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40周年解説ドキュメント[Part 6:2012-2015]
40年に及ぶTM NETWORK活動史を、作品、ライヴ、同時代における重要トピックと共に総括するドキュメンタリー。2010年代に突入するPart 6では、6つのコンサート・シリーズを軸に繰り広げられた30周年プロジェクトの全貌と、その核心に触れていく。
アーティスト写真/『40+~Thanks to CITY HUNTER~』ブックレットより
TM NETWORK 30周年プロジェクトの勃発
TM NETWORKの黄金期といえば1984年から1994年の、最初のDECADE=10年であることは間違いのない事実だ。しかし、21世紀を迎えたテン年代、僕らはふたたび金色の夢を見ることになる。
2008年にTM NETWORKの活動が突如ストップしてから4年……。コンサートプロモーターであるディスクガレージのプロデューサーから宇都宮隆へ、東日本大震災復興支援チャリティコンサートへの出演依頼が舞い込んだ。結果、これが4年ぶりのTM NETWORK再起動へのトリガーとなった。
TM NETWORK 30周年プロジェクトの勃発である。
最盛期を彷彿とさせる密度の濃いコンサート・シリーズとともに、2012年から2015年の4年間の軌跡をFANKS(TMファンの意)は忘れることはないだろう。ここではまず、新生TM NETWORKのアイコンとしてシングル「I am」が、そして、2014年10月29日には7年ぶり、12枚目となる2枚組のオリジナル・アルバム『QUIT30』がアウトプットされた。アルバム作品は、体験となるライヴへと合わせて、表現者が紡ぐ物語のプロットたる存在となったのである。
“僕らはもっともっとエモーショナルでいいのさ”
キーとなった曲が、2012年4月25日にリリースされた「I am」だ。
30周年へ向けて、本格始動の狼煙となったアイコンとなる作品であり、現在の、TM NETWORKに通じる社会性あるメッセージ性を感じさせる大人のポップミュージックという方向性を確立した、エバーグリーンな名曲だ。
ビート感は、スティング率いる3人組バンド、ポリスからの影響があったと小室哲哉は言う。エレクトリック・ギターは元リンプ・ビズキットのマイク・スミス、アコースティック・ギターは木根尚登が担当。小室は、J-POPらしさから逃れるために、ヴァースからコーラスという構成によって、日本語による歌詞ながらも洋楽的センスを意識。キーが、C→E♭→D→Cと忙しく転調する独自の展開を持つナンバーへと仕上がった。
楽曲のコンセプトは“人間らしくあること”。
その後のAI時代なども見据えた、メッセージ性強い作品が完成したのだ。
“大国のトップがシャウトしたってほとんど世界はほほえまないから”というパンチあるワード、ラストには“みんな同じ 前を向けるはずだね”というポジティブなメッセージ性。これを宇都宮が歌い、木根、小室のコーラスでハモるとパワーが倍増した。
続く、2014年4月22日にリリースしたシングル「LOUD」が解き放つメッセージ“僕らはもっともっとエモーショナルでいいのさ”も、文字通りエモかった。これらのセンテンスはファンダムであるFANKS世代を鼓舞し刺激する、熱いキーワードとなったのである。
TM NETWORKといえば、「Get Wild」や「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」、「Love Train」など、80年代~90年代初期のヒット曲が注目されがちではあるが、「I am」を筆頭に、「LOUD」、さらにはアルバム『QUIT30』のリード曲となった「Alive」なども、実は、時代を超える耐久性あるメロディー、そして心を打つメッセージ性を持つ作品であることをTMは証明したのだ。
TMは、1984年から究極のフィクション・プロジェクト
30周年プロジェクトの口火は、現在では存在しないGoogleによるソーシャル・ネットワーク・サービス『Google+』での小室によるSFめいた意味深な投稿からはじまった。
「TMは1984年から究極のフィクション・プロジェクトですから、相変わらず地球外生命体か、DNA異質構成生命、SF夏の扉の世界ですので、そんな体をおしてあげてくれません?難しいか。なんとなく、新曲、単独ライヴは短期期間限定でやりそう。あくまでも地球の今をサンプリングして、メインブレイン本部に報告するためだけれど、、」(小室/2012年2月4日)
続いて、小室らしい独特なる言葉遣いで制作状況が投下された。
「とりあえず、地球の軌道上に乗った母船からの指令で、TMのネット回線をテラレベルまで、あげ、新しいトラックを96ほど送れということで、作業をしました。28年前の地球に降り立った頃、1万人クラスのサンプリングをそのトラックでせよとのこと。今週は以上」(小室/2012年2月4日)
決定的なのは、2012年2月6日の決意表明だ。
「1984/4/21がTM NETWORKの地球に舞い降りた日でした。2014/4/21はそれから30年、3名の地球潜伏者もそろそろ、身体能力、創作能力を検査して当初から予定していた30年目の任務終了まで地球の環境をより良くするため働かなくてはなりません。1974からの計画です。あと2年、現代の文化をより知るべく3名のみで、2日間、約2万人を対象に48トラックの楽曲2曲を新しく制作し、集ってくれた人達の気持ちに金色の夢を見せてあげなければなりません。そんな指令が1/25に届いたのです。28年、さすがにカルチャーの進化のスピードは加速しました。けれど、音楽という文化の風化というものは他のものと何か違うという事は間違いないという証明をする義務が僕たちにはあるのです」(小室/2012年2月6日)
暗黙のうちに、TM “SOCIALNET” WORKへリニューアル
継続してSNSで発信されたメッセージ。そこからコンセプチュアルなひらめき、セレンディピティが生まれていく。1984年からのシンクロニシティ。TM NETWORK リーダー、小室哲哉にドライヴがかかった瞬間だった。
「ググプラ(Google+)で発信したメッセージは、2014年の30周年に向けて、フラッシュバック・ムービー的なことがやれないかと思ったんです。2012年4月24、25日の武道館でのコンサートは、2014年から2年間の時を巻き戻すという。そんなSFのような設定を前提に、遊び心を持ってオーディエンスのみんなに参加してもらえたら嬉しいなって。
みんなで、2014年から2012年にタイムマシンで戻ってくる風景を共有したかったんですね。ある意味ソーシャルな試みですよ。フォロワーを巻き込んでいくという。そう、TM は今回TM “SOCIALNET” WORKへリニューアルしているのです」(小室/パンフ『-Incubation Period-』2012年2月14日)
そして、TM NETWORKは前述の通り、3月20日、宇都宮の声かけにより参加が決まった、幕張メッセ国際展示場で行われた震災復興チャリティー・イベント『All That LOVE -give & give-』にて、共に80年代を駆け抜けたソニー期の盟友である米米CLUB、プリンセス プリンセスとの競演で再起動したのである。
2008年で止まっていた、“タイムマシンネットワーク”の時計の針が動き出した瞬間だ。
この日、サポートメンバーは旧知の仲であるバンド、FENCE OF DEFENSEが担当していた。結果、スキルフルなパフォーマンスによって、顕在を示した圧巻のモーメントとなった。
MCとアンコールが存在しないコンサート
TM NETWORKによるエンタテインメントの再構築。そもそも、TM NETWORKのコンサートにMCとアンコールは存在しない。なぜなら、完璧なまでに計算されたSFをテーマとしたシアトリカルなショーだからだ。
小室はそれを“シリーズ物の海外ドラマに近いイメージ”と語っていた。1984年から幾年が経過したことで、機材やテクノロジーの進化。TMとして、ライヴでやりたいことを表現できる環境が整ったのである。
ようやく、時代が追いついたのだ。
その最良の成果が、2012年~2015年におこなわれたTM NETWORK 30周年プロジェクトだ。それは1984年当時、デビュー期から夢見ていた音楽活動の具現化である。
映画『スター・ウォーズ』シリーズをライバル視
小室は2012年~2015年に実施した新コンサート・シリーズ、TM NETWORKの30周年プロジェクトを進めるにあたって、2015年12月に最新作が公開された映画『スター・ウォーズ』シリーズを意識していた。もちろん“予算や規模が違いすぎるけどね”とエクスキューズしながらだ。
「音楽のコンサートにしては、まぁ頑張ったかな。映画『インター・ステラー』もTM的だったよね。『インセプション』からクリストファー・ノーラン監督のこだわりはすごいけど。あの世界観を体感するというのはコンサートでは難しいからね。なので、けっこう頑張ってると思いますよ、僕らは。
気になるのは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』だよね。完全に世界観が30年後なんですよ。僕らとシンクロしてるんだよね。ハリソン・フォードもみんな30年後にそのままの年の取り方のまんまで始まるらしいので。でも公開は2015年の12月だから、パクる……、いや参考に出来ないんだよね(苦笑)。
ルーク・スカイウォーカーが、フォースをどうしてるのかなとかね。知りたいんだけど、それこそハッキングとかしないとわからないもんね(苦笑)」(小室/パンフ『TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30』2014年12月19日)
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が公開された今こそ振り返られる微笑ましいエピソードだ。
時を同じくして、1988年のリリースから100万枚を超える大ヒットを記録したコンセプト・アルバム『CAROL ~A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991~』の続編として書いたプロットを、小室自ら『CAROLの意味』(KADOKAWA/エンターブレイン)として2014年11月15日に小説化するなど、究極のフィクション・プロジェクトであるTM NETWORKをSF作品として完成させる努力を惜しまなかった。
そう、実はアルバム『QUIT30』とは、当初CAROLの続編、『CAROL2』として想定され、その後さらに進化を遂げた経緯を持つ。
そして、2015年3月21・22日に横浜アリーナで行われたTM NETWORK30年の歴史の集大成ともいえるFINAL公演では、過去の名場面をステージに浮かぶ可動式巨大LEDモニターに、没入感あふれる映像でアップ。
シアトリカルな物語性を感じさせる演出や高解像度を誇る映像に、新たな選曲をマッチングさせ、過去の人気曲の印象や意味合いをアップデートすることで、いわゆるライヴ・リミックス的な、オープニングからクライマックスが続く熱量の高いコンサートを発明したのだ。
4年間に渡って繰り広げられた、世界観ある物語
物語をひとつの軸で整頓しておこう。
2008年に活動をスリープしていたTM NETWORKは、2012年4月24・25日、日本武道館にて『TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-』で本格的に再起動した。
ここから始まった物語は、2015年3月21・22日の横浜アリーナ『TM NETWORK 30th FINAL』まで6つの異なる演出によるコンサートとして、計35公演がシリーズ展開されていった。
4年に渡って繰り広げられた世界観あるSF物語。発見の多い情報量の密度の濃さ。伏線の張られ方の妙。そう、TMのコンサートはただのライヴではなかった。30周年プロジェクトにおける、コンサートで明示されたストーリーのあらすじを紹介していこう。
◆◆◆Restricted Confidential ~あらすじ~◆◆◆
TM NETWORKが16光年離れた惑星から地球を訪れたのは1984年だった。その目的は、潜伏者となり地球上のさまざまな文化や営みを調査しメインブレインへ報告するためである。その任期は30年。
シーズン1 ●TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-
2012年4月24・25日@日本武道館
シーズン2 ●TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-
2013年7月20・21日@さいたまスーパーアリーナ
シーズン3 ●TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end
2014年4月26日~5月20日@全国10公演
シーズン4 ●TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30
2014年10月29日~2015年1月11日@全国15公演
シーズン5 ●TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA
2015年2月7日~2月15日@全国4公演
シーズン6 ●TM NETWORK 30th FINAL
2015年3月21・22日@横浜アリーナ
行き過ぎた社会の成熟、テクノロジーの進歩への警告
「人類の文明のあり方を過去から未来へと見通すならば、それはけっしてバラ色のものではない」(『梅棹忠夫の「人類の未来」』〈勉誠出版〉より)。
民俗学者であり、文化人類学者でもある梅棹忠夫(日本における文化人類学のパイオニアであり、梅棹文明学とも称されるユニークな文明論を展開し、多方面に多くの影響を与えている人物/日本の生態学者、民族学者。国立民族学博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授、京都大学名誉教授)は、70年代に21世紀の世界をこう予言した。
かつて梅棹は『人類の未来』という書籍を構想したが、残念なことに完成することはなかった。そこで描こうとした未来が、あまりに悲惨だったからだ……。残された原稿の目次に記された最終章は“暗黒”とあり、“破滅”という言葉も見られた。まさに人類が過信した文明の進化における惨劇を予言していたとしか思えない。しかし、そのラストはギリギリのところで“光明”という言葉で結ばれていた。
小室は2000年に、人類の未来についてこう語っている。
「21世紀のぼく達に大切な事は、選ぶ力だということ。なぜなら、21世紀は明るいだけではなく、技術や科学の力がもたらす暗闇があるということも知っておかねばならないから。これはある意味警告なのかもしれませんが。すべてをコンピュータにハンドリングされた世界は崩壊の道を歩むしかないからです」(小室/2000年『Log-on to 21st Century』公演でのメッセージ)
はからずもTM NETWORKが警告してきた未来への警鐘が、著名な文化人類学者の意見と一致していたのである。
30周年プロジェクトで繰り広げられた長編物語は、かつて1987年にリリースされたTM NETWORKアルバム作品『humansystem』や、2000年に行われたコンサート『TM NETWORK Log-on to 21st Century』でも描かれた、行き過ぎた社会の成熟、テクノロジーの進歩への警告、破滅へと向かう人類。しかし、それを調査する為に潜伏していたTM NETWORKの3人というストーリーテリングへと通じていたのである。
そして、我らFANKSもまた潜伏者だったというメタ構造が取り入れられていることに注目したい。TM NETWORK伝説におけるキーパーソンの女性=CAROLの秘密が明かされていく謎めいたストーリーからも目が離せなかった。
TMは、エンタテインメントの“ラボ”
TM NETWORKが生み出したSFストーリー。その原典は1985年11月28日にリリースされた楽曲「ELECTRIC PROPHET(電気じかけの予言者)」にある。プロットとなった未来小説は、かつて、80年代初頭に小室の手で書かれている。思い入れの強さは『TM NETWORK 30th FINAL』公演、4曲目直前に宇都宮がアドリブでアコギでつま弾いたサプライズのワンフレーズ「♪Crete Island~」にもあらわれていた。
「あれは、PAスタッフが(突如演奏したサプライズを)知らなかったんで、ギターが鳴らなかったんですよ。メンバーにはもしかしたらって話はしていたんですけど。ギターの音が間に合わなかったからキーが取れなくなっちゃったの。“アレ?”って(苦笑)。
ホントはもう少し歌おうかと思ってたんだけどね。今回、『ELECTRIC PROPHET(電気じかけの予言者)』は、エンディングにSEで流れたんだよね。そんなこともあって、声に出してみようかなって瞬間的に思ったんですよ」(宇都宮/『30th FINAL アフターパンフレット』2015年4月17日)
そんな魅惑的なアクシデントも起きつつ30周年プロジェクトFINAL公演では、「ELECTRIC PROPHET(電気じかけの予言者)とともにTM史上屈指の名曲と名高い、木根作曲による「Fool On The Planet(青く揺れる惑星に立って)」が、感動的な夕焼けのシーンとともに23曲目のラストナンバーとなった。
「てっちゃん(小室)は“木根さんの曲が最後なんだよ!”って恩着せがましく言ってたね(笑)。でも、自分が書いた曲が最後になるっていうのは嬉しいっていうか、感慨深く演奏させてもらいました。
僕は、てっちゃんみたいにたくさんヒット曲を出してきたワケじゃないからね。TMだったら、アルバムで2,3曲で勝負してきたから。駄作を作れない辛さっていうかさ(苦笑)。10曲作れれば、そのうちの1曲でもいい曲があればいいんだろうけど、それが出来ないプレッシャー。僕の書く枠が決まっていて、それが絶対にいい曲でないといけないっていうね」(木根/『30th FINAL アフターパンフレット』2015年4月17日)
FINAL公演ラストの「Fool On The Planet(青く揺れる惑星に立って)」の夕焼けの映像シーンで、空を横切る飛行機雲が印象的だった。あれはオープニング映像で小室が乗っていたセスナだったのかもしれない。
「そういう風にくっつけたの(笑)。あれはロンドンのヒースロー空港から飛び立ったイメージだよね。あの飛行機雲は一時間くらい待っていたかな。みんな海外で撮ったと思ってるんじゃないのかな? あと『I am』直前で天を指差して、母船(宇宙船)とコンタクトをしているんだけど、あれは2012年の武道館の最初に戻る流れだよね。そこから始まったからね。
TMは、エンタテインメントの“ラボ”なんですよ。場所っていう意味だけじゃなくて、動きから何から全てが“ラボ”。実験室みたいなことと思ってもらえればいいのかなぁ。なので、一回も思い出として作った作品はないですからね」(小室/『30th FINAL アフターパンフレット』2015年4月17日)
究極のフィクション・プロジェクト、TM NETWORK
TM NETWORKの歴史における重要ナンバー「Fool On The Planet(青く揺れる惑星に立って)」を終えたラストシーン。ステージ上は光と煙に包まれ、TM NETWORKのメンバーは手を振りながら無言のまま異空間へ消えていった。
その後に流れる、エンドロールのラストに注目して欲しい。
最期まで目を離してはならない。TM NETWORKの歴史において重要アイテムだった“バトン”。モニター上にあらわれた秘密のコード。映画『2001年宇宙の旅』におけるモノリスのような存在であった“バトン”は、僕らFANKSの手に委ねられた。
2021年へと繋がっていく、情報の収束点となるintelligence Daysへの“バトン”である。
そもそも、『TM NETWORK 30th FINAL』公演は、2012年に復活した武道館公演『Incubation Period』のように人気シングル曲メインでの展開となると思いきや、コンセプチュアルな展開に徹したツアー『the beginning of the end』、『QUIT30』での成功、さらなる進化と結末をみせた拡張版『QUIT30 HUGE DATA』の大成功によって、CAROL組曲を軸のひとつとした現在のTM NETWORK最良の成果を伝えるショーとなった。
実験精神とエンタメ精神の絶妙なバランスによって生み出された、まさにTM NETWORKらしいコンサート、“僕らのロックショー”だったのだ。
最初に浮かんだのが“Incubation”という言葉
2012年、30周年プロジェクトのローンチにおける武道館公演『TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-』のコンセプトを確認する為におこなったインタビューから、小室の発言を抜粋したい。TM NETWORKが過去から未来へエンタテインメントを継承し、再構築し続けることであらたな文化的価値を生み出そうとしていたことが伝わるだろうか。
「今回のプロジェクトで最初に浮かんだのが“Incubation”という言葉でした。“潜伏”というイメージですね。
僕らTM NETWORKは、28年前から地球に“潜伏者”として潜り込んでいたんです。もともと、デビュー時から宇宙人的なことは言っていたので、わかる人には伝わると思うんですけどね。そもそもは、“1974年からの計画”だったということなんです。
まぁ、たしかにその頃、ぼくはSF小説好きのロック少年でした。でも、SFとプログレでいえばSFが先だったんです。もともとオンタイムで映画『2001年宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック監督のSF映画)を小学校4年生の頃にロードショーで観ているんですよ。そのあたりから、アーサー・C・クラーク(20世紀を代表するSF作家)に、興味をもちはじめました。
その結果、TM NETWORKの2枚目のアルバムのタイトルは『CHILDHOOD’S END』という、アーサー・C・クラークの長編小説『幼年期の終り』のタイトルを拝借しました。“地球外生命”などのキーワードは、1984年のデビュー時から散りばめられていたんですね」(小室/パンフ『-Incubation Period-』2012年2月14日)
小室の饒舌ぶりは、止まらなかった。
「子供の頃、広瀬正さんっていう、時間をテーマにしたSF作家が大好きでした。彼が『タイムマシンのつくり方』という小説を書いていて、初期TMは、完全に広瀬さんの影響が大きかったんです。ぼくは全巻読んでいて、そこからインスパイアされた影響が多くて、いわゆるネタ帳みたいなものでした。
彼の存在はそんなに有名ではないんですけど、“なんで誰も作品を映画化しないんだろう?”って思ってます。『1974』はもちろん、木根さんが作曲した『パノラマジック』(2枚目のシングル『1974』のカップリングに収録)も、ロシアの有人宇宙船ソユーズをテーマにしてたんですね。そういったSF的というか、大気圏外を伝えるヒントって、当時からたくさん投げかけていたんですよ」(小室/パンフ『-Incubation Period-』2012年2月14日)
母船へのTM活動報告書=Information Discovery Report
“Information Discovery Report”、小室が2012年の春に語っていたレア発言で30周年プロジェクトにおける報告を締めたいと思う。そう、TM NETWORKには未来しか残されていないのだ。
「科学的には未来にいけても、過去には行けないんですよ。でも光より早い移動ができれば未来へは行けるので。今、宇宙で軌道に乗っている人は確実に未来へ進んでいる。希望があるんだよ、未来は。
そんな意味では未来を考えることで過去をみているという発想もできる。そこまでが僕がいえる最大のこと。
未来に行ける人は、過去が見えている。経験したことでしか過去を変えることはできない。未来にさえ行けば、Beforeがあるということがわかるんだよね。」(小室/アフターパンフ『TM NETWORK 2012-2015』)
現実はかつての伝説を凌駕していく。そして、アルバム・タイトル『QUIT30』の通り、TM NETWORKプロジェクトは、ここでまたひとまずスリープ状態へ……。
PS:というか、当時はここで終わってしまうんじゃないかと危惧しましたが、みなさんご存知の通り“ネクスト”があるのです。次週、40周年シリーズ=現在へと追いつきます。
(【Part7】:2021年~2024年に続く)
Discography
ディスコグラフィー[2012-2015]
シングル
I am
《収録内容》1. I am
2. 君がいてよかった
3. I am(Instrumental)
4. 君がいてよかった(Instrumental)
ベストアルバム
TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999
《収録内容》DISC 1
1. 1974(16光年の訪問者)
2. パノラマジック(アストロノーツの悲劇)
3. 金曜日のライオン(Take it to the lucky)
4. クロコダイル・ラップ(Get away)
5. アクシデント
6. FANTASTIC VISION
7. DRAGON THE FESTIVAL(ZOO MIX)
8. YOUR SONG("D"MIX)
9. Come on Let’s Dance(This is the FANKS DYNA-MIX)
10. You Can Dance
11. GIRL
12. 雨に誓って ~SAINT RAIN~
13. All-Right All-Night(No Tears No Blood)
14. Self Control(方舟に曳かれて)
15. Get Wild
16. Fighting(君のファイティング)
DISC 2
1. KISS YOU
2. RESISTANCE
3. COME BACK TO ASIA
4. BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)
5. SEVEN DAYS WAR
6. GIRL FRIEND
7. COME ON EVERYBODY
8. JUST ONE VICTORY(Remix Version)
9. STILL LOVE HER(失われた風景)
10. GET WILD ’89
11. KISS YOU(KISS JAPAN)
12. COME ON EVERYBODY(WITH NILE RODGERS)
13. DIVE INTO YOUR BODY
14. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
DISC 3
1. TIME TO COUNT DOWN
2. WORLD’S END
3. RHYTHM RED BEAT BLACK
4. DREAMS OF CHRISTMAS
5. LOVE TRAIN
6. WE LOVE THE EARTH
7. WILD HEAVEN
8. 一途な恋
9. Nights of The Knife
10. GET WILD DECADE RUN
11. IT’S GONNA BE ALRIGHT
12. 10 YEARS AFTER -BOB BLOCKMAN MIX-
13. 80’s
14. Happiness×3 Loneliness×3
ベストアルバム
TM NETWORK ORIGINAL SINGLE BACK TRACKS 1984-1999
《収録内容》DISC 1
1. 1974(16光年の訪問者)(オリジナル・カラオケ)
2. パノラマジック(アストロノーツの悲劇)(オリジナル・カラオケ)
3. 金曜日のライオン(Take it to the lucky)(オリジナル・カラオケ)
4. クロコダイル・ラップ(Get away)(オリジナル・カラオケ)
5. アクシデント(オリジナル・カラオケ)
6. FANTASTIC VISION(オリジナル・カラオケ)
7. DRAGON THE FESTIVAL(ZOO MIX)(オリジナル・カラオケ)
8. YOUR SONG("D"MIX)(オリジナル・カラオケ)
9. Come On Let’s Dance(オリジナル・カラオケ)
10. GIRL(オリジナル・カラオケ)
11. 雨に誓って ~SAINT RAIN~(オリジナル・カラオケ)
12. All-Right All-Night(No Tears No Blood)(オリジナル・カラオケ)
13. Self Control(方舟に曳かれて)(Instrumental)
14. Get Wild(オリジナル・カラオケ)
15. Fighting(君のファイティング)(オリジナル・カラオケ)
DISC 2
1. KISS YOU(オリジナル・カラオケ)
2. RESISTANCE(オリジナル・カラオケ)
3. COME BACK TO ASIA(オリジナル・カラオケ)
4. BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)(オリジナル・カラオケ)
5. SEVEN DAYS WAR(オリジナル・カラオケ)
6. GIRL FRIEND(オリジナル・カラオケ)
7. COME ON EVERYBODY(Instrumental)
8. JUST ONE VICTORY(Remix Version)(オリジナル・カラオケ)
9. STILL LOVE HER(失われた風景)(オリジナル・カラオケ)
10. GET WILD ’89(オリジナル・カラオケ)
11. KISS YOU(KISS JAPAN)(オリジナル・カラオケ)
12. COME ON EVERYBODY(WITH NILE RODGERS)(オリジナル・カラオケ)
13. DIVE INTO YOUR BODY(Instrumental)
14. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT(Instrumental)
DISC 3
1. TIME TO COUNT DOWN(オリジナル・カラオケ)
2. WORLD’S END(オリジナル・カラオケ)
3. RHYTHM RED BEAT BLACK(オリジナル・カラオケ)
4. Dreams Of Christmas(オリジナル・カラオケ)
5. LOVE TRAIN(オリジナル・カラオケ)
6. We Love The Earth(オリジナル・カラオケ)
7. WILD HEAVEN(オリジナル・カラオケ)
8. 一途な恋(Instrumental)
9. Nights of The Knife(オリジナル・カラオケ)
10. GET WILD DECADE RUN(Instrumental)
11. IT’S GONNA BE ALRIGHT(Instrumental)
12. 10 YEARS AFTER -BOB BLOCKMAN MIX-(Instrumental)
13. 80’s(オリジナル・カラオケ)
14. Happiness×3 Loneliness×3(Instrumental)
ビデオ
TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-
《収録内容》※Blu-ray版1. Opening
2. We love the EARTH
3. ACTION
4. Human System
5. SEVEN DAYS WAR
6. Come on everybody + Come on Let’s Dance
7. GIVE YOU A BEAT
8. Nervous
9. 1974
10. TK Keyboard Solo
11. BEYOND THE TIME
12. I am
13. JUST ONE VICTORY
14. Get Wild
15. WILD HEAVEN
16. Be Together
17. Self Control
18. ELECTRIC PROPHET
19. TIMEMACHINE
20. Ending
21. Fool On The Planet(SPECIAL)
22. 永遠のパスポート(SPECIAL)
23. Love Train(SPECIAL)
24. KISS YOU(SPECIAL)
25. GIRL(SPECIAL)
26. I am(Music Video)(SPECIAL)
27. Photo Gallery(SPECIAL)
シングル
Green days 2013
《収録内容》1. Green days 2013
2. I am 2013
3. I am(TK EDM Mix)
4. Green days 2013(Instrumental)
ビデオ
TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-
《収録内容》※Blu-ray版1. Opening
2. Children of the New Century
3. MISSION PART1
4. IGNITION, SEQUENCE, START
5. BEYOND THE TIME
6. Human System
7. Here, There & Everywhere
8. She was not a human
9. Green days 2013
10. A Day In The Girl’s Life -CAROL組曲
11. Carol(Carol’s Theme I)-CAROL組曲
12. In The Forest -CAROL組曲
13. Carol(Carol’s Theme II)-CAROL組曲
14. The Other Side Of The Future -CAROL組曲
15. JUST ONE VICTORY
16. Diner Opening "You Can Dance"
17. Jam Session
18. 一途な恋
19. DIVE INTO YOUR BODY
20. Come on everybody + Come on Let’s Dance
21. Be Together
22. Get Wild
23. Dawn Valley
24. RESISTANCE
25. Love Train
26. Ending "Fool On The Planet"
27. I am
28. TETSUYA KOMURO MOVIE COMMENTARY(※初回生産限定盤Blu-rayのみ収録)
29. TM NETWORK CONCERT -INCUBATION PERIOD- 発売記念スペシャルイベント@渋谷公会堂(※初回生産限定盤Blu-rayのみ収録)
シングル
LOUD
《収録内容》CD
1. LOUD
2. ある日ある時いつか何処かで
3. LOUD(INSTRUMENTAL)
4. ある日ある時いつか何処かで(INSTRUMENTAL)
DVD
1. LOUD [MUSIC VIDEO]
2. A PLOT BY TETSUYA KOMURO
アルバム
DRESS2
《収録内容》1. Come On Let’s Dance 2014
2. Get Wild 2014
3. Self Control 2014
4. Be Together 2014
5. Just One Victory 2014
6. I am 2013
7. RAINBOW RAINBOW 2014
8. ACCIDENT 2014
9. 金曜日のライオン 2014
10. 永遠のパスポート 2014
蔵出し音源集
TMN GROOVE GEAR 1984-1994 SOUND SELECTION
《収録内容》DISC 1
1. INTRODUCTION(ANY TIME)
2. GET WILD(VER.0)
3. GET WILD
4. パノラマジック(LIVE VERSION)
5. RAINBOW RAINBOW(LIVE VERSION)
6. COME ON LET’S DANCE(LIVE VERSION)
7. YOU CAN DANCE(LIVE VERSION)
8. SELF CONTROL(LIVE VERSION)
9. NERVOUS(LIVE VERSION)
10. ALL-RIGHT ALL-NIGHT(LIVE VERSION)
11. DON’T LET ME CRY(LIVE VERSION)
12. TELEPHONE LINE(VER.0)
13. COME ON EVERYBODY(LIVE VERSION)
14. KISS YOU(LIVE VERSION)
DISC 2
1. GET WILD(LIVE VERSION)
2. BURNIN’ STREET(LIVE VERSION)
3. THIS NIGHT(VER.0)
4. 一途な恋(3RD MIX)
5. NIGHTS OF THE KNIFE(VER.0)
6. DIVE INTO YOUR BODY(LIVE VERSION)
7. 大地の物語(LIVE VERSION)
8. WE LOVE THE EARTH(LIVE VERSION)
9. 69/99(LIVE VERSION)
10. TIME TO COUNT DOWN(LIVE VERSION)
11. ELECTRIC PROPHET
ビデオ
TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end
《収録内容》1. Retrace(Opening)
2. LOUD
3. Scene 1
4. Come on Let’s Dance 2014
5. Kiss You
6. Scene 2
7. 永遠のパスポート 2014
8. 金曜日のライオン 2014
9. Scene 3
10. RAINBOW RAINBOW 2014
11. Be Together 2014
12. CUBE
13. Scene 4
14. I am 2013
15. Just One Victory 2014
16. TK Solo
17. Get Wild 2014
18. Scene 5
19. Self Control 2014
20. Scene 6
21. BEYOND THE TIME
22. Scene 7
23. Ending
[Special]
ACCIDENT 2014
Tetsuya Komuro Movie Commentary(Part 2)(※Blu-ray限定生産盤のみ収録)
アルバム
QUIT30
《収録内容》DISC 1
1. Alive
2. I am
3. [QUIT30]Birth
4. [QUIT30]The Beginning Of The End
5. [QUIT30]Mist
6. STORY
7. ある日ある時いつか何処かで
8. LOUD
9. 君がいてよかった
10. [QUIT30]Glow
11. [QUIT30]Loop Of The Life
12. [QUIT30]Entrance Of The Earth
13. [QUIT30]The Beginning Of The End II
14. [QUIT30]The Beginning Of The End III
15. Mission to GO
16. If you can
DISC 2
1. Always be there
2. [CAROL2014]A Day In The Girl’s Life
3. [CAROL2014]Carol(Carol’s theme I)
4. [CAROL2014]In The Forest
5. [CAROL2014]Carol(Carol’s theme II)
6. Alive(TK Mix)
DVD
1. I am(Music Video)
2. LOUD(Music Video)
3. Tetsuya Komuro Special Interview
BOXセット
CAROL DELUXE EDITION
《収録内容》DISC 1:CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991- LP DISC1(CD)
1. A DAY IN THE GIRL’S LIFE(永遠の一瞬)
2. CAROL(CAROL’S THEME I)
3. CHASE IN LABYRINTH(闇のラビリンス)
4. GIA CORM FILLIPPO DIA(DEVIL’S CARNIVAL)
5. IN THE FOREST(君の声が聞こえる)
6. CAROL(CAROL’S THEME II)
7. JUST ONE VICTORY(たったひとつの勝利)
DISC 2:CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991- LP DISC2(CD)
1. YOU’RE THE BEST
2. COME ON EVERYBODY
3. WINTER COMES AROUND(冬の一日)
4. SEVEN DAYS WAR(FOUR PIECES BAND MIX)
5. BEYOND THE TIME(EXPANDED VERSION)
6. STILL LOVE HER(失われた風景)
DISC 3:CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991- INSTRUMENTAL DISC(CD)
1. A DAY IN THE GIRL’S LIFE(永遠の一瞬)
2. CAROL(CAROL’S THEME I)
3. CHASE IN LABYRINTH(闇のラビリンス)
4. GIA CORM FILLIPPO DIA(DEVIL’S CARNIVAL)
5. COME ON EVERYBODY
6. BEYOND THE TIME(EXPANDED VERSION)
7. SEVEN DAYS WAR(FOUR PIECES BAND MIX)
8. YOU’RE THE BEST
9. WINTER COMES AROUND(冬の一日)
10. IN THE FOREST(君の声が聞こえる)
11. CAROL(CAROL’S THEME II)
12. JUST ONE VICTORY(たったひとつの勝利)
13. STILL LOVE HER(失われた風景)
DISC 4:CAMP FANKS ’89 at YOKOHAMA ARENA NEW EDITION(DVD)
1. CAROL TOUR FINAL OPENING
2. A Day In The Girl’s Life
3. Carol(Carol’s Theme I)
4. Chase In Labyrinth
5. Gigantica
6. Gia Corm Fillippo Dia
7. In The Forest
8. Carol(Carol’s Theme II)
9. Final Fighting
10. In The Forest(Piano version)
11. JUST ONE VICTORY
12. GIVE YOU A BEAT
13. CAROL TOUR FINAL OPENING
14. NERVOUS
15. COME ON EVERYBODY
16. Don’t Let Me Cry
17. PASSENGER
18. KISS YOU
19. RAINBOW RAINBOW
20. Confession ~告白~
21. Be Together
22. Come On Let’s Dance
23. Be Together
24. Get Wild ’89
25. DIVE INTO YOUR BODY
26. CAMP FANKS ’89 ENDING
シングル
Get Wild 2015
《収録内容》1. Get Wild 2015 -HUGE DATA-
2. Children of the New Century -FINAL MISSION-(Instrumental)
3. Get Wild 2015 -HUGE DATA-(Instrumental)
4. Just Like Paradise 2015(※デジタル配信版のみ収録)
ビデオ
TM NETWORK THE MOVIE 1984~
《収録内容》1. DRAGON THE FESTIVAL(1985年 日本青年館)
2. 金曜日のライオン(Take it to the lucky)(1984年 PARCO-PART III)
3. 1974(1984年 PARCO-PART III)
4. ACCIDENT(1986年 中野サンプラザ)
5. COME ON LET’S DANCE(1986年 読売ランド・オープンシアターEAST)
6. Get Wild(1987年 日本武道館)
7. Fool On The Planet(1987年 日本武道館)
8. Confession ~告白~(1989年 横浜アリーナ)
9. LOOKING AT YOU(1991年 代々木第一体育館)
10. A DAY IN THE GIRL’S LIFE(1989年 横浜アリーナ)
11. CAROL(CAROL’S THEME I)(1989年 横浜アリーナ)
12. Final Fighting(1989年 横浜アリーナ)
13. In The Forest(Piano version)(1989年 横浜アリーナ)
14. JUST ONE VICTORY(1989年 横浜アリーナ)
15. Be Together(1988年 代々木第一体育館)
16. Human System(1988年 代々木第一体育館)
17. 69/99(1991年 代々木第一体育館)
18. TIME TO COUNT DOWN(1991年 代々木第一体育館)
19. Love Train(1994年 東京ドーム)
20. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT(1994年 東京ドーム)
21. ELECTRIC PROPHET(1984年 PARCO-PART III/1985年 日本青年館/1992年 横浜アリーナ/1994年 東京ドーム)
BONUS:「TM NETWORK on "eZ-TV"」
1. KISS YOU(KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX from "eZ 7th")
2. COME ON EVERYBODY(from "eZ 13th")
3. NERVOUS / COME ON LET’S DANCE / Be Together / Get Wild / KISS YOU(DIGEST)(CAMP FANKS ’89 from "eZ 23rd")
4. TIME TO COUNT DOWN(from "eZ 36th")
5. WORLD’S END(RHYTHM RED LIVE from "eZ 40th")
6. 69/99(RHYTHM RED LIVE from "eZ 40th")
ビデオ
TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA
《収録内容》DISC 1
1. SEVEN DAYS WAR
2. Birth
3. LOUD
4. CAROL 2015 I
5. A Days In The Girl’s Life
6. Carol(Carol’s theme I)
7. Gia Corm Fillippo Dia
8. CAROL 2015 II
9. In The Forest
10. Carol(Carol’s theme II)
11. Just One Victory
12. Still Love Her
13. Looking At You
14. Always be there
15. We Love The Earth
16. TK Solo(HUGE DATA)
17. Get Wild 2014
18. I am
19. Fool On The Planet
20. Ending(Electric Prophet)
DISC 2(※Blu-ray豪華盤のみ)
1. Opening(SEVEN DAYS WAR)
2. Birth
3. WILD HEAVEN
4. TIME TO COUNT DOWN
5. The Beginning Of The End
6. Mist
7. Alive
8. 君がいてよかった
9. LOOKING AT YOU
10. Always be there
11. Still Love Her
12. Glow
13. I am
14. Get Wild 2014
15. Loop Of The Life
16. Entrance Of The Earth
17. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
18. Self Control
19. LOUD
20. The Beginning Of The End II
21. The Beginning Of The End III
22. Ending(Alive -TK Mix-)
ビデオ
TM NETWORK 30th FINAL
《収録内容》DISC 1
1. Just Like Paradise 2015
2. RHYTHM RED BEAT BLACK
3. Children of the New Century 2015
4. Here, There & Everywhere
5. SCREEN OF LIFE
6. Birth
7. CAROL 2015 I
8. A Day In The Girl’s Life
9. CAROL(Carol’s theme I)
10. Gia Corm Fillippo Dia
11. CAROL 2015 II
12. In The Forest
13. CAROL(Carol’s theme II)
14. Just One Victory
15. [INTERMISSION]
16. 月はピアノに誘われて
17. あの夏を忘れない
18. TK SOLO(30th FINAL)
19. Get Wild 2015
20. We Love The Earth
21. Be Together
22. I am
23. Fool On The Planet
24. Ending(Electric Prophet)
DISC 2(※Blu-ray豪華盤のみ)
TM NETWORKのオールナイトニッポン (30th FINAL EDITION)
BOXセット
TM NETWORK 2012-2015
《収録内容》DISC 1:TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-(2012年 日本武道館)
DISC 2:TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-(2013年 さいたまスーパーアリーナ)
DISC 3:TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end(2014年 東京国際フォーラム)
DISC 4:TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA(2015年 さいたまスーパーアリーナ)
DISC 5:TM NETWORK 30th FINAL(2015年 横浜アリーナ)
DISC 6:TM NETWORK 30th Documentary「beyond the fact」
DISC 7:COUNTDOWN JAPAN 14/15ライブ映像 +「I am」「LOUD」「Alive」Music Video
コンピレーション盤
GET WILD SONG MAFIA
《収録内容》DISC 1
1. Get Wild
2. Get Wild(“FANKS CRY-MAX” Version)[1987/6/24 日本武道館]
3. GET WILD ’89
4. Get Wild(“CAROL TOUR FINAL CAMP FANKS!! ’89” Version)[1989/8/30 横浜アリーナ]
5. Get Wild(“RHYTHM RED TMN TOUR” Version)[1991/2/22 仙台イズミティ21]
6. Get Wild(“tour TMN EXPO ARENA FINAL” Version)[1992/4/12 横浜アリーナ]
7. Get Wild(techno overdub mix)
8. GET WILD ’89(“TMN final live LAST GROOVE 5.18” Version)[1994/5/18 東京ドーム]
9. GET WILD DECADE RUN
10. GET WILD(“LIVE EPIC25” Version)[2003/2/23 国立代々木競技場第一体育館]
DISC 2
1. Get Wild(“DOUBLE-DECADE "NETWORK"” Version)[2004/4/21 横浜アリーナ]
2. Get Wild(“DOUBLE-DECADE TOUR FINAL "NETWORK"” Version)[2004/6/24 日本武道館]
3. Get Wild(“REMASTER” Version)[2007/12/3 日本武道館]
4. Get Wild(“Incubation Period” Version)[2012/4/25 日本武道館]
5. Get Wild(“FINAL MISSION -START investigation-” Version)[2013/7/20 さいたまスーパーアリーナ]
6. Get Wild 2014
7. Get Wild 2014(“the beginning of the end” Version)[2014/5/20 東京国際フォーラム]
8. Get Wild 2014(“30th 1984~ QUIT30” Version)[2014/12/10 東京国際フォーラム]
DISC 3
1. Get Wild 2014(“QUIT30 HUGE DATA” Version)[2015/2/8 さいたまスーパーアリーナ]
2. Get Wild 2015 -HUGE DATA-
3. Get Wild 2015(“30th FINAL” Version)[2015/3/22 横浜アリーナ]
DISC 4
1. Get Wild / ビクター・ファンタスティック・オーケストラ
2. Get Wild / Dave Rodgers
3. Get Wild / 小室みつ子
4. Get Wild(CITY HUNTER SPECIAL’97 VERSION) / NAHO
5. Get Wild / 玉置成実
6. Get Wild / 緒方恵美
7. Get Wild / 超新星
8. Get Wild / globe
9. Get Wild / Clementine
10. Get Wild / H ZETT M
11. Get Wild / Purple Days
12. GET WILD 2017 TK REMIX
13. GET WILD(Takkyu Ishino Latino Acid Remix)
14. GET WILD(SICK INDIVIDUALS Remix)
15. GET WILD(Dave Rodgers Remix)
シングル
Get Wild【完全生産限定盤/アナログ盤】
《収録内容》1. Get Wild
2. GET WILD ’89
3. GET WILD(techno overdub mix)
4. Get Wild(オリジナル・カラオケ)
シングル
GET WILD 2017 TK REMIX / GET WILD(Takkyu Ishino Latino Remix)
《収録内容》SIDE A
GET WILD 2017 TK REMIX
SIDE B
GET WILD(Takkyu Ishino Latino Remix)
シングル
GET WILD(Takkyu Ishino Remix)
《収録内容》SIDE A(45’’)
1. GET WILD(Takkyu Ishino Full Acid Remix)
SIDE B(33’’)
1. GET WILD(Takkyu Ishino Full Acid Remix)[Instrumental]
2. GET WILD(Takkyu Ishino Latino Acid Remix)
Chronology
活動年表[2012-2015]
2012.3.20 | ライヴ・コンサート 東日本大震災復興支援チャリティコンサート『All That LOVE -give & give-』(幕張メッセ 国際展示場)出演をもって活動再開 |
---|---|
2012.4.24 ~4.25 | ライヴ・コンサート TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-(単発コンサート/日本武道館) |
2012.4.25 | シングル I am |
2012.5.23 | ベストアルバム TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999 |
2012.5.23 | ベストアルバム TM NETWORK ORIGINAL SINGLE BACK TRACKS 1984-1999 |
2012.9.12 | ビデオ TM NETWORK CONCERT -Incubation Period- |
2013.7.20 | シングル Green days 2013 |
2013.7.20 ~7.21 | ライヴ・コンサート TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-(単発コンサート/さいたまスーパーアリーナ) |
2013.12.11 | ビデオ TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation- |
2014.4.22 | シングル LOUD |
2014.4.22 | アルバム DRESS2 |
2014.4.26 ~5.20 | ライヴ・コンサート TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end(コンサートツアー/6会場全10公演) |
2014.9.24 | 蔵出し音源集 TMN GROOVE GEAR 1984-1994 SOUND SELECTION |
2014.9.24 | ビデオ TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end |
2014.10.29 | アルバム QUIT30 |
2014.10.29 ~ 2015.1.11 | ライヴ・コンサート TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30(コンサートツアー/11会場全15公演) |
2014.12.24 | BOXセット CAROL DELUXE EDITION |
2014.12.31 | ライヴ・コンサート 『COUNTDOWN JAPAN 14/15』で大規模フェスイベントに初出演 |
2015.1.17 | トピック コンサートムービー『TM NETWORK THE MOVIE 1984〜 30th ANNIVERSARY』が全国の映画館にて公開 |
2015.2.7 ~2.15 | ライヴ・コンサート TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA(コンサートツアー/2会場全4公演) |
2015.3.21 | シングル Get Wild 2015 |
2015.3.21 ~3.22 | ライヴ・コンサート TM NETWORK 30th FINAL(単発コンサート/横浜アリーナ) |
2015.4.22 | ビデオ TM NETWORK THE MOVIE 1984~ |
2015.7.22 | ビデオ TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA |
2015.11.25 | ビデオ TM NETWORK 30th FINAL |
2016.3.23 | BOXセット TM NETWORK 2012-2015 |
2017.3.21 | BOXセット WORLD HERITAGE 〜Revival and Renewal BOX〜 |
2017.4.5 | コンピレーション盤 GET WILD SONG MAFIA |
2017.4.12 | シングル Get Wild【完全生産限定盤/アナログ盤】 |
2017.6.21 | シングル GET WILD 2017 TK REMIX / GET WILD (Takkyu Ishino Latino Remix) |
2017.11.1 | シングル GET WILD (Takkyu Ishino Remix) |
Interview
キーパーソンインタビュー
萩原克彦 (ステージプロデューサー)
TM NETWORKの活動を長きに渡り見つめてきた人物たちに話を聞くキーパーソンインタビュー。今回登場するのは、現在のTMのコンサートで舞台監督を務める萩原克彦。TMに関して初めに手がけた公演が1994年のTMN「終了」コンサートであったという異色の経歴から、今年の40周年ツアーに至るまで、挑戦に満ちた日々を振り返ってもらった。
「2年半ごとぐらいに何かしらニアミスがあって、そのたびに俺の目の前にTM NETWORKがやって来るんですよ」
── まずは、TM NETWORKとどんなふうに出会ったのかというところから聞かせてください。
萩原 TMがデビューする前の1981年、俺はヤマハで『ポピュラーソングコンテスト』の舞台監督をやっていたんだけど、その関東甲信越大会にウツ(宇都宮隆)さんがいたバンドが出たんです。おそらくそれが最初の接点です。そのバンドはヤマハの東京支部の推薦で嬬恋の本選会に出られることになったんだけど、ウツさんはそのタイミングでバンドを抜けちゃったんですよね(笑)。
── ポプコンの本選大会に出られるのに、ボーカルが代わってしまうというのもすごい話ですね。
萩原 普通だったらあり得ないですよ。でも、そこから時が流れて、TMはドーンと行きましたよね。俺はヤマハを辞めて、甲斐バンドの’83年の『THE BIG GIG』から’86年のファイナルツアーまで舞台監督をやった後、REBECCAを’87年ぐらいからやって、その頃にも何度かTMとニアミスしてるんです。
── その時期、TM NETWORKというグループをどんなふうに受け止めていたんですか。
萩原 その頃TMの舞台監督をやっていたのが、亡くなったオニさんこと鬼塚玲二。あいつとは、お互いが21、22歳の頃から知っていて。だから、鬼塚が演出をやったTMの最初の東京ドーム(『T-MUE-NEEDS STARCAMP TOKYO Produced by TM NETWORK』/1988年8月25日)とか、俺は観に行ってるんですよ。『CAROL』ツアーの前身の、フェンス(FENCE OF DEFENSE)が前座をやったコンサートですね。
あれを観たときに、いわゆる芝居チックな演出をしていたわけですよ。鬼塚は舞台監督をやりながら、ライヴの演出や台本を書くのも大好きだったから。でも俺は普通のバンドスタイルで“ロックンロールだぜ!”っていうほうのノリが好きだった(笑)。台本は、アーティストが書く詞や曲が担うものだから、演出家はアーティスト自身でいい。そう思っていたので、対照的でしたね。
『T-MUE-NEEDS STARCAMP TOKYO 1988.08.25』
(Blu-ray BOX『TM NETWORK THE VIDEOS 1984-1994』に収録)
── 当時のTMのライヴをご覧になったとき、以前ポプコンに出てカッコいいなと思っていた人がボーカルですよね。
萩原 そうです。物凄いと思いましたよ。でも、以前やっていたバンドとは全然リズムが違うし、音はデジタルだし。当時のウツさんはめちゃくちゃ踊ってたから、“えっ、同じ人?”と思いましたよ。そういったライヴを観たことも含めて……2年半ごとぐらいに何かしらニアミスがあって、そのたびに俺の目の前にTM NETWORKがやって来るんですよ。
── だから、TMNの「終了」コンサートを引き受ける運命だったんですよ。
萩原 (笑)。あのときは、1993年の年末に石坂(健一郎)からいきなり電話がかかってきて、「ちょっと会ってくれない?」というので、横浜のファミレスに行って2人で会ったんです。そこで、「来年の5月、空いてない?」「何やるの?」「TM」「どこでやるの?」「東京ドーム」って会話をしました。石坂と俺は、たまたまその’93年にイエロー・マジック・オーケストラの『テクノドン』のライヴに関わっているんですよね。
── なるほど! YMOの東京ドーム公演が、TMの東京ドーム公演のイントロダクションになったわけですね。
萩原 そうですね。TMで一緒に組むことになるメンバーに、『テクノドン』を一緒にやった諫山喜由もいたので。彼はもともと甲斐バンドの、俺の前の舞台監督でした。石坂も、自分のバンドの活動を終えた後にコンサート制作の仕事に就いて、甲斐バンドの現場とかでずっと一緒だったという流れがあるんですけど。そんな会話があってから、「じゃあ、1回メンバーと会うよ」という話になって、年が明けて1994年の1月に会うことになったんです。
「TMは誰も仕切ってくれない。だから、俺が仕切るしかなかったんです」
── その「終了」コンサートは、スタッフにとってはとにかく絶対的に時間がないコンサートだったわけですよね。
萩原 まず、2日間で40曲近くやります、初日はこの内容、2日目はこの内容で、ってセットリストが出てきたんです。俺はTM NETWORKのことは知っていたけど、そこまでの曲数までは当然頭にはなかったですから、公演日まで時間もないなかで「俺らでいいの?」って感じでしたよ。
それもあって、全体のビジュアル的な持っていき方をどうするかという部分は、EPIC・ソニーの映像チームだった坂西伊作が考えてくれたんです。伊作はすごく思い入れを持っていて、1曲目は絶対「金曜日のライオン」からのスタートにしたいと言ったり、サービス映像として当時のPVを流したりする演出をしたわけです。
そのうえで、伊作が「ステージは萩ちゃんに任せるよ」と言うから、「じゃあ、REBECCAでもやれなかったことをやろう」ということで、床の下も全部見える総アクリルのステージを提案しました。そのときに、アメリカのダラスでステージ制作をやっているチームと一緒にやろうという話になり、先ほどの諫山喜由が登場するんです。諫山はLOUDNESSのライヴでアメリカにずっと行ったりしていたので。
総アクリルのステージを組んだら、今度はその床下に照明のスポットのお花畑を作ろう、って俺が言って。当時はまだLEDがないですから、パーライトという照明を「電気代いくらかかるねん?」というぐらい並べて、さらに床の下からステージの上方まで連なる照明のタワーを作ろうということになりました。
── 総アクリルステージは、やりたくてもできなかったものなんですか。
萩原 アクリル板のコストが高いのと、床が透けて見えるじゃないですか。やっぱり、そこに立つのは恐怖心がある人もいるわけです。東京ドームの場合は2.7メートルだったかな。その高さの上だから、意外と怖いんですよ。
── その高さを、TMのメンバーは先に経験して臨んだんでしょうか。
萩原 現場でいきなり初めてだったんじゃないかなあ。当時は、あのサイズのステージを事前に組めるところがないから。
── とすると、音楽を演奏することとは別に、そういう精神的なハードルも、メンバーにはあったわけですね。
萩原 あると思うんですよ。イヤモニもない時代ですしね。その後は、「何かサプライズをやりたい」というリクエストが出てきたので、後方に組んだサブステージにEXPOピアノ(小室哲哉特注によるピアノ)を入れて、そこでアンコールの曲をやろうと言ったんです。
メンバーはどうやってサブステージまで行くんだよ?という話になりますが、俺は1989年のREBECCAからそれまでにX JAPANでも舞台監督をやって、東京ドームの形状は知り尽くしていたから。「三塁側のダッグアウトから、スタッフジャンパーを着て歩いていったら、お客さんは絶対気づかないよ。みんなメインステージの方を見てるんだから」って。演奏が終わったら、そこから歩いて退場すればいいですからね。
── それで、初日はアンコールまで大成功に終わったわけですよね。
萩原 そうしたらTK(小室哲哉)がその日の夜に、「2日目はまたあのステージから始めたい」って言い出すんですよ(笑)。そこからが大変で。サブステージから始めるのはいいとして、今度はメインステージに戻るまでをどうしようって。移動する時間が7分ぐらいかかったはずなんですよ。だから、「とりあえずメンバーが戻るまでバンドに演奏していてもらおうよ」ということで、2日目の1曲目、「1974」はあの演出になったんです。
── なるほど。ちょっと時間を戻して、本番前にどこかのリハスタでリハーサルをやったんだと思うんですが……。
萩原 芝浦スタジオの501スタですね。スタッフ全メンバーをミーティングルームみたいなところに入れて、「こういうふうにやりますよ」って段取り説明をしている様子が映像(『TMN final live LAST GROOVE 5.18』)に残っているんですが、あそこで最初に喋っているのが俺です(笑)。
── (笑)。TMのリハに舞台監督として立ち会ってみて、何か印象に残ったことはありますか。
萩原 まずですね、TM NETWORKのバンマスって誰ですか?っていう話で。バンドには普通、「今日は何と、何と、何をやります」みたいな感じで仕切ってくれるバンマスがいるわけです。でも、TMは誰も仕切ってくれない。だから、俺が仕切るしかなかったんですよ。
すっごく鮮明に覚えてるのは、芝浦でリハをやってる時に、俺が何か別の仕事と重なって、遅れて向かってたんですよ。そこでスタジオに電話して、「あと1時間以内には着くと思う。もうやってる?」とスタッフに聞いたら、「いや、先生(小室)が、萩さんが来るまでやらないって言ってます」「え、何で?」「仕切る人がいないから」って言うんです。先に進めておいてよって言ったんだけど、到着してみたら、みんな遊んでいるわけですよ(笑)。「すいません、遅くなりました」と言ったら、「じゃあ、仕切ってください」っていう。その流れでずっと今まで来てるんです。
「動き1つでお客さんを持って行けちゃうわけじゃないですか。なかなかいないんですよ、そういうアーティストは」
── 「終了」が最初というのも変な話ですが、そこからのTMの進化というか、積み重なってきているものを、萩原さんは何か感じられますか。
萩原 積み重なっているものがあるとしたら、全て毎回アレンジが変わっていって、常に進化していくという、TKの音楽に対する考え方。特にTM NETWORKには「潜伏者」っていう設定もあるわけじゃないですか。それを成立させるために、進化していく、時代が変わっていくっていうことを、全て音楽の中に入れてるんだと俺は思うから。そこはすごいなと思う。
もちろん、オリジナルの音源も大事にしているから、2012年の日本武道館(『TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-』)では、逆にオリジナルにけっこう忠実にやったんです。ただ、このときはTKが「停電になって、PAから音が消えちゃうんだよ」っていうアイデアを出してきた。そこで「COME ON EVERYBODY」と「Come on Let’s Dance」の途中で、音がバンとカットアウトする演出になったんですが……そうしたら、本当にトラブったの、知ってます?
── そういうアクシデントがあったことは映像にも残っていますが……。
萩原 メンバー3人が「なんか変だよね?」という顔をしている時に、俺がメンバーのところに行って、「今トラブってるから1回ハケよう」と言って楽屋に降りてもらうという。そこまでは、演出です。でもその時に、マニピュレーターが「萩さん、データのコンピュータが今本当に全部フリーズしてます。サブのほうで動かしますけど、まずメンバーにそう伝えてください」って言うんですよ。するとTKが、「ほらね、僕の言った通りでしょ」って(笑)。予言が本当になっちゃったんですよ。だから、TKをステージに連れてきて俺が右往左往してるシーン、あれはリアルです(笑)。
── そういうトラブルはこれまで何度もあったと思うんですが、そのなかで、木根さんに助けられたなという思い出はありますか。
萩原 2014年のツアー『QUIT30』の時に、木根さんコーナーを作ろうって話になったんですよ。TKが「舞台前で、ノーマイクで歌おうよ」って。その間、ウツさんはハケられるじゃないですか。それで、アコギ1本で舞台の縁に座って、「月はピアノに誘われて」を弾き語りで歌ったんですよ。あれはね、木根さんしかできない技。助けられましたね。ちょっと感動したんだよなあ。
── では、宇都宮さんに助けられたというか、宇都宮さんはやっぱり宇都宮さんだな、というような思いを持った場面はありますか。
萩原 そういう場面はライヴを観るたびに毎回思う。いったんステージに立ったウツさんは、もう圧倒的にスーパースターだから。MCがない中で、ウツさんは所作の1つ1つを見ても、ものすごくヒューマンな動きをしてくれているわけですよ。
例えば今年のツアー(『TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days 〜STAND 3 FINAL〜』)でも、「Nights Of The Knife」で3人が出てくるじゃないですか。それで照明がスッと入ってくる時に、深々とお辞儀してから始めるんです。あれは本番になって初めて出した彼の演出で、1人1人が何を思って表現していくかっていうところの、ウツさんの表現なんです。それ以前で言えば、「I am」の時に腕を上げるところとか、そういう動き1つでお客さんを持って行けちゃうわけじゃないですか。なかなかいないんですよ、そういうアーティストは。誰も真似できないと思う。まして、あのリズムで、あの滑舌で歌えるっていう。
「TMがいる限りは、まだ引退できないですし、いくつまでやれるかわからないけど、頑張ろうって思ってます」
── では、萩原さんが関わられたなかで、一番手応えを感じたライヴは?
萩原 2013年のさいたまスーパーアリーナ(『TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-』)ですね。ウツさんには申し訳ないけど……あのときは、ウツさんが病気になったことによって、想定していた作り方を全部ひっくり返して、TKのスケッチから、それを全部新たに具現化して、あのステージを作ったんです。
── 小室さんのスケッチがあったんですか。
萩原 先生はいつも、「こんな感じで」って、クレヨンで絵を描くんですよ。2013年の時は、ウツさんを助けるためには何ができるかっていう、そういう気持ちでみんな動いていたから、TKも演出としてこういうことをやったらいいんじゃないかって、アクターを入れたり、木根さんに駅員の格好をさせたり、電車を出したりね。池があって、森作れ、銃撃戦やれ、みたいなアイデアが次々と。もう、3日間寝られなかったけど(笑)、やり甲斐はあるわけです。あれが一番面白かったですね。そのうえで、ウツさんのこともあったから、やっぱり一番胸に響いてる。みんなで助けながら、ウツさん本人が一番頑張ってたわけじゃないですか。そういうみんなの気持ちが入っていたことも込みで。
── さて、この後もTMは続いていくんだと思いますが、今後のTMに対する期待、希望を聞かせてください。
萩原 期待、希望っていうよりも、どこまでやれるかわからないけど、みんな元気で、行けるとこまで行きましょうよっていう気持ちになっちゃっていますね。歳も同じだし。ただ、今60代のみんなが、現役でこれまでと同じように一緒にやれているっていうのは、ありがたい話です。俺も、TMがいる限りは、まだ引退できないですし、いくつまでやれるかわからないけど、頑張ろうって思ってますよ。
── では、どなたかにでもいいですし、3人に対してでもいいんですが、注文をつけるとしたら、何かありますか。
萩原 セットも映像も何もなくて、私服で普通にステージ袖から出てきてロックンロール!っていうのを1回やりませんか。裸のTM NETWORKで、ライヴハウスでやっているみたいな感じで。生演奏で、ベーシストも入れちゃって。でもそれは、TMの楽曲の良さをちゃんと届けるっていう意味で。そういうのを見てみたいですね。
── その提案には、ファンからも相当賛成票が集まるんじゃないですか。
萩原 どうなんですかね? それは逆に、TM NETWORKではないとも思うから……それでも俺は、全く真逆なものも聴いてみたい。最近は木根ちゃんが生ピアノを弾いて、先生はハモンドオルガンを弾いて、だんだんヒューマンに戻っていくじゃないですか。何か、映像もなしで、普通に袖から出てこれるようなものもいいなと思うんだけど、俺だけかな。
萩原克彦(はぎわら・かつひこ)
1958年生まれ。財団法人ヤマハ音楽振興会にて『ポピュラーソングコンテスト』などの舞台監督を務めた後、コンサート制作会社・シャワーを設立。1994年以降のTM NETWORKを始め、甲斐バンド、REBECCA、渡辺美里、X JAPANなど、約45年に渡り数々の国内アーティストのステージを手がける。