2024年6月号|特集 あぶない刑事と音楽
【Part1】「あぶない刑事」スペシャルフィルムコンサート詳細Report[前編]
レポート
2024.6.3
取材・文/高島幹雄

「あぶない刑事」スペシャルフィルムコンサートReport[前編]
2024年5月12日(日)@KT Zepp Yokohama
『さらば あぶない刑事』(’16年)以来約8年ぶりの最新作となる映画『帰ってきた あぶない刑事』の公開を記念した<「あぶない刑事」スペシャルフィルムコンサート>が5月12日に神奈川・KT Zepp Yokohamaで行われた。これは’16年に『あぶない刑事』の誕生から30周年記念として、10月5日という30年前の第1TVシリーズ放映開始と同じ日に神奈川県民ホールで開催(10月28日には大阪・森ノ宮ピロティホールで開催)されて以来2回目。今回は新作公開直前とあってチケットが早々に完売するなど、開催前から前回以上の盛り上がりを見せた。
告知されていた開演予定時刻を5分ほど過ぎた頃に客電が落ち、いよいよスタート! スクリーンに映し出された映像とともに聞こえてくるオープニングSEから、「あぶ刑事スペシャルバンド」のバンドマスター・安部潤が手がけた『さらば あぶない刑事』のサウンドトラック・アルバムから「FINAL STEPS」という楽曲が使われたことに気づいた音楽感度が高いファンもいたはず。この映画のファーストシーンで潜入捜査で留置場に入っているタカ=鷹山敏樹をユージ=大下勇次が迎えに行き、華麗なステップを踏んだあのリズムだ。『さらば あぶない刑事』から8年、あぶ刑事サウンドもまたハマに「帰ってきた」世界に誘ってくれる粋な演出。
そして、1曲目はもちろんTVシリーズのオープニング・テーマ(第1TVシリーズのサウンドトラック・アルバムでの曲名は「あぶない刑事(テーマソング)」)。『帰ってきた あぶない刑事』では歴代映画として初めてオープニングを飾り、サントラ盤にも「ABUNAI DEKA opening theme」という曲名で新録ヴァージョンが収録されている。入江誠によるエキサイティングなギタープレイが、ライヴのグルーヴ感を生み出す。

仲村トオル
オープニングに続いてコンサートの映像ナビゲーターを担う町田透役の仲村トオルが、事前収録された映像で登場した。前作『さらば あぶない刑事』から『帰ってきた あぶない刑事』までの時間軸をつなげるようにユーモアを交えたトークで会場を和ませて映像は終了。その直後、客席の拍手が悲鳴と歓声に変わった。前回のフィルムコンサートのように、曲間に映像で登場するだけと思いきや、ステージ袖から本人が出てきたのだ! 歓声が響く中、「トオル!」のかけ声も場内のあちこちから飛ぶ。「港署捜査課三代目捜査課長、町田透役を演じた仲村トオルです! 今日はよろしくお願いしまーす!」の挨拶で拍手と歓声はさらにヒートアップ!「来ちゃいました」という一言のトーンも町田透のキャラクターが表れていた。客席を盛り上げるトークで、“あぶ刑事”スペシャルバンドによる演奏再開に向けての空気を作っていく。そして、「イッツ・ショータイム!」。映像ではユージが放っているフレーズを透ヴァージョンで聴けたのも嬉しい。

コンサート本編突入の1曲目は「On The Run」。映画第2作『またまた あぶない刑事』(’88年)のキラー・チューンであるアクション・ナンバーだ。この曲は『帰ってきた あぶない刑事』でリメイクされた。コンサートでは二人の女性コーラスが入っているが、その一人、木村彩乃が歌った。木村は、『帰ってきた あぶない刑事』のレコーディングで「On The Run」のヴォーカルをつとめており、そういった意味ではホンモノの歌声が聴けているわけだ。スクリーンには『あぶない刑事』、『もっと あぶない刑事』の2大TVシリーズの映像が映し出され、曲に合わせた絶妙な編集で展開していく。演奏が終わり、拍手喝采の中で始まったのは、第1TVシリーズで誕生した「Bacon, Ham & scramble eggs」。不規則なリズムがサスペンスとアクションの両面で効果を発揮した名曲。続いてポップなナンバー「My Love & My Lover」。『またまた あぶない刑事』で作られた楽曲だが、その後の『もっと あぶない刑事』(’88年)でも少なからず映像に選曲されたことがあり、記憶に残る楽曲。このブロックは木村彩乃と会原実希、二人の女性コーラスをフィーチャーした曲が集められている。最後は第1TVシリーズの第1話「暴走」から使われていた追跡シーンなどの定番曲「You're Gonna Lose Me」だ。

安部潤
圧倒的な迫力の4曲が終わると再び仲村トオルが登場。仲村は、スクリーンに映し出されていた映像の話から、ナカさんこと田中刑事役のベンガル、薫役の浅野温子のエピソードをはじめ、舘ひろしのバイク、柴田恭兵のクルマといった二人の運転技術に加えて、覚悟と気合があった上で、撮影を自由にやらせてもらったという旨を語って、今度はバンドマスター・安部潤を映画の音楽に携わっただけでなく、最新作の『帰ってきた あぶない刑事』に出演もしていると紹介。安部は恐縮しながら緊張気味に「8年前も…」と言えば、仲村は「2回も(映画に)出たんですか、すごいですね」と返すそのやりとりに場内からは好意的な笑いが起こった。そして、仲村の「ではここでしばらくの間、マイクを安部さんにおまかせして……」という振りで、トークを安部潤にバトンタッチ。

安部潤&THE SECRETs
『あぶ刑事JAZZ』
2024年5月8日発売
ここからは『帰ってきた あぶない刑事』の公開に先駆けてサントラ盤と同時発売されたジャズ・アルバム『あぶ刑事JAZZ』のコーナーだ。“あぶデカ”スペシャルバンドのベース=マーク・トゥリアン、ドラムス=デニス・フレーゼ、サックス=グスターボ・アナクレートは、このアルバムをレコーディングした安部潤&THE SECRETSのメンバーでもある。これからステージでは、『あぶ刑事JAZZ』のセッションが繰り広げられるのだ。まずはTVで始まり、映画で終わった『あぶない刑事 フォーエヴァーTVスペシャル’98』『あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE』の共通オープニング・テーマ「FIRECRACKER」。スクリーン上では、2大TVシリーズに登場したゲスト俳優の映像が名前もクレジットされながら紹介されていった。続いての演奏は「冷たい太陽」。これは第1TVシリーズのエンディング・テーマであり、『あぶない刑事』の長い歴史の中で、『あぶない刑事リターンズ』(’96年)、『さらば あぶない刑事』のエンディング・テーマ、あるいは舘ひろしのオリジナル・アルバムでも様々なアレンジで変化していった。オープニング・テーマ「あぶない刑事(テーマソング)」をラウンジ・ミュージック風にアレンジした「SO FINE」。このコーナーのラストは、原曲は柴田恭兵が歌った『もっと あぶない刑事』(’88年)の挿入歌「TRASH」。

『あぶ刑事JAZZ』コーナーが終わって、ナビゲーター・仲村トオルが登場。「これももしかしたら38年という時の中で熟成された“あぶ刑事”の世界とジャズの相性が良くなったからかな、と思いながら聴いていました」との粋なコメントを添えた。仲村は登場する度に、共演者、スタッフへの思いがこもった当時の撮影エピソードを、こんなにしゃべってくれるのか! と感じるくらい多くの話題を提供してくれている。そして、仲村の招きにより、大きな拍手に迎えられて、一人目のゲスト・ヴォーカリスト、『帰ってきた あぶない刑事』の挿入歌を担当したシンガーソングライターのロザリーナがステージに登場。挿入歌「no plan」を歌う前に、この曲が生まれたエピソードなどが語られたが、それは今月号のロザリーナのインタビューでも語られていると思うので、そちらをお読み頂きたい。仲村は「no plan」を聴いた感想を次のように語った。「僕、38年前の『あぶない刑事』の映像を見ながら「no plan」が流れてきたら、すごく切なくなってしまって……。なんだろう? この切なさの源はって思って……、(ここで大きく息をはき)ここまでにしておきます(笑)」。

ロザリーナ
スクリーンにMVを映しながらの「no plan」に続いて、『帰ってきた あぶない刑事』のサントラ盤と『あぶ刑事JAZZ』の両アルバムに収録された「WHERE DO YOU GO FROM HERE?」を、安部潤&THE SECRETSの演奏と共に生歌唱。この曲は映画第3作で、当時は最終作でもあった『もっとも あぶない刑事』(’89年)では、ヴォーカル入りの他に様々なアレンジのBGMが作られていた。言うなれば、『もっとも あぶない刑事』のメインテーマ曲だった。これが、『帰ってきた あぶない刑事』で華麗に蘇ったのだ。『帰ってきた あぶない刑事』から様々なシーンのスチール写真でスクリーンに映し出される中で、ロザリーナが表現力豊かに歌い終えると、登場の時よりも大きな拍手に包まれた。
(【Part2】詳細レポート[後編]に続く)
「あぶない刑事」スペシャルフィルムコンサート
2024年5月12日(日)@KT Zepp Yokohama
SET LIST
オープニングSE使用曲
●FINAL STEPS(出典作品『さらば あぶない刑事』)
●あぶない刑事(テーマ・ソング)(出典作品 第1TVシリーズ『あぶない刑事』)
●On The Run(出典作品『またまた あぶない刑事』)
●Bacon, Ham & Scramble Eggs(出典作品 第1TVシリーズ『あぶない刑事』)
●My Love & My Lover(出典作品『またまた あぶない刑事』)
●You're Gonna Lose Me(出典作品 第1TVシリーズ『あぶない刑事』)
『あぶ刑事JAZZ』のパート
●FIRECRACKER(出典作品『あぶない刑事フォーエヴァー』)
●冷たい太陽(出典作品 第1TVシリーズ『あぶない刑事』)
●SO FINE(出典作品 第1TVシリーズ『あぶない刑事』)
●TRASH(出典作品 第2TVシリーズ『もっと あぶない刑事』)
『帰ってきた あぶない刑事』のパート
●no plan/ロザリーナ(出典作品 『帰ってきた あぶない刑事』)
●WHERE DO YOU GO FROM HERE?/ロザリーナ(出典作品 『もっとも あぶない刑事』)
●ON THE CRAZY STREET/佐藤竹善(出典作品 『もっとも あぶない刑事』)
●FIRECRACKER/佐藤竹善(出典作品『あぶない刑事フォーエヴァー』)
●Running Shot/柴田恭兵*ヴォーカルをシンクロ(『さらば あぶない刑事』の仲村トオル台詞入り音源を使用)
●TRASH/柴田恭兵*ヴォーカルをシンクロ(出典作品 第2TVシリーズ『もっと あぶない刑事』)
●Fool For Love/歌心りえ(出典作品『またまた あぶない刑事』)
●Night Walker(出典作品 映画第1作『あぶない刑事』)
●翼を拡げて 2024 re-recorded version/舘ひろし*ヴォーカルをシンクロ(『帰ってきた あぶない刑事』)
●冷たい太陽 Final Version(出典作品『さらば あぶない刑事』)
●LONG GOODBYE~さらば あぶない刑事~オープニングテーマ(出典作品『さらば あぶない刑事』)
【映像ナビゲーター】 仲村トオル(5月12日)/長谷部香苗(5月26日公演)
【ゲスト・ヴォーカル】 佐藤竹善[SING LIKE TALKING](5月12日)/ロザリーナ(5月12日&26日)/歌心りえ(5月12日&26日)
【演奏】 安部潤&THE SECRETS:安部潤(piano & keyboards)、マーク・トゥリアン(bass)、デニス・フレーゼ(drums)、グスターボ・アナクレート(saxphone)
additional musicians:入江誠(guitar)、ルイス・バジェ(trumpet)、木村彩乃(chorus & vocal)、会原実希(chorus & vocal)
『帰ってきた あぶない刑事』
2024年5月24日劇場公開
舘ひろし 浅野温子 仲村トオル 柴田恭兵
土屋太鳳
西野七瀬 早乙女太一 深水元基
ベンガル 長谷部香苗 鈴木康介 小越勇輝 / 杉本哲太
岸谷五朗 / 吉瀬美智子
監督:原廣利
脚本:大川俊道 岡芳郎
製作プロダクション:セントラル・アーツ
配給:東映
©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会
https://abu-deka.com
2024年5月24日劇場公開
舘ひろし 浅野温子 仲村トオル 柴田恭兵
土屋太鳳
西野七瀬 早乙女太一 深水元基
ベンガル 長谷部香苗 鈴木康介 小越勇輝 / 杉本哲太
岸谷五朗 / 吉瀬美智子
監督:原廣利
脚本:大川俊道 岡芳郎
製作プロダクション:セントラル・アーツ
配給:東映
©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会
https://abu-deka.com

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