2024年5月号|特集 大江千里『1234』

⑧「昼グリル」|Disc-1 CD『1234』|『1234 ~Special Limited Edition~』徹底検証

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レビュー

2024.5.20

文/ドリーミー刑事


人それぞれの複雑さ、多様性という今日的な価値観を取り入れた人物描写

 「帰郷」の内省的なモードから一転し、「昼グリル」はカリビアン風味のレゲエのリズムから始まる。坂本龍一&カクトウギセッション、MUTE BEATといった先駆者がいたとは言え、日本語によるレゲエ・ソングがメジャーシーンで一般的なものとなるのは90年代以降のことである。先進的なアレンジと言えるだろう。

 しかしよく聴くとレゲエの影響を感じさせるのはディレイの効いたピアノとオルガン、抑揚を抑えて細かく言葉を刻んでいく大江のヴォーカルくらいのもの。全体としては必ずしも裏打ちを強調するビートにはなっておらず、ジャマイカから輸入したビートを咀嚼し、日本語ポップスにアジャストするようカスタマイズされている。




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