2024年5月号|特集 大江千里『1234』

④小泉今日子『BEAT POP/KOIZUMI KYOKO SUPER SESSION』|『1234』につながる1988年邦楽アルバム

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レビュー

2024.5.8


岡村靖幸
『DATE』

1988年3月21日発売

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1. Overture~Cutey Beauty Beat Pop
2. Down Town Boy
3. Heart of the hills
4. パーティー
5. Moon Light
6. Good Morning-Call(Another Version)
7. Happy Blue ★
8. ビッチ
9. Odyssey(宇宙船の窓から)
10. Tell me~the end


豪華参加陣と共にこの時代の日本のエッジーな音楽の地図が描く

 小泉今日子は割と早い段階から女優としての活動にも力を入れている。シングル「私の16才」でデビューしたのが’82年。その翌年には早くも『あんみつ姫』に主役として出演し、そのお転婆なキャラクターでアイドルのイメージに収まらない天衣無縫な個性を自ら引き出した。その役者としての幅は思いのほか広く、複雑な生い立ちを抱える音大生を演じた『少女に何が起こったか』(’85年)から、反目しあいながらも男子校の教諭と仲良くなる女子校の教諭役だった『愛しあってるかい!』(’89年)まで様々。中でも久世光彦ドラマ(『花嫁人形は眠らない』など)での経験は彼女の文芸感覚が表出されることとなっていったし、田村正和の娘で、大江千里とは婚約者の関係という役を演じた『パパとなっちゃん』(’91年)や、和田誠監督・脚本作の映画『怪盗ルビイ』(’88年)ではそのヒューマンで暖かい人柄が伝わる結果となった。別の誰かを演じるという役者業と、時には素材になることも厭わない音楽活動とが立体的に作用し合い、小泉今日子は80年代から90年代にかけて実にマルチアングルな表現者になっていったわけだ。音楽だけでも、演技だけでも、現在の小泉今日子はなかったと言っていい。

文/岡村詩野




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