2024年4月号|特集 大滝詠一 EACH TIME

【Part4】12インチ2枚組レコード(EACH TIME 40th Anniversary Edition)|『EACH TIME VOX』音質徹底検証!

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2024.4.24


2004年発表の『20th Anniversary Edition』、2014年発表の『30th Anniversary Edition』と、10周年ごとに音質の進化によって新たに生まれ変わっていると言っていい『EACH TIME』。このたび発表された『40th Anniversary Edition』の音はどんなきらめきを放っているのか。オーディオ評論家の山本浩司が『EACH TIME VOX』に収められたCD、5.1chサラウンド、ハイレゾ、12インチ・レコードの音質を徹底検証。その第4回は12インチ2枚組レコード(EACH TIME 40th Anniversary Edition)を聴いた。

検証・文/山本浩司 写真/島田香


’84年当時の『EACH TIME』はアナログLPで聴くべきアルバムだった


 オリジナル盤『EACH TIME』は’84年3月21日にまずアナログLPが発売され、その後6月1日にCDが発売されている。ソニーとフィリップスが共同開発した(音楽)CDは’82年10月にソフト、ハード(プレーヤー)が手を携えて登場したが、オーディオマニアではなく、ふつうの音楽ファンにCDが認知され始めたのはその翌々年、'84年頃だったように思う。CD発売前夜の’81年に“ロンバケ”を大ヒットさせた大滝詠一の新作、つまりこの『EACH TIME』がその普及の役割を果たしたのは間違いないだろうし、また「CD50」と言う型番が付けられたポータブルCDプレーヤーが5万円を切る価格でソニーから登場して話題となったのも’84年だった。予想通りこのポータブルプレーヤーは大ヒットを記録し、その後世界に先駆けて我が国の音楽市場の主役はLPからCDへと移り変わっていくことになる。

左は’84年3月21日リリースのオリジナルLP。右は’84年3月21日リリースのMASTER SOUND盤。


 しかしながら本作『EACH TIME』の初出CDは、本欄の第1回で触れた通り、音質面では思い切り残念な仕上がりだった。一言でいえば“音が小さい”。音圧レベルが低いゆえに迫力に乏しく音が痩せたように聴こえて、初代の据置型CDプレーヤーを入手していたオーディオマニアのぼくをはげしくガッカリさせたのだった。“なにがCDは未来の音だ、全然ダメじゃん”と。

 で、今回改めて『EACH TIME』の’84年オリジナル盤LPをお借りして聴いてみたが、音圧感に乏しく痩せた音のCDと異なり、断然音がいい。やはり時代の端境期に登場したこの作品は、アナログLPで聴くべきアルバムだったのだ。まあそれはそうだろう、大滝詠一自身が“CDの音”をどう仕上げるかを十分にわかっていなかったのだから。

針先をドライブする“エネルギー伝達”システムによるアナログLPの高音質







山本浩司(やまもと・こうじ)

月刊『HiVi』、季刊『ホームシアター』の編集長を経て、2006年よりフリーランスのオーディオ評論家に。リスニング環境はオクターブ(ドイツ)のプリJubilee Preと管球式パワーアンプMRE220の組合せで、38cmウーファーを搭載したJBL(米国)のホーン型スピーカーK2S9900で再生している。ハイレゾファイル再生はルーミンのネットワークトランスポートとソウルノートS-3Ver2、アナログプレーヤーはリンKLIMAX LP12を愛用中。




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