連載|伊波真人のシティポップ短歌

今月のお題「大貫妙子 / MIGNONNE」

2024.7.16

今月のお題

大貫妙子/ MIGNONNE1978年


クラウンのPANAMからRVCに移籍した最初の作品であり、トータルで3作目のオリジナル・アルバム。音楽評論家の小倉エージをプロデューサーに迎え、坂本龍一と瀬尾一三がアレンジを担当した。しっとりとした「突然の贈りもの」は、後のヨーロッパ三部作におけるアンニュイ路線を思わせるが、全体的にサウンドの指向性はまちまちで試行錯誤していたことが分かる。とはいえ、「横顔」や「海と少年」といった人気曲が多くクオリティが高い。また近年では「4:00A.M.」がSNSで使用されて話題となり、特に海外ではこの曲が最も再生回数が多いというユニークな現象が起こっている。

恋人になれないままで傍にいる 君との距離を風が抜けてく<br />
恋人になれないままで傍にいる 君との距離を風が抜けてく<br />



伊波真人(いなみ・まさと)

歌人。1984年、群馬県高崎市生まれ。早稲田大学在学中に短歌の創作をはじめる。2013年、「冬の星図」により角川短歌賞受賞。雑誌、新聞を中心に短歌、エッセイ、コラムなどを寄稿。ポップスの作詞家としても活動中。ラジオ、トークイベントへの出演なども行う。音楽への親しみが深く、特にシティポップ、AORの愛好家として知られる。著書に、歌集『ナイトフライト』などがある。