言うべきか。何も選民思想があってのことではない。小坂を筆頭に、この『HORO』の演奏陣であるティン・パン・アレーの面々、作詞の松本隆も東京出身であり、彼らが聴いていた英米のロックやソウルを東京というフィルターを通して昇華させたのが、極めて洗練された音楽だったということだ。まさに都会の音楽なのである。

文/油納将志