2024年6月号|特集 あぶない刑事と音楽
【Part2】検証! “あぶ刑事”と音楽の歴史|1988-1989
解説
2024.6.14
文/高島幹雄
●映画第2作『またまた あぶない刑事』(1988)
(【Part1】からの続き)
最新作『帰ってきた あぶない刑事 オリジナル・サウンドトラック』に収録の「On The Run」、「翼を拡げて 2024 re-recorded version」、『あぶ刑事JAZZ』にピックアップされた「FOOL FOR LOVE」の出典作品が、映画第2作『またまた あぶない刑事』である。’88年の正月映画第1位の配収15億円という大ヒットを記録した映画第1作『あぶない刑事』。その公開から約7ヶ月後の’88年7月2日からロードショー公開がスタートした。この短期間で2作品の映画が作られることは今思えば驚くべきサイクルだが、当時は第1TVシリーズから続く制作体制の中にあったのであろう。
本作の音楽アイテムの先陣を切ったのは、本作の公開日の3ヶ月前、4月1日にファンハウスからリリースされた舘ひろしのシングル「翼を拡げてーOPEN YOUR HEARTー」。通常のシングル・レコードの他、シングル・カセットとこの年に発売が開始された8cmCDシングルの3形態でのリリースだった。そのジャケットに本作とのタイアップが記載されていないことから、制作進行より若干後にエンディング・テーマに決まったと思しい。
舘ひろし
「翼を拡げてーOPEN YOUR HEARTー」
1988年4月1日発売
舘ひろし
『あぶない刑事 TAKA THE BEST』
舘ひろしは映画第1作の撮影終了後にオリジナル・アルバム『GOLDEN SHADOW』の制作に入っており、「翼を拡げてーOPEN YOUR HEARTー」はそのトップに置く楽曲として作られた。アルバムはシングルと同時発売で、各々が異なるMIXになっていた。『GOLDEN SHADOW』に収録の方は、イントロがギターから始まり、それを突き破るようなドラムと共に歌が始まる。一方シングルは、本作のエンドロールや後の第2TVシリーズ『もっと あぶない刑事』のエンディングに使われた形と同様にドラムから始まる。この当時はジャケットに例えば、ALBUM MIXというような表示がなかったため、シングルとアルバムの両方を聴いて初めて、その違いを知った。
『帰ってきた あぶない刑事』における「翼を拡げて 2024 re-recorded version」は、『GOLDEN SHADOW』に収録されたアレンジのイントロが再現され、映画のラストシーンからエンドロールでは、イントロをカットせずに使用されている。作詞も手がけた舘ひろし自身の希望で歌詞の一部が変更された。このエピソードは今号の舘ひろしへのインタビューもお読みいただきたい。
柴田恭兵
「GET DOWN」
1988年6月29日発売
柴田恭兵
『あぶない刑事 YUJI THE BEST』
柴田恭兵が歌う挿入歌は新曲の「GET DOWN」。公開直前の6月29日にシングル・レコード、8cmCDシングル、シングルカセットの3形態でフォーライフからリリース。映画ではユージの激走に「GET DOWN」が、その直後にあるユージが単独で銃撃戦に入るシーンでカップリング曲の「BAD DREAMS」が選曲されていた。尚、本作のサウンドトラック・アルバムには未収録。
そして、7月1日にはアルバム『またまたあぶない刑事 オリジナル・サウンドトラック』がLPレコード、カセットテープ、CDの3形態でファンハウスから発売。本作のサウンドトラック・アルバムは、“あぶ刑事”初の海外録音(ロサンゼルス)も含む新曲9曲に舘ひろし「翼を拡げてーOPEN YOUR HEARTー」を加えた全10曲が収録。ここでの「翼を拡げて」は、前出のアルバム『GOLDEN SHADOW』の音源が使用されている。
『またまたあぶない刑事 オリジナル・サウンド・トラック』
1988年7月1日発売
*配信はオリジナル盤とは内容が異なる場合があります
映画のエンドロールに音楽担当としてクレジットされている志熊研三(アルバムのクレジットではKEN SHIGUMA)のプロデュースにより、都志見隆、三浦一年、羽場仁志など幅広いジャンルのアーティストに楽曲を手がけていた作家陣が作曲。アレンジャーは志熊を始め、飛澤宏元らの名前が並ぶ。その中で異色なのは、Paradigm Shift(パラダイム・シフト)がアレンジャーとしてクレジットされている「FOOL FOR LOVE」で、アーティスト名義はVikki Moss with Paradigm Shiftになっている。このバンドは松下誠(ギター/ヴォーカル)、富倉安生(ベース/元トランザム)、松田真人(キーボード)、宮崎まさひろ(ドラムス)というスタジオ・ミュージシャンによって結成され、’85年から’86年にかけて日本コロムビアから2枚のアルバムを発表していた。特徴的にはプログレやフュージョンの色が濃い。本作のサントラ盤では、メンバーは各楽器ごとのミュージシャンとともに記載されている。
レコーディングは日本のスタジオ・ミュージシャンによってレコーディングしたバック・トラックのマルチテープをロサンゼルスのスタジオに持ち込み、ホーン・セクション、ギターなどを現地のミュージシャンによる演奏で重ねて、ヴォーカルとコーラスを入れて完成にさせた。アルバムに記載のレコーディング・クレジットは、LOS ANGELS PROJESTとTOKYO PROJECTの項目に分けられており、ロスのミュージシャンだけで録られた楽曲もありそうだが、演奏楽曲の明細はクレジットにないため不詳。
参加ヴォーカリストは志熊の意向がほとんど反映されている。志熊に話を伺ったところによると、例えば、志熊が愛聴していたデイヴィッド・フォスターのアルバムにVikki Moss(ヴィッキー・モス)が歌っていた楽曲があり、その歌声が良いと思って、現地のコーディネーターに交渉してもらったとのこと。また、Tamara Champlin(タマラ・チャンプリン)は、以前に夫のBill Champlin(ビル・チャンプリン/元シカゴ)をコーラスに起用したことがあった縁で依頼することになったという。ヴォーカリストは皆、メインで歌唱した楽曲以外にもバック・コーラスに参加した。映画内の音楽は本作のサウンドトラック・アルバムの楽曲と、第1TVシリーズ『あぶない刑事』で志熊研三によって作られたBGM(劇伴)も多く使用されている。
●第2TVシリーズ『もっと あぶない刑事』(1988-1989)
本作は第1TVシリーズの日曜夜9時から日テレの金曜夜8時というかつて『太陽にほえろ!』が放映されていた時間帯に移動して、’88年10月7日から’89年3月31日まで全25話が放映された。タカとユージを含む港署のキャスティングもほぼ不動、オープニングは舘ひろし作曲によるテーマ曲と映像を前作から変えずにそのまま踏襲している。一新されることがありがちなTVシリーズの続編としてはレアなケースだろう。エンディング・テーマは『またまた あぶない刑事』に続いて、舘ひろし「翼を拡げてーOPEN YOUR HEARTー」が使われた。
高島幹雄 (たかしま・みきお)
バップ勤務時より『あぶない刑事MUSIC FILE』など音楽をアーカイヴするCDの企画制作や映像商品の制作に参加。ソニーミュージック発売の企画制作CDは『あぶない刑事 TAKA THE BEST』(’12年)『あぶない刑事ORIGINAL ALBUM COMPLETE』(’16年)『「あぶない刑事」NON STOP BEST』(’16年)『あぶない刑事オリジナル・サウンドトラックスペシャルエディション』(’23年)。他に新刊『あぶない刑事マニアックス』(講談社)の企画と構成・執筆。
『あぶない刑事マニアックス』
(講談社)
『帰ってきた あぶない刑事』
2024年5月24日劇場公開
舘ひろし 浅野温子 仲村トオル 柴田恭兵
土屋太鳳
西野七瀬 早乙女太一 深水元基
ベンガル 長谷部香苗 鈴木康介 小越勇輝 / 杉本哲太
岸谷五朗 / 吉瀬美智子
監督:原廣利
脚本:大川俊道 岡芳郎
製作プロダクション:セントラル・アーツ
配給:東映
©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会
https://abu-deka.com
2024年5月24日劇場公開
舘ひろし 浅野温子 仲村トオル 柴田恭兵
土屋太鳳
西野七瀬 早乙女太一 深水元基
ベンガル 長谷部香苗 鈴木康介 小越勇輝 / 杉本哲太
岸谷五朗 / 吉瀬美智子
監督:原廣利
脚本:大川俊道 岡芳郎
製作プロダクション:セントラル・アーツ
配給:東映
©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会
https://abu-deka.com
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