2024年5月号|特集 大江千里『1234』

① 工藤静香『ミステリアス』|『1234』につながる1988年邦楽アルバム

レビュー

2024.5.1


工藤静香
『ミステリアス』

1988年1月21日発売

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1. 哀しみのエトランゼ
2. ミステリアス
3. 禁断のテレパシー
4. 嵐の夜のセレナーデ
5. パッセージ
6. ワインひとくちの嘘
7. Again
8. すべてはそれから

MTV全盛時代の英米ヒット・ポップスの要素が満載の1st

 ソロ・デビューする際のコンセプト“ミステリアス”をそのままタイトルにした1stアルバム。『夕やけニャンニャン』最終回放送日に発売された1stシングル「禁断のテレパシー」(シングル・チャート3位獲得)とそのカップリング「Again」を含む全8曲全曲の作曲と編曲を後藤次利が担当している(作詞は先の2曲を書いた秋元康が3曲、三浦徳子が2曲、田口俊が2曲、松井五郎が1曲を担当)。

 今聴くとMTV全盛時代の英米ヒット・ポップスの要素が満載で、例えば「哀しみのエトランゼ」はボン・ジョヴィやヨーロッパのようなハード・ロック・スタイル、タイトル曲「ミステリアス」や「パッセージ」はガゼボの「アイ・ライク・ショパン」のような幻想的で少しエキゾチックな曲調、「ワインひとくちの嘘」はクール&ザ・ギャングやパティ・オースティンのようなブラコン・タッチ……とヴァラエティ豊か。しかも、健康的なイメージだったおニャン子クラブの中では、“夜”や“バー”などが似合う大人びたムードでまとめられていて、戸惑っているのか、拗ねているのか、何か困ったような表情のジャケット写真のまだウブな本人の雰囲気とみごとに合った作品となっている。

 中では、夜明けに抱かれて~といきなり始まる「禁断のテレパシー」の洗練されたアレンジと動きの激しいメロディが素晴らしく、後藤の代表曲のひとつと言ってもいい。アルバム・チャート3位を記録。なお、本作がリリースされた’88年には、大江千里が主要キャストのひとりとして出演した10月クールのドラマ『君が嘘をついた』に出演、共演が実現している。

文/岡村詩野




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