2024年6月号|特集 あぶない刑事と音楽
【Part1】安部潤(音楽プロデューサー)|“あぶ刑事”との出逢い~スペシャルフィルムコンサート
インタビュー
2024.6.3
インタビュー・文/高島幹雄 写真/島田香
刑事モノ=トランペットのようなイメージは自分の中にすごくあったので、すんなりと悩まずにできましたね(安部潤)
── 最新作『帰ってきた あぶない刑事』でフィーチャーされたシリーズ屈指の名曲「Where Do You Go From Here?」のアレンジと演奏シーンにも出演。これが安部潤&THE SECRETSのアルバム『あぶ刑事JAZZ』に発展しました。『帰ってきた あぶない刑事』のサントラでは歴代作品の楽曲のリメイクも手がけて、大きな感動を呼んだ<「あぶない刑事」スペシャルフィルムコンサート>(5月12日、26日開催)でバンマスも! ということで、“あぶ刑事”の最新音楽プロジェクトのキーマンということで安部潤さんにお話を伺いたいと思います。まず、安部潤さんは世代的に『あぶない刑事』の視聴体験がお有りかと思いますが、いかがでしょうか?
安部潤 (気まずそうな表情になって)これを言ってしまうと怒られるかもしれないんですけど、実は『あぶない刑事』はそれまでほとんど観たことがなかったんです。舘ひろしさんが出ていらした『西部警察』は大好きだったんですけど……。5歳下の妹はすごく観ていたんですけど(苦)。
── あっ! ご覧になったことがなかったんですね! 安部さんは初めてこのシリーズの音楽を担当されたのが前作の『さらば あぶない刑事』(’16年)だったのですが、そのきっかけはなんだったのでしょうか?
安部潤 “あぶ刑事”の前に舘ひろしさんのコンサートの仕事をしていたんです。『NHK紅白歌合戦』に舘さんが出た時のバックバンドとか、その流れの中で、舘さんの音楽プロデューサーという立場から『さらば あぶない刑事』の話を頂いたと思います。
── それは、舘ひろしさんが石原裕次郎のレパートリーをカヴァーされたアルバム『HIROSHI TACHI sings YUJIRO』がリリースされた’12年のことですね? コンサートは翌年のオーチャードホール(※)でしたね? 拝見してました。
安部潤 そうです。コンサートのステージでキーボードを弾いていました。その舘さんのアルバムは、私の師匠的存在の船山基紀さんがトータルでアレンジをやっていたんです。
舘ひろし
『HIROSHI TACHI sings YUJIRO』
2012年9月26日発売
── 『HIROSHI TACHI sings YUJIRO』の最後に収録されていたオリジナル曲で、舘さんが作詞・作曲をなさった「甘い生活」だけが、安部さんのアレンジでしたね。
安部潤 そうなんです。「甘い生活」のアレンジは私に任されて、プログラミングとキーボードもやって、ストリングスのアレンジは船山さんがやって下さったんです。そうですね、その流れでの『さらば あぶない刑事』でした。
── 『さらば あぶない刑事』の音楽をお引き受けになった時の心境はおぼえていらっしゃいますか?
安部潤 歴史があるシリーズなので、ファンの人たちにとっては例えばテーマ曲や劇中の曲とか、元の作品のイメージが強いので、新しい音やアレンジを聴いて受け入れてくれるのかなという心配はありました。以前のテーマ曲は明るい元気の良い感じでしたが、私が音楽を作った時は、「哀愁があるトランペット」でと、音楽プロデューサーを通してですが、舘さんからオーダーがありました。それで(以前の音楽と)雰囲気を変えてみたんです。
── それが「LONG GOODBYE~さらば あぶない刑事~オープニングテーマ」ですね?
安部潤 そうです! それです。
『さらば あぶない刑事 オリジナル・サウンドトラック』
2015年12月9日発売
── 映画を観ていてこの曲が聞こえた途端に鳥肌が立つくらい、カッコいいなあと感じてました。
安部潤 それは本当に良かったです! 先日の<「あぶない刑事」スペシャルフィルムコンサート>では、レコーディングと同じルイス(ルイス・バジェ/Luis Valle)がトランペットをやってくれました。
── スペシャルフィルムコンサートは、『さらば あぶない刑事』や『帰ってきた あぶない刑事』の音楽を実際にレコーディングした方々の演奏を聴けるというとても貴重なステージでした。話をちょっと戻して、『さらば あぶない刑事』の音楽にトランペットを、というオーダーを聞いてどのように感じましたか?
安部潤 刑事モノ=トランペットのようなイメージは自分の中にすごくあったので、すんなりと悩まずにできましたね。
── 『さらば あぶない刑事』で安部さんはご自身作曲の新曲のみならず、柴田恭兵さんの挿入歌や舘ひろしさんのエンディング・テーマのアレンジやリミックスも手がけられましたが、まずは「RUNNING SHOT/柴田恭兵 feat.T.NAKAMURA, SENRI KAWAGUCHI & SHIGEO NAKA」のメイキングからお伺いしたいと思います。
安部潤 「RUNNING SHOT」は、当時10代で新進気鋭だった川口千里さん(ドラムス)の持っている勢いを活かしたいと。とにかく勢いよくカッコよくできればと考えながらサウンドを作っていたのをおぼえています。
── エンディングの「冷たい太陽 Final version」は、イントロが哀愁感あるトランペットで表現されていますが、そのことも舘さんからのオーダーにあったトランペットということだったのでしょうか?
安部潤 すみません、そこはちょっとおぼえていないんです。『さらば あぶない刑事』は、ずいぶん昔のことのような感じで……。うーん、そのオーダーの印象もあったのかなあ……でも、カッコいいアレンジができた手応えはありましたね。
── 『帰ってきた あぶない刑事』関連のお仕事もすさまじく、そして濃密でしたから、その前のご記憶が薄れるのも仕方ないと思います。スペシャルフィルムコンサートでは、「RUNNING SHOT」と「冷たい太陽」は『さらば』でのアレンジで再現していましたね。
安部潤 あ、よく聴いてくれていますね! そうです。基本的に『さらば あぶない刑事』でのサウンドにしました。今、ライヴで聴いていただくならば、やはり最新のアレンジが良いと思って。
2024年5月12日 <「あぶない刑事」スペシャルフィルムコンサート>
── スペシャルフィルムコンサートのセットリストは制作サイドが選曲、構成した内容を安部さんが受けて、どのようにライヴ用のアレンジを作るか? という進行だったのでしょうか?
安部潤 そういう流れですが、今回のコンサートは、実は『あぶ刑事JAZZ』のアルバム制作からスタートしたんです。そのレコーディング・メンバーを中心にしてフィルムコンサートを、という話に発展しました。ドラムとベースは基本ジャズ・ミュージシャンの方々でしたが、セットリストにあるポップスやロック・テイストの80年代楽曲をだいぶ頑張ってもらいました。
── スペシャルフィルムコンサートで演奏された楽曲には、音源とのシンクロもありましたが、音源に合わせて生演奏をする点でのご苦労、苦心はありましたか?
安部潤 特に80年代の楽曲は古い音なので、厳密に考えれば音質的につらい部分もあったのですが、ライヴが持つ勢いで成立させていった感じです。柴田恭兵さんの「RUNNING SHOT」は、ヴォーカルが38年前の当時の音を使っているので、その質感と合わせるのにちょっと大変でしたね。
── セットリストで特にこの曲はライヴ・アレンジに苦労したとか、あるいはこれは気持ちよく演奏できたなといった曲をあげるとすればどの曲でしょうか?
安部潤 ほとんどが他の方々が作ったアレンジの再現という感じでしたが、どれもこれは演奏しにくいというのはなくて、全体的に楽しくできました。自分のアレンジで演奏できたという点では、『あぶ刑事JAZZ』の曲をステージで演奏できたことが嬉しかったですね。
2024年5月12日 <「あぶない刑事」スペシャルフィルムコンサート>
── コンサートはホール内の熱気がすごくて、歓声も上がっていましたが、ステージ上ではどのような体感だったのでしょうか?
安部潤 客席の方を見てみると、普通のコンサートだったら目線は演奏している方に向けられるんですけど、皆さんはスクリーンの映像を熱心に見ているので、正直に言うとこちらのステージへの反応がわからなくて(笑)、演奏も楽しんで頂けているのかな? とちょっと不安になりました。でも演奏が終わると、ワーッと歓声や拍手を頂けたので演奏も良かったのかなって、安心しましたね。
(※)石原プロモーション創立50周年記念『HIROSHI TACHI IN THE MOOD 2013』。東京、名古屋、大阪の3都市で開催。
(【Part2】へ続く)
安部潤 (あべ・じゅん)
音楽プロデューサー、アレンジャー、ピアニスト、キーボードプレーヤー。1968年3月1日生まれ 福岡県出身。3歳より、ピアノ講師である母のもとピアノを始める。’92年より上京し、作編曲家・サウンドプロデューサーとして、Jポップ、ジャズ・フュージョンシーンにおいて、数多くのレコーディング、ライヴツアーに参加。また、テレビやラジオのCM音楽、映画など、多岐に渡るジャンルの音楽を、幅広く手がけている。米、北欧、アジアでのレコーディングやライヴなど海外視野の活動も積極的に行っている。
安部潤オフィシャルサイト https://junabe.jp/
安部潤&THE SECRETS
『あぶ刑事JAZZ』
2024年5月8日発売
『帰ってきた あぶない刑事 オリジナル・サウンドトラック』
2024年5月8日発売
『帰ってきた あぶない刑事 オリジナル・サウンドトラック』における安部潤の参加楽曲
01.ABUNAI DEKA opening theme/初出作品:TVシリーズ『あぶない刑事』
06.Running Shot 2024 MIX/初出作品:TVシリーズ『あぶない刑事』
09.Bacon Ham And Scrambled Eggs/初出作品:TVシリーズ『あぶない刑事』
10.Where Do You Go From Here?(Vo.ロザリーナ)/初出作品:映画3作目『もっとも あぶない刑事』
11.no plan(Vo.ロザリーナ)アレンジ
13.Where Do You Go From Here? another version/初出作品:映画3作目『もっとも あぶない刑事』
17.Cops And Robbers/初出作品:TVシリーズ『あぶない刑事』
27.On The Run vo:木村彩乃 /初出作品:映画第2作『またまたあぶない刑事』
28.So Fine/初出作品:TVシリーズ『あぶない刑事』*オープニングテーマのアレンジ
30.翼を拡げて 2024 re-recorded version/初出作品:映画第2作『またまたあぶない刑事』
『帰ってきた あぶない刑事』
2024年5月24日劇場公開
舘ひろし 浅野温子 仲村トオル 柴田恭兵
土屋太鳳
西野七瀬 早乙女太一 深水元基
ベンガル 長谷部香苗 鈴木康介 小越勇輝 / 杉本哲太
岸谷五朗 / 吉瀬美智子
監督:原廣利
脚本:大川俊道 岡芳郎
製作プロダクション:セントラル・アーツ
配給:東映
©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会
https://abu-deka.com
2024年5月24日劇場公開
舘ひろし 浅野温子 仲村トオル 柴田恭兵
土屋太鳳
西野七瀬 早乙女太一 深水元基
ベンガル 長谷部香苗 鈴木康介 小越勇輝 / 杉本哲太
岸谷五朗 / 吉瀬美智子
監督:原廣利
脚本:大川俊道 岡芳郎
製作プロダクション:セントラル・アーツ
配給:東映
©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会
https://abu-deka.com
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2024.6.14