2024年8月号|特集 アルファの夏!

①赤い鳥『竹田の子守唄』|サブスクで聴くアルファの歴史的名盤

レビュー

2024.8.1


赤い鳥
『竹田の子守唄』

1971年7月25日発売

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1. プロローグ(撃墜王リヒトホーフェンのフォッカーDr.1三葉戦闘機)
2. 河
3. 言葉にならない言葉
4. 旅
5. 上村の子守唄
6. 美しくも哀しい人生
7. 翼をください(アルバム・バージョン)
8. 忘れていた朝
9. 田舎暮し
10. 赤い花白い花(アルバム・バージョン)
11. 朝陽の中を
12. 太陽
13. 竹田の子守唄(アルバム・バージョン)


日本のフォーク=民謡との融合を図ったモダン・フォークロアとも言うべき1枚

 赤い鳥にとって3作目となる本作は、合唱曲の定番として今も歌い継がれている国民的楽曲とも言うべき「翼をください」と、ラジオやTVでの放送を避けられて“見て見ぬふり”をされてきた「竹田の子守唄」が収められている。

 この2曲はA面が「竹田の子守唄」、B面が「翼をください」としてシングルでもリリースされ、100万枚を超える大ヒットとなったが、本来推し曲であるべきA面の歌詞が被差別部落と関係があると解釈されて、大手メディアが忌避してきた経緯を持つ。「竹田の子守唄」で歌われる貧しくて子守奉公に出された少女の苦しい生活は、終わりを迎えようとしていた高度成長期の裏側で噴出していた様々な社会問題のひとつと重なり、多くの人の共感と哀感を誘ったが、100万という数字に達したのはプロテスト・ソングとしてだけではなく、赤い鳥の高度なハーモニー、前時代的な民謡をモダンなフォーク・ロックとして昇華させたセンスが伴っていたからにほかならない。

 そして、この「竹田の子守唄」は赤い鳥が’69年にURCからのデビュー・シングルに収められ、また日本のソフト・ロックの名盤として高く評価される1作目『Fly With The Red Birds』に曲タイトルを「人生」として、歌詞も変えて収録されている。本作のは赤い鳥にとっては3度目のヴァージョンであり、バンドの方向性を洋楽志向と民謡の再解釈としていた彼らにとって「竹田の子守唄」は取り組むべき題材であり、成長の度合いを図るマイルストーンのような曲だったのではないだろうか。その進化はアルバム全体にも波及しており、ジャズやポップスなどの同時代性の音楽を取り込みながら、文字通りの意味である日本のフォーク=民謡との融合を図ったモダン・フォークロアとも言うべき1枚に仕上げている。

文/油納将志