2024年7月号|特集 REBECCA

①VOICE PRINT|REBECCA アルバムWorks

レビュー

2024.7.6


『VOICE PRINT』
1984年5月21日発売

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1. ウェラム・ボートクラブ
2. 百萬弗コネクション
3. 瞳を閉じて
4. ハチドリの証言
5. 蒼ざめた時間 (The Nightmare)
6. QUEEN OF VENUS


商業性よりもバンドの持つ先鋭性を優先した記念すべきメジャーデビュー作品

 日本のロック史に偉大な足跡を残したロックバンドのメジャーデビュー作品。プロデュースは松田聖子や尾崎豊を見出したことで知られる稲垣博司と、かつてはサディスティック・ミカ・バンドのベーシストにして80年代以降の歌謡界を席巻した後藤次利。ミニアルバム専門レーベルとして後藤がCBS・ソニーの中に設立したFITZBEATからのリリース。チャートの最高位は47位に留まっており、セールス的には苦戦した模様。

 しかし一曲目の「ウェラム・ボートクラブ」がフリクションのような鋭利な切れ味のギターから始まり、B-52’sのようなスピード感、そしてスージー&ザ・バンシーズにも通じるコケティッシュな妖しさ、つまり当時最先端のニューウェイヴ/ポスト・パンクの要素がぎっしりと詰まっていることからも分かるように、商業性よりもバンドの持つ先鋭性を優先した結果なのだろう。しかし自分たちが何者であるのか、どんな野望を持ったバンドであるかということをデビュー作の一曲目で余すことなく伝えきるセンスは、その後の成功を引き寄せるだけの非凡さがあったと言うほかない。

 どの曲もすでにオリジナリティが確立されているが、疾走感あるビートロック的なリズムに、つい近年まで公言することすら難しかった女性の生理の苛立ちをぶちまけた(であろう)「ハチドリの証言」は2020年代のフェミニズムを先取りしていた感もある。ライオット・ガールの文脈で再評価されるべき一曲だろう。

文/ドリーミー刑事