2024年6月号|特集 あぶない刑事と音楽

【Part2】『あぶ刑事JAZZ』『帰ってきた あぶない刑事 オリジナル・サウンドトラック』|について|安部潤(音楽プロデューサー)

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インタビュー

2024.6.14

インタビュー・文/高島幹雄 写真/島田香


「TRASH」は5/4拍子の曲なんで、わかりやすくデイヴ・ブルーベックの「Take Five」みたいにしようとか。じっくり考えることなく感じたままに素直にアレンジをしてみた(安部潤)


【Part1】からの続き)

── アルバム『あぶ刑事JAZZ』ができたきっかけは、『帰ってきた あぶない刑事』にある「Where Do You Go From Here?」の演奏シーンにあるそうですが、過去の映画『もっとも あぶない刑事』(’89年)の曲だったこれが選ばれたのは、どういったことからだったのでしょうか?

安部潤 この曲を映画にと選んだのは『帰ってきた あぶない刑事 オリジナル・サウンドトラック』と『あぶ刑事JAZZ』のプロデューサーでもあるファイブナインファクトリーの佐久間(雅一)さんでした。

── 映画の撮影より前にロザリーナさんが歌う「Where Do You Go From Here?」をレコーディングして、演奏シーンはその音に合わせて演じるという形だったのでしょうか?

安部潤 そうです。ただ、レコーディングしたミュージシャンのうちベースのパット・グリン(PAT GLYNN)さんだけは、映画の撮影日には来られなくて、代わりのベーシストとしてマーク・トゥリアン(MARK TOURIAN)さんが出演したんです。後に『あぶ刑事JAZZ』のレコーディングはマークが参加しました。だから『あぶ刑事JAZZ』のジャケット内にあるクレジットだと1曲だけパットさんになっているんです。

── 「Where Do You Go From Here?」のジャズ・アレンジでご苦労した点がありますか?

安部潤 この曲は都志見隆さんが作られたメロディーが洋楽っぽくて、(気持ちが)入っていける感じの曲でしたね。以前、2016年の“あぶ刑事”のフィルムコンサートで演奏していた経験があったので、迷いもなくアレンジができました。

── ロザリーナさんのヴォーカルは、安部さんにはどんな印象だったのでしょうか?

安部潤 彼女の声質がとても良いと思いましたね。それに、この曲にも歌声がハマっています。


『帰ってきた あぶない刑事 オリジナル・サウンドトラック』
2024年5月8日発売
*30トラック中、安部潤は10トラック参加


── 映画のために「Where Do You Go From Here?」のレコーディングを行い、演奏シーンの撮影にも出演して、そこからアルバムに発展したきっかけは具体的にどのようなことだったかをお伺いできますか?

安部潤 僕以外のミュージシャンが全員外国人というスタイルでのライヴをやったことがなかったので、せっかく集まったこのミュージシャンたちと、“あぶ刑事”とは関係なく、自分のライヴをやったんです。そのステージを観にいらした佐久間さんが、『あぶ刑事JAZZ』の企画を考えたんです。でも、もしかしたら「Where Do You Go From Here?」を録った時に、佐久間さんの中にアイデアがあったのかもしれないですが……。

── 『あぶ刑事JAZZ』に収録する楽曲のラインナップも、佐久間さんから出てきたのでしょうか?

安部潤 そうです。アレンジは好きにやって良いということでした。まずプリプロを作って、デモを渡して聴いて頂いたんですけど、特にNGだったアレンジはなくて、どれも気に入ってくれて、何の問題もなく、レコーディングに入っていけました。選曲も良い曲ばかりだったんで、良かったんじゃないかなと思います。

── 『もっと あぶない刑事』(’88年)で柴田恭兵さんが歌った「TRASH」や、SING LIKE TALKINGによる『あぶない刑事フォーエヴァー』(’98年)のオープニング曲だった「FIRECRACKER」は、ジャズにするのが難しかったのじゃないかと思うんですけど。いかがでした?

安部潤 あ、実はそんなに難しくはなかったんです。

── そうなんですか! 聞かせていただいて、とてもいい感じにJAZZしてるなあと思いました。

安部潤 原曲がカッコいいですからね。「TRASH」は5/4拍子の曲なんで、わかりやすくデイヴ・ブルーベックの「Take Five」みたいにしようとか、じっくり考えることなく感じたままに素直にアレンジをしてみたんです。


安部潤&THE SECRETS
『あぶ刑事JAZZ』

2024年5月8日発売


── そこで『あぶ刑事JAZZ』のその他の収録曲について、アレンジのポイントをお聞きしたいと思います。ここまでのお話でちょうど、アルバムのメイン楽曲である「Where Do You Go From Here?」(ロザリーナのヴォーカルは、ボーナス・トラックとして収録)と、2曲目にある「TRASH」の話を伺えたので、曲順的に3曲目の「FIRECRACKER」からいきましょうか。

安部潤 「FIRECRACKER」は元がミディアムっぽい感じなので、ホーンセクションが厚い(テンポが)速くてスリリングなジャズにしようと思って、やってみました。

── 次に原曲は2作目の映画『またまた あぶない刑事』(’88年)の挿入歌だった「FOOL FOR LOVE」なんですが、これは原曲同様に女性ヴォーカルを入れたんですね。

安部潤 これも前回のフィルムコンサートでやった曲なので、そういう面では特に今回のために考えたというわけではなく、あの時に得た感触で素直に作った感じです。

── ヴォーカルに歌心りえさんを起用したきっかけは何だったのでしょうか?




安部潤 (あべ・じゅん)

音楽プロデューサー、アレンジャー、ピアニスト、キーボードプレーヤー。1968年3月1日生まれ 福岡県出身。3歳より、ピアノ講師である母のもとピアノを始める。’92年より上京し、作編曲家・サウンドプロデューサーとして、Jポップ、ジャズ・フュージョンシーンにおいて、数多くのレコーディング、ライヴツアーに参加。また、テレビやラジオのCM音楽、映画など、多岐に渡るジャンルの音楽を、幅広く手がけている。米、北欧、アジアでのレコーディングやライヴなど海外視野の活動も積極的に行っている。

安部潤オフィシャルサイト https://junabe.jp/

安部潤&THE SECRETS
『あぶ刑事JAZZ』

2024年5月8日発売


『帰ってきた あぶない刑事 オリジナル・サウンドトラック』
2024年5月8日発売


『帰ってきた あぶない刑事 オリジナル・サウンドトラック』における安部潤の参加楽曲
01.ABUNAI DEKA opening theme/初出作品:TVシリーズ『あぶない刑事』
06.Running Shot 2024 MIX/初出作品:TVシリーズ『あぶない刑事』
09.Bacon Ham And Scrambled Eggs/初出作品:TVシリーズ『あぶない刑事』
10.Where Do You Go From Here?(Vo.ロザリーナ)/初出作品:映画3作目『もっとも あぶない刑事』
11.no plan(Vo.ロザリーナ)アレンジ
13.Where Do You Go From Here? another version/初出作品:映画3作目『もっとも あぶない刑事』
17.Cops And Robbers/初出作品:TVシリーズ『あぶない刑事』
27.On The Run vo:木村彩乃 /初出作品:映画第2作『またまたあぶない刑事』
28.So Fine/初出作品:TVシリーズ『あぶない刑事』*オープニングテーマのアレンジ
30.翼を拡げて 2024 re-recorded version/初出作品:映画第2作『またまたあぶない刑事』






『帰ってきた あぶない刑事』
2024年5月24日劇場公開


舘ひろし 浅野温子 仲村トオル 柴田恭兵
土屋太鳳
西野七瀬 早乙女太一 深水元基
ベンガル 長谷部香苗 鈴木康介 小越勇輝 / 杉本哲太
岸谷五朗 / 吉瀬美智子

監督:原廣利
脚本:大川俊道 岡芳郎
製作プロダクション:セントラル・アーツ
配給:東映
©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会

https://abu-deka.com

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