2024年7月号|特集 REBECCA

【Part1】そもそもUHD-BDとは?|REBECCAで感動体験!UHD-BD徹底検証!!

スペシャル

2024.7.6


撮影素材から再編集し、最新技術によるアップコンバート、ノイズ除去などを施して高画質化、音源もマルチテープからリミックスし4K映像を収録したREBECCA初のUHD-BD『Dreams on 19900119 Reborn Edition-Return of Blond Saurus-』。その画質と音はどこまで進化したのか。オーディオ評論家の山本浩司が徹底検証する。

文/山本浩司

TV放送で観ているフルHDの4倍の解像度を持つフォーマット「4K」

 4Kテレビとか4K放送とか、4Kということばを耳にする機会は多いけれど、「4K」ってどういう意味かご存知だろうか。Kはキロ、つまり1,000を意味し、「4K=4,000」というわけだ。じゃあ4,000って? はい、映像の水平解像度を指しているのであります。

 ふだんわたしたちがテレビ放送などで観ているフルHD(High Definition)映像の解像度は、「水平1,920×垂直1,080」ピクセル(地上デジタル放送等は伝送帯域の問題で水平方向は1,440ピクセルで伝送されているが…)、つまり2Kだ。UHD (Ultra High Definition)と呼ばれる4K映像は「水平3,840×垂直2,160」ピクセル、つまりフルHDの約4倍の解像度で伝送されるフォーマットなのである。

 ちなみにDVDはSD(Standard Definition)フォーマットで、その解像度は「水平720×垂直480」。画素数にすると345,600。約200万画素のフルHDの6分の1、約800万画素の4Kの24分の1。とても粗い画質なのだが、今なおDVDは生き永らえている。技術革新の激しい映像分野で四半世紀も生き永らえているのは、なんとも不思議な事実だが、パソコンなどの小画面で観るから画素の粗さは気にならないという方が多いのだろうし、何といっても製作費が安く済むということがつくり手には大きいのだろう。しかし、4K大画面テレビで観るにはDVD、さすがにもう画質が粗くてとても見ていられないと思うのだが……。

「4K」は家庭用の鑑賞用映像フォーマットとしての最高峰

 UHDフォーマットは4K以外に8K映像も存在する。しかしながら、8Kの番組はNHKのBS放送とYouTubeに少しあるだけ。一時華々しく登場した8K大画面テレビも一部の富裕層向けに細々と売られているのが現状だ。4K UHDブルーレイのようなパッケージソフトが発売される見込みもまったくない。推進派のNHKも最近になって「8Kは収録方式。4Kにダウンコンバートしたときの画質的メリットが大きい」という発言をするようになっており、家庭用の鑑賞用映像フォーマットとして4Kが最高峰という位置づけに変化してきたと考えていいだろう。また、人間の目の網膜が受容できる解像度は650万画素程度なので、3,200万画素にもなる8K映像は明らかにオーバースペックという声もある。個人的には承服しかねる言説ではあるが……。

 また、UHDフォーマットは解像度が高いだけではなく、明るさの範囲もより大きくなっている。それがHDR(ハイダイナミックレンジ)フォーマットだ。SD、フルHDフォーマットでは明るさの範囲が0から100だったのに対し、HDRを採用した作品では上限がその10倍の1,000、40倍の4,000まで再現することができる。これは現代の4K大画面テレビの表現力の向上に合わせた改善といっていいだろう。ただし、HDRフォーマットの採用はマストではなく、従来通りの明るさの上限を100としたSDR(スタンダードダイナミックレンジ)フォーマットで収録される作品も多い。

UHDブルーレイは「4K」の情報量を余すところなく伝える大容量メディア

 さて、サブスクの映像配信サービスなどネット動画などでも4K解像度&HDRの作品がどんどん増えているが、「最後の映像用高品位パッケージソフト」と思われるUHDブルーレイはネット動画にたいする画質的・音質的アドバンテージはあるのだろうか。

 はい、それは間違いなくあります。UHDブルーレイは2層50G(または66Gバイト)、3層100Gバイトという大容量メディアだということ。それによって、情報量に直結する映像の転送レートを大きく取ることができる。転送レートが10分の1以下のネット動画と比べると、きめ細かなディティール表現や稠密なグラデーション、ノイズの少なさなどで大きなアドバンテージがあることがわかるのである。

 また、音質の違いも大きい。Netflixなどのサブスク型映像配信サービスにはドルビーアトモスの3次元立体音響で収録されている作品が多いが、転送レートを大きく取れないため、ドルビーデジタルなどのロッシー(非可逆圧縮)フォーマットのコンテナに入れて伝送される。ロッシーフォーマットとは、元のデジタル音声データに完全に戻らない方式で、人の聴感特性を考慮して「良い音」に感じさせる工夫が施されたフォーマットと考えていいだろう。いっぽうUHDブルーレイは転送レートに余裕があるため、ドルビーアトモス等の3次元立体音響方式においても、ドルビーTrue HDなどのロスレス(可逆圧縮=元のデジタル音声データに完全に戻る)またはリニアPCMフォーマットで収録できるのである。

 テレビ内蔵スピーカーやサウンドバーなどで聴いているかぎりはロッシーとロスレスの音質差は聴き分けにくいかもしれない。しかし、良質なスピーカーをテレビ両サイドに置いて聴くと誰もがその違いに驚くはず。ロスレスに比べてロッシー収録された音は、声が痩せて甲高く聴こえ、低音も薄く感じられるのである。

 まあ逆に言うと、UHDブルーレイを楽しむなら画質の良い大画面4Kテレビと良質なスピーカー、そして可能ならサラウンド再生を可能にするAVアンプを用意すべきということになる。

 本稿の第2回と第3回は、7月10日に発売される『Dreams on 19900119 Reborn Edition-Return of Blond Saurus-』のUHDブルーレイを、110インチ・スクリーンとドルビーアトモス対応のサラウンド・システムを備えた我がホームシアターで再生し、その概要と画質・音質について詳しく解説したい。お楽しみに。


【Part2】に続く)




山本浩司(やまもと・こうじ)

月刊『HiVi』、季刊『ホームシアター』の編集長を経て、2006年よりフリーランスのオーディオ評論家に。リスニング環境はオクターブ(ドイツ)のプリ「Jubilee Pre」と管球式パワーアンプ「MRE220」の組合せで、38cmウーファーを搭載したJBL(米国)のホーン型スピーカー「K2S9900」で再生している。UHD Blu-ray再生はパナソニック「DMR-ZR1」とマグネター「UDP9000」を使用している。