Document
40周年解説ドキュメント[Part 4 : 1990-1994]
40年に及ぶTM NETWORK活動史を、作品、ライヴ、同時代における重要トピックと共に総括するドキュメンタリー。Part 4では、“TMN”へのリニューアルからプロジェクト終了という大きな節目を迎えることとなった1990年~1994年を振り返る。
アーティスト写真/『TM NETWORK WORLD HERITAGE』同梱ブックレットより
TM NETWORK史上初となるシングルチャート1位獲得
1990年7月7日、21枚目のシングル「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」はリリースされた。実は、TM NETWORK史上初のシングルチャート1位となった作品である。これまでのシングルで人気のあった「Get Wild」、「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」、「SEVEN DAYS WAR」などはロングセラーで売上を伸ばしたため、初登場1位ではなかったのだ。
前作「DIVE INTO YOUR BODY」より1年ぶりのシングルとなり、マクセルカセットテープ『NEW UDシリーズ』のキャンペーンイメージソングとして1990年1月末にレコーディングされ、3月10日からCMがオンエアされた本作。実は当初、販売予定はなかったが問い合わせが殺到しシングル化されたという、FANKSによるファンダム現象を裏付けるリリースとなった経緯を持つ。
「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」
1990年7月7日発売
「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」は、時系列的にTM NETWORKからTMNへアーティスト名をリニューアルする2ヶ月前のリリースだったこともあり、ハードロックな雰囲気を持つギターロックなサウンドとなった。ギタリストには、フランク・ザッパに見出され、当時デュラン・デュランのギタリストで、小室哲哉のソロ活動でもサポートギターとして活躍した技巧派、ウォーレン・ククルロを起用。後の、ロック色が強くなるTMNプロジェクトへの橋渡しとなる、ある種ターニングポイントな作品となった。
この曲で注目したいのがドラム音源で、シングルバージョンではシンセサイザーやサンプラー、シーケンサーなどを統合した電子楽器であるシンクラヴィアによる打ち込みだったのだが、アルバムバージョンではより重厚感ある山木秀夫による生ドラムが起用された。TMの場合、同じタイトルの曲であってもアレンジや参加メンバーが異なることが多々ある。このことは、コンサートにおいても毎回異なるアレンジ、バージョンをアップデートし続けていく攻めの思想のあらわれといえるだろう。
リスナーとの交流を意識したメッセージソングという構造
当時、小室哲哉は、「TM NETWORKとTMNの両方に対応可能な曲であり、付き合い始めたカップルに共感してもらえる歌詞になっていると思います」(雑誌『WHAT’s IN?』1990年12月号より)と語っており、歌詞は英語を使わず、不思議と巡り合った2人の絆を描きながら、急ぐ様に、転がる様に、揺れる気持ちによるスピード感をサウンドで演出していた。
小室の手による歌詞を解読していくと、実はただのラブソングではなく、TM NETWORK時代でいうところのシアトリカルな作風のルーツとなる「ELECTRIC PROPHET(電気じかけの予言者)」へと通じるセンスを匂わせていたことに気がつく。“夢が見つかるまでは傍にいて欲しいから強く抱きしめていて 君はそう言っていた”というフレーズの通り、リスナーとの交流を意識したメッセージソングという構造にもなっていることに着目したい。
“TM NETWORKは、もう、おしまいです”。TMNプロジェクトへの進化
1990年8月28日、六本木の全日空ホテルにてメンバーが集まり『TMNリニューアル宣言記者会見』は突如行われた。TM NETWORKはアーティスト名やブランドを、TMNへとリニューアルしたのである。雑誌に踊った “TM NETWORKは、もう、おしまいです”という衝撃のキャッチコピーと新たなTMNロゴに心底驚かされたものだ。
TMN RENEWAL宣言
20世紀最後の10年を迎えて、我々TMネットワークはその活動を『音楽を核としたまったく新しい領域』へと展開します。
それは一つの時代、もっといえば一つの歴史を作り出す意思と可能性を持ったものです。
我々はデビュー以来『TMネットワーク』というメディアを通じて常に新しいヴィジョン、新しいエンタテイメントを提供し続けてきました。そして、それらはすべて、誰も成し得なかった創造の世界を構築し、世の中に強い衝撃を与えてきたと自負しています。しかし、そのヴィジョンもエンタテイメントも、我々が真に目指していることから見ればほんの小さな一部でしかないのです。TMネットワークとしてのこれまでの行為は我々の壮大なる構想のほんのプロローグでしかない。
そして今、我々はあらゆるクリエイティブの頂点へと挑む新しい段階に達したのです。ここに『プロジェクト・TMN』の開始を宣言します。それはまったく異質な、誰もが自分の眼を自分の耳を自分の精神を疑うようなものでしょう。
驚いて欲しい。恐れおののいて欲しい。あきれて欲しい。TMNによるまったく新しいプレゼンテーション。世にその全貌を現す日まで、もうまもなく、どうぞご期待ください。
1990.8.28
宇都宮隆 ・ 木根尚登 ・ 小室哲哉 ・ with Mr.G
リニューアルと共に提示されたキーワード
企業がCI=コーポレートアイデンティティーの変更を広告代理店的発想でブランディングしていた時代。TMNは、そんなクリエイティブ要素をアーティスト活動に取り入れたのである。実は、リニューアルという言葉自体が、当時はまだ一般的なワードではなく、TMNが世に先んじて広めた言葉だったりする。
リニューアルに伴い、TMNは“シークレット・リズム”、“終末への逃走”、“ピュア・デカダンス”という3つのキーワードを発表した。小室は、「アルバムの音を作ってから、リニューアルという言葉を思いついて、使うようになった」(雑誌『月刊カドカワ』1991年10月号より)と、後に語っている。このことは、リニューアルがあくまでもサウンドから派生した結果であったことが解読できる。なお、当時、TMからTMNへの変化について、1970年代のハードロック、1980年代のシンセポップ、1990年代のシンクラヴィアを中心とした最新機器を活用した音、展開、時代性をコラージュして融合すると、音楽性のアップデートについて説明していたことも印象的だった。外面は肉体的にワイルドに、内面はテクノロジーによって緻密に、ということだ。
さらにTMN史上最も謎なのが、TMN第4のメンバーとして発表され、ツアー『TM NETWORK RHYTHM RED TMN TOUR』や、タイアップとなったハウス『O’ZACK』CMにも登場したロボットMr.G=ガルボア(第4のメシアMr.GALBOUR)だ。ガール+ボーイから名付けられたという、敵か味方かも分からない存在。後のアルバム『EXPO』のアートワークにも実は宇宙船内部のシーンに登場しているのだが、詳しい説明はない。ガルボアに関しての唯一の情報源は、豪華な装丁だった写真集『RHYTHM RED』に特典として付いてきたポートレートの裏面に“宇宙の意思”として意味深な文章が掲載されていたのみである。これもまた、TMらしい謎めいた考察の要因だった。
CDの音質を超える100kHzサンプリング・レートでの制作
TMN期のレコーディングでは、いわゆるハードディスクレコーディングが可能な、当時数億円したシンクラヴィアを多用することで、CDの音質を超える100kHzサンプリング・レートでマスターデータが作られた。しかし、当時主流だったCDで対応できるのが44.1kHzまでのため、CDフォーマット向けに44.1kHzへと小室曰く、“あえて劣化させた”という表現がリスナーを驚かせた。一体、レコーディングスタジオの現場ではどんな音で聴こえていたのか? そんなワクワク感が想像力を刺激してくれたのである。
1990年9月28日リリース、TMNへのリニューアル第1弾シングル「TIME TO COUNT DOWN」は、20世紀最後のカウントダウンの緊張感を表現した。ハードなディストーションギターはナイト・レンジャーのブラッド・ギルスによる演奏であり、ドラムスのヘヴィな2バスは打ち込みではなく山木秀夫による生演奏。ベースは、スラップ奏法を意識した小室によるシンセベースで構成。勢い溢れるレッドゾーンへと振り切ったリズムを表現した。当時、小室や宇都宮隆がハードロックやメタル・サウンドを敬愛し、スタジアムバンドとして世界的ヒットを飛ばしていたガンズ・アンド・ローゼズやモトリー・クルーにハマっていたことが、サウンドの変化に大きな影響を与えていた。
1990年10月25日にリリースしたハードロックをテーマとしたアルバム『RHYTHM RED』について、宇都宮は「TMが一度解散して、全く新しいグループのレコーディングに関わっているようだった」(雑誌『GB』1990年12月号より)と語り、木根尚登は、「バラード『LOOKING AT YOU』は自分が歌うつもりはなかったの。これと『TENDER IS THE NIGHT』を作って。そうしたら、てっちゃんが俺に『歌いなよ!』って。驚いたよね。ロックな『REASONLESS』は、21世紀を意識した曲だった。いまロックをやっておかないと終わっちゃう予感があったの。てっちゃんらしい先見の明だよね」(『TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30』ツアーパンフレットより)と回想する。
作詞家に、これまでのTMにはなかった男性的視点を打ち出すためか、フジテレビのドラマ『同・級・生』で脚本を手掛けていた当時23歳の坂元裕二を起用したことも興味深い。大ヒットドラマ『東京ラブストーリー』のヒットが翌年1991年だったことを考えると、これもまた先見の明といえるだろう。
さらに、アルバム『RHYTHM RED』には、ハウスアレンジによる「RHYTHM RED BEAT BLACK」が収録されていたこともTMらしさがあった。ミュージックビデオではプリンスからの影響が垣間見え、サウンドはソウル・II・ソウルによるグラウンドビートを軸にしながらも、イントロでは葛城哲哉による演奏の、70年代風トーキング・モジュレーターを活用したギターを、あえてシンクラヴィアに録音し、小室がサンプリング的に演奏するという独特な手法となった。また、このことは、ダンスミュージックへの進化を示唆するという次回作への予告的ヒントにもなっていた。
グルーヴ構築を意識したダンスミュージックへの示唆
1991年のTMNは、9月5日にアルバム『EXPO』をリリースする。それぞれの楽曲が持つ多様性を、“音楽の博覧会的パビリオン”とした1枚だ。TMNへリニューアルしたことで制約を外し、ハウス、ロック、フォーク、ラテン、ニューミュージック、メタル、プログレなど、全く異なるジャンルを表現するうえで、1曲1曲が博覧会のパビリオンのイメージを持つアルバムとしてコンセプトをEXPOと表現。TM NETWORK期のアルバムはSF的、無国籍風のサウンドだったが、『EXPO』ではTOKYOをアイデンティティーとしたという。
このことは、世の中がドラマやCMタイアップの成功によってミリオンヒットのムーブメントへ突入していた影響があった。カメリアダイアモンド『LOVE EARTH 〜RED ROCK編〜』CMソングとして起用され、1991年5月22日にリリースされた「Love Train」は、当時一斉を風靡していたカラオケ文化を初めて意識して作った曲と小室はコメントしている。“Love”をテーマに歌詞設定したことも、当時最大のヒット曲だったKAN「愛は勝つ」や小田和正「ラブ・ストーリーは突然に」を意識したからだろう。結果、TM NETWORK時代を含めた過去最大のシングルセールスを記録することになった。本作のミュージックビデオには、当時同じレコード会社所属であり小室が楽曲提供を行っていた東京パフォーマンスドールも出演。後の、篠原涼子ソロデビューにおけるプロデュースワークの布石となった。
小室はマスへ目を向けながらも、TOKYOという世界でも類を見ない、何でも手に入るごった煮の街。そんな世界観に似合うストリートサウンドの表現手法を同時に意識していたのかもしれない。1991年から1992年にかけ過去最大の約70公演が行われた全国ツアー『TOUR TMN EXPO』では、小室はシンセサイザーの横になんと、当時では珍しくターンテーブルを設置。ライヴ中に、ヒップホップよろしくレコードをスピンしスクラッチノイズを取り入れていたのだ。
アルバム『EXPO』の2曲目に収録された「We Love The Earth(Ooh, Ah, Ah, Mix)」はハウスミュージックに影響され、シングルバージョンから大きくリプロダクションされたナンバーだ。エコロジーをテーマにした作品でもある。洋楽に負けない音作りを意識し、エンジニアにゲイリー・ライトを迎え、アルバムバージョンではニューヨークサウンドを取り入れた。90年代初頭のマドンナによるシングル曲「Vogue」、「Rescue Me」などと聴き比べるとその意図は伝わりやすいかもしれない。低音の効いたキックとベースによるブレイクビーツでグルーヴを構築する手法は、当時の日本の音楽シーンでは画期的な音作りだった。
その後生まれたシングルが、1993年9月29日リリースの意欲作「一途な恋」だった。そう、本来ならTMNによるグルーヴへのチャレンジは1993年末から1994年年頭に計画していた新作アルバムのリリースへと結実するはずだった。しかし、急遽方向性は変更され、グルーヴ構築を意識したダンスミュージックへのサウンドのこだわりは1993年に結成された小室プロデュースによるtrfへと継承されていく。
1994年、TMNプロジェクト終了へ
1994年4月21日、TMNは“DECADE”となるデビュー10周年を迎えると同時に、新聞朝刊の全面広告にて突如TMNの終了を宣言する。同日には、TMNラストシングル「Nights of The Knife」をリリース。そして、メンバー自らが経緯を解説する、ニッポン放送『オールナイトニッポン』“プロジェクト終了スペシャル”がオンエアされた。
すべては10年前からの計画に基づいてのプロジェクトだったと言い切ったのである。
そもそも、アーティスト活動のことを「プロジェクト」として表現することは、実はTM NETWORKとして1984年当時から語っていた定説だった。こういった考え方は、ITカルチャーを経由した今の時代なら理解可能かもしれないが、やはり当時は早すぎた発想だったといえるだろう。
ラストシングルとなった「Nights of The Knife」の歌詞は、作詞家・小室みつ子がメンバー3人の意向を受けて手がけた。1987年にリリースしたアルバム『Self Control』収録の、木根尚登作曲による人気曲「Fool On The Planet(青く揺れる惑星に立って)」の続編を意識して、終了こそが新たな旅立ちとなる前向きな歌詞として描かれた。
馬鹿げた夢を持った奴が、大きな事を成し遂げて、また新しい夢が見つかった。ずっと一緒にいた恋人も何だか大人びて、少し切ないけど、じっとしていられない気持ちが抑えられない。あの懐かしい場所で、また夢に向けて歩いていく、というイメージが小室みつ子によって言語化されたのである。
終わりではなく、新しいはじまりの歌だったのだ。
こうして「Nights of The Knife」は、感慨の涙より、頭を切り替え、前向きな気持ちに向かって生み出されたナンバーへと仕上がった。そして、1994年5月18日・19日、東京ドームにて、ラストライヴ『TMN 4001 DAYS GROOVE』は開催される。突然の終了宣言から1ヶ月を待たずに、人気絶頂、最盛期でのプロジェクト終了。それは、当時の音楽シーンに大きな影響とインパクトを与えた。NHKの全国ニュースでもその模様は放送され、TMNの存在は、日本を代表する音楽文化の1ページとして刻まれることになる。
こうして、1984年にスタートしたTM NETWORK〜TMNにかけての10年間のプロジェクトは終了した。
その直後、すべては事前にプログラムされていたかの如く、小室哲哉は音楽プロデューサーとして1994年から1995年へかけてtrfや篠原涼子、hitomi、H Jungle with t、安室奈美恵、globeなどで、ヒット曲を立て続けに生み出した結果、平成カルチャーを代表するTKブームが勃発。小室は、TMメンバー宇都宮や木根のソロワークもプロデュースすることになる。
そして、数年後。終了したかに見えたTMNプロジェクトは、TM NETWORKとして再起動を試みることになる。物語はまだまだ続いていくのだ。
(【Part5】:1999年~2008年に続く)
Discography
ディスコグラフィー[1990-1994]
シングル
THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
《収録内容》1. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
2. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT(INSTRUMENTAL)
シングル
TIME TO COUNT DOWN
《収録内容》1. TIME TO COUNT DOWN
2. WORLD’S END
アルバム
RHYTHM RED
《収録内容》1. TIME TO COUNT DOWN
2. 69/99
3. RHYTHM RED BEAT BLACK
4. GOOD MORNING YESTERDAY
5. SECRET RHYTHM
6. WORLD’S END
7. BURNIN’ STREET
8. REASONLESS
9. TENDER IS THE NIGHT
10. LOOKING AT YOU
11. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
シングル
RHYTHM RED BEAT BLACK
《収録内容》1. RHYTHM RED BEAT BLACK
2. DREAMS OF CHRISTMAS
ビデオ
RHYTHM RED BEAT BLACK
《収録内容》1. SECRET RHYTHM
2. RHYTHM RED BEAT BLACK
3. TIME TO COUNT DOWN
シングル
RHYTHM RED BEAT BLACK(Version 2.0)
《収録内容》1. RHYTHM RED BEAT BLACK(Version 2.0)/ TMN
2. RHYTHM RED BEAT BLACK(Version 300000000000)/ 電気GROOVE
ビデオ
WORLD’S END I Rhythm Red Live
《収録内容》1. WORLD’S END
2. SECRET RHYTHM
3. THRILL MAD NATURAL
4. TOMORROW MADE NEW
5. KISS YOU
6. RHYTHM RED BEAT BLACK
7. COME ON EVERYBODY
8. KISS YOU
シングル
Love Train / We love the EARTH
《収録内容》1. Love Train
2. We love the EARTH
ビデオ
WORLD’S END II Rhythm Red Live
《収録内容》1. 69/99
2. GET AWAY
3. WORLD’S END
4. GOOD MORNING YESTERDAY
5. GET WILD
6. ALL-RIGHT ALL-NIGHT
7. TIME TO COUNT DOWN
8. LOOKING AT YOU
9. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
アルバム
EXPO
《収録内容》1. EXPO
2. We Love The Earth(Ooh, Ah, Ah, Mix)
3. Love Train
4. Just Like Paradise
5. Jean Was Lonely
6. Crazy For You
7. 月の河/I Hate Folk
8. あの夏を忘れない
9. 大地の物語
10. 月はピアノに誘われて
11. Tomorrow Made New
12. Think Of Earth
シングル
WILD HEAVEN
《収録内容》1. WILD HEAVEN
2. Dreams of Christmas(’91 NY MIX)
ライヴアルバム
TMN COLOSSEUM I
《収録内容》1. Crazy For You
2. Ipanema ’84
3. Self Control
4. A Day In The Girl’s Life
5. Carol(Carol’s Theme I)
6. Chase In Labyrinth
7. Gigantica
8. Gia Corm Fillippo Dia
9. In The Forest
10. Carol(Carol’s Theme II)
11. Fighting
12. Just One Victory
13. Get Wild
ライヴアルバム
TMN COLOSSEUM II
《収録内容》1. Be Together
2. Resistance
3. Kiss You
4. Don’t Let Me Cry
5. Telephone Line
6. Beyond The Time
7. Love Train
8. The Point Of Lovers’ Night
9. Dive Into Your Body
10. Fool On The Planet
リミックスアルバム
TMN CLASSIX 1
《収録内容》1. Channel ’93
2. Dive Into Your Body(extended 12’ version mix)
3. Get Wild(techno overdub mix)
4. We Love The Earth(single overdub mix)
5. Rhythm Red Beat Black(house sample food mix)
6. Just Like Paradise(expo overdub mix)
7. Interval
8. Ano Natsu o Wasurenai(motion picture mix)
9. Human System(cafe de paris mix)
10. Confession(promotion mix)
11. Telephone Line(lover’s mix)
12. The Point Of Lovers’ Night(rhythm red version)
リミックスアルバム
TMN CLASSIX 2
《収録内容》1. Channel ’93 Part 2
2. Wild Heaven(extended hard core mix)
3. Love Train(extended euro mix)
4. Come On Everybody(garage mix)
5. U.K.Passenger(u.k.lap tecno mix)
6. 69/99(rhythm red version)
7. Interval 2
8. Time Passed Me By(moonlight mix)
9. Daichi No Monogatari(expo version)
10. 7 Days War(album overdub mix)
11. Girlfriend(motion picture version)
12. Sad Emotion(album version)
13. Time Passed Me By(zurich mix)
14. Just One Victory(single 7’ version)
シングル
一途な恋
《収録内容》1. 一途な恋
2. 一途な恋(ANOTHER MATERIAL)
3. 一途な恋(Instrumental)
シングル
Nights of The Knife
《収録内容》1. Nights of The Knife
2. Nights of The Knife(Instrumental)
BOXセット
TMN GROOVE GEAR
《収録内容》CD:TMN GROOVE GEAR 1
1. INTRODUCTION(ANY TIME)
2. GET WILD(VER.0)
3. GET WILD
4. 1974
5. 永遠のパスポート
6. パノラマジック(LIVE VERSION)
7. RAINBOW RAINBOW(LIVE VERSION)
8. COME ON LET’S DANCE(LIVE VERSION)
9. YOU CAN DANCE(LIVE VERSION)
10. SELF CONTROL(LIVE VERSION)
11. NERVOUS(LIVE VERSION)
12. ALL-RIGHT ALL-NIGHT(LIVE VERSION)
13. DON’T LET ME CRY(LIVE VERSION)
14. FOOL ON THE PLANET
CD:TMN GROOVE GEAR 2
1. GET WILD ’89
2. HUMAN SYSTEM
3. FALLIN' ANGEL
4. TELEPHONE LINE(VER.0)
5. TELEPHONE LINE(LOVER’S MIX)
6. STILL LOVE HER
7. COME ON EVERYBODY(LIVE VERSION)
8. KISS YOU(LIVE VERSION)
9. BURNIN’ STREET(LIVE VERSION)
10. GET WILD(LIVE VERSION)
11. DAWN VALLEY
12. THIS NIGHT(VER.0)
CD:TMN GROOVE GEAR 3
1. GET WILD(TECHNO OVERDUB MIX)
2. LOVE TRAIN
3. あの夏を忘れない
4. 一途な恋(3RD MIX)
5. NIGHTS OF THE KNIFE(VER.0)
6. DIVE INTO YOUR BODY(LIVE VERSION)
7. 大地の物語(LIVE VERSION)
8. WE LOVE THE EARTH(LIVE VERSION)
9. 69/99(LIVE VERSION)
10. TIME TO COUNT DOWN(LIVE VERSION)
11. ELECTRIC PROPHET
VHS:TMN EXPO ARENA FINAL
1. CRAZY FOR YOU I
2. JUST LIKE PARADISE
3. DON’T LET ME CRY
4. RHYTHM RED BEAT BLACK
5. JEAN WAS LONELY
6. PIANO SOLO
7. 月はピアノに誘われて
8. HUMAN SYSTEM
9. さよならの準備
10. GIRL FRIEND
11. CRAZY FOR YOU II
12. SELF CONTROL
13. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
14. LOVE TRAIN
15. GET WILD
16. WILD HEAVEN
17. CRAZY FOR YOU III
18. ELECTRIC PROPHET
ベストアルバム
TETSUYA KOMURO PRESENTS TMN BLACK
《収録内容》1. SELF CONTROL
2. 一途な恋
3. WILD HEAVEN
4. KISS YOU
5. LOVE TRAIN
6. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
7. RHYTHM RED BEAT BLACK
8. 金曜日のライオン
9. 1974
10. TIME TO COUNT DOWN
11. COME ON EVERYBODY
12. DIVE INTO YOUR BODY
13. GET WILD
14. NIGHTS OF THE KNIFE
ベストアルバム
TAKASHI UTSUNOMIYA PRESENTS TMN RED
《収録内容》1. GIVE YOU A BEAT
2. KISS YOU(more rock)
3. COME ON LET’S DANCE(the saint mix)
4. DON’T LET ME CRY
5. PASSENGER
6. RHYTHM RED BEAT BLACK(version 2.0)
7. SPANISH BLUE
8. GET WILD ’89
9. OPEN YOUR HEART
10. あの夏を忘れない
11. WE LOVE THE EARTH
12. LOVE TRAIN
ベストアルバム
NAOTO KINE PRESENTS TMN BLUE
《収録内容》1. TIME PASSED ME BY
2. GIRL
3. TIME
4. CONFESSION~告白~
5. HERE, THERE & EVERYWHERE
6. SAD EMOTION
7. GIRL FRIEND
8. 1/2の助走
9. TELEPHONE LINE
10. FIGHTING
11. THIS NIGHT
12. FOOL ON THE PLANET
13. WINTER COMES AROUND
14. ANOTHER MEETING
ビデオ
DECADE
《収録内容》1. Nights of the Knife〈TV-CF 15"〉
2. 金曜日のライオン〈VIDEO-CLIP〉
3. 1974〈VIDEO-CLIP~PARCO LIVE ’84.12月〉
4. ACCIDENT〈VIDEO-CLIP~日本青年館LIVE ’85.9月~VIDEO-CLIP2~中野サンプラザLIVE ’86.6月〉
5. TWINKLE NIGHT〈VIDEO-SPOT〉
6. Interview〈with 平山雄一 ’87.10月〉
7. All-Right All-Night〈VIDEO-CLIP〉
8. Come on Let’s Dance〈VIDEO-CLIP〉
9. Bang the Gong〈Self Control Opening Film〉
10. Self Control〈Fanks CRY-MAX at 武道館 ’87.6月〉
11. Get Wild〈TV-CF 15"〉
12. Get Wild〈VIDEO-CLIP〉
13. KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX〈Opening Film ’88.8月〉
14. KISS YOU〈KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX ’88.8月〉〈CAROL TOUR FINAL CAMP FANKS!!’89 ’89.8月〉〈RHYTHM RED TMN TOUR ’91.1月〉
15. COME ON EVERYBODY〈from the TV"eZ" ’88.12月〉
16. JUST ONE VICTORY〈VIDEO-CLIP〉
17. DIVE INTO YOUR BODY〈VIDEO-CLIP〉
18. TIME TO COUNT DOWN〈TV-CF 15"〉
19. 69/99〈VIDEO"WORLD’S END II"Opening Film〉
20. TIME TO COUNT DOWN〈from the TV"eZ" ’90.11月〉
21. Crazy For You〈from EXPO 3-D ’91.9月〉
22. Think Of Earth〈from EXPO 3-D ’91.9月〉
23. Love Train〈VIDEO-CLIP〉
24. TMN COLOSSEUM I・II〈TV-CF 30"〉
25. 一途な恋〈TV-CF 15"〉
26. Nights of the Knife〈TV-CF 15"〉
27. 1974〈フレッシュサウンドコンテスト’83〉
ビデオ
TMN final live LAST GROOVE 5.18
《収録内容》1. 金曜日のライオン
2. BE TOGETHER
3. DON’T LET ME CRY
4. NERVOUS
5. ACCIDENT
6. WE LOVE THE EARTH
7. LOVE TRAIN
8. 1/2の助走(Just for you and me now)
9. CONFESSION~告白~
10. 永遠のパスポート
11. RAINBOW RAINBOW(陽気なアインシュタインと80年代モナリザの一夜)
12. COME ON LET’S DANCE
13. ALL-RIGHT ALL-NIGHT(No Tears No Blood)
14. KEYBOARD-SOLO
15. GET WILD ’89
16. DRAGON THE FESTIVAL
17. SELF CONTROL(方舟に曳かれて)
18. ELECTRIC PROPNET(電気じかけの予言者)
19. SEVEN DAYS WAR
ビデオ
TMN final live LAST GROOVE 5.19
《収録内容》1. 1974(16光年の訪問者)
2. STILL LOVE HER(失われた風景)
3. WILD HEAVEN
4. RHYTHM RED BEAT BLACK
5. KISS YOU
6. COME ON EVERYBODY
7. CAROL [a day in the girl’s life/CAROL(Carol’s Theme I)/in the forest(君の声が聞こえる)/CAROL(Carol’s Theme II)/just one victory(たった一つの勝利)]
8. HUMAN SYSTEM
9. KEYBOARD-SOLO
10. TIME TO COUNT DOWN
11. 69/99
12. YOU CAN DANCE
13. DIVE INTO YOUR BODY
14. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
15. NIGHTS OF THE KNIFE
16. TIMEMACHINE
ライヴアルバム
TMN final live LAST GROOVE 5.18
《収録内容》1. 金曜日のライオン
2. NERVOUS
3. ACCIDENT
4. LOVE TRAIN
5. 1/2の助走
6. CONFESSION
7. COME ON LET’S DANCE
8. GET WILD ’89
9. SELF CONTROL
10. ELECTRIC PROPHET
ライヴアルバム
TMN final live LAST GROOVE 5.19
《収録内容》1. 1974
2. WILD HEAVEN
3. RHYTHM RED BEAT BLACK
4. HUMAN SYSTEM
5. TIME TO COUNT DOWN
6. 69/99
7. DIVE INTO YOUR BODY
8. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
9. NIGHTS OF THE KNIFE
10. TIMEMACHINE
Chronology
活動年表[1990-1994]
1990.7.7 | シングル THE POINT OF LOVERS’ NIGHT |
---|---|
1990.8.28 | トピック TMNリニューアル宣言記者会見 |
1988.9.28 | シングル TIME TO COUNT DOWN |
1990.10.25 | アルバム RHYTHM RED |
1990.12.10 〜 1991.3.13 | ライヴ・コンサート maxell PRESENTS RHYTHM RED TMN TOUR(コンサートツアー/16会場全40公演) |
1990.12.21 | シングル RHYTHM RED BEAT BLACK |
1990.12.21 | ビデオ RHYTHM RED BEAT BLACK |
1991.2.1 | シングル RHYTHM RED BEAT BLACK(Version 2.0) |
1991.3.29 | ビデオ WORLD’S END I Rhythm Red Live |
1991.5.22 | シングル Love Train / We love the EARTH |
1991.5.22 | ビデオ WORLD’S END II Rhythm Red Live |
1991.9.1 ~ 1992.2.15 | ライヴ・コンサート LAWSON Presents Tour TMN EXPO(コンサートツアー/35会場全57公演) |
1991.9.5 | アルバム EXPO |
1991.11.15 | シングル WILD HEAVEN |
1991.11.30 ~12.1 | ライヴ・コンサート NECパソコンフェア’91 スーパーライブ TMN WILD HEAVEN(単発コンサート/幕張メッセ イベントホール) |
1992.1.14 ~2.27 | ライヴ・コンサート LAWSON presents TMN special event パーティーパビリオン(ライヴイベント/7会場全7公演) |
1992.3.12 ~4.18 | ライヴ・コンサート LAWSON Presents TOUR TMN EXPO FINAL CRAZY 4 YOU(コンサートツアー/5会場全9公演) |
1992.4.25 | ライヴ・コンサート TMNフォーク/メタル・パビリオン(ライヴイベント/日清パワーステーション) |
1992.8.21 | ライヴアルバム TMN COLOSSEUM I |
1992.8.21 | ライヴアルバム TMN COLOSSEUM II |
1993.8.21 | リミックスアルバム TMN CLASSIX 1 |
1993.8.21 | リミックスアルバム TMN CLASSIX 2 |
1993.9.29 | シングル 一途な恋 |
1994.4.21 | トピック TMN終了宣言 |
1994.4.21 | シングル Nights of The Knife |
1994.5.18 ~5.19 | ライヴ・コンサート TMN 4001 DAYS GROOVE(単発コンサート/東京ドーム) |
1994.5.26 | BOXセット TMN GROOVE GEAR |
1994.6.22 | ベストアルバム TETSUYA KOMURO PRESENTS TMN BLACK |
1994.6.22 | ベストアルバム TAKASHI UTSUNOMIYA PRESENTS TMN RED |
1994.6.22 | ベストアルバム NAOTO KINE PRESENTS TMN BLUE |
1994.6.22 | ビデオ DECADE |
1994.8.1 | ビデオ TMN final live LAST GROOVE 5.18 |
1994.8.1 | ビデオ TMN final live LAST GROOVE 5.19 |
1994.8.11 | ライヴアルバム TMN final live LAST GROOVE 5.18 |
1994.8.11 | ライヴアルバム TMN final live LAST GROOVE 5.19 |
Interview
キーパーソンインタビュー
若林豪 (『劇場版シティーハンター』最新作プロデューサー)
TM NETWORKの活動に深く関わってきた人物たちに話を聞くキーパーソンインタビュー。今回登場するのは、2019年公開の『劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>』、そして2023年公開の『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』でプロデューサーを務めた若林豪。「Get Wild」を少年時代に聴いていたという彼が、40周年を前にしたTMと共に目指した作品づくりとは? 最新ナンバー「Whatever Comes」や「Angie」の制作秘話と合わせてじっくりと語ってもらった。
「いろんなアニメを観てきたなかでも、『シティーハンター』とTM NETWORKの組み合わせは特別なところがあると感じます」
── まずは若林さんの個人的なヒストリーとしての、TM NETWORKとの出会いについて聞かせてください。
若林 1987年、僕が小学2年生で『シティーハンター』のテレビアニメ放送が始まったときでした。そのエンディングでかかった「Get Wild」がTM NETWORKとのファーストコンタクトです。子供心に、“これまで自分が観ていたアニメの終わりに流れる歌とは全然違うものだ”と感じました。『シティーハンター』は、当時『週刊少年ジャンプ』に連載されていた作品ですけれども、結構大人向けの内容でしたよね。なので、意味がわからないまま観ているところも当然あるし、“これは自分の歳だとまだ観ちゃいけないんだろうな”というような気持ちもありながら観ているわけです。でも、エンディングの「Get Wild」の良さに関しては、明確に理解できていたというか。歌詞の意味までは分からないけど、これはすごくいい歌で、カッコいいものだって、自分の実感として強く感じられたことだったんですよ。それが僕にとっての原体験ですね。
── 次にTMと再会するのはどのタイミングになったんでしょうか。
若林 1988年~1989年放送の『シティーハンター2』ですね。このときも「STILL LOVE HER(失われた風景)」でTM NETWORKが後期のエンディングテーマを担当していて。「Get Wild」とは全然違うけれど曲調もすごくカッコいいし、実写の新宿の映像と合わせて曲がかかる形になっている、あの構成に非常にグッときた感じがありました。新宿という街に『シティーハンター』の登場人物たちが生きているんだ、っていうのを表現しようとしているのが伝わってきたんです。
── ご自身の年齢もちょっと上がって、物語の内容との関わりも含め、よりトータルにTMの音楽を気に入ったという感覚があったんでしょうか。
若林 そうですね。TM NETWORKというアーティストについての理解は、その当時はまだ薄いんですけど。それでも今から振り返って思うことを言えば……アニメというのは、まさに絵空事の極致なんですよね。そのなかでどうやってリアリティを感じさせるか、ということにいろいろと試行錯誤するんですが、そのやり方として「Get Wild」も「STILL LOVE HER」もすごく成功しているエンディングだと思うんです。アニメの終わりの歌というより、アニメが終わって現実の始まりを告げる歌、というような。本編の後にエンディングまできっちり観てから、“また来週もエンディングを観たい”と思えるようなものになっていたという印象がすごく残っていて。その後もいろんなアニメを観てきたなかでも、『シティーハンター』とTM NETWORKの組み合わせは特別なところがあると感じます。
『劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>』キービジュアル
©北条司/コアミックス・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会
── どうして特別な組み合わせなのか、ということについては、作り手の立場になった今、どんなふうにお考えですか。
若林 『劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>』(2019年)と『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』(2023年)、その2作品ともにTMの音楽が劇中の重要なところで貢献していて、前者では「STILL LOVE HER」がかかるところだし、後者で言うとクライマックスでかかる「Angie」なんですけれども、どちらも当初の目論見とは違う音楽のかかり方だったんです。でも、そういった予定からずれたところでTM NETWORKの音楽が見事にはまって新しい意味が生まれてくるということを経験したんですよ。その感覚が、子供の頃に「Get Wild」や「STILL LOVE HER」のエンディングを観て感じたことに近いのかもしれないなと思いますね。
── 少年時代に『シティーハンター』に出会ってから、その体験の衝撃が以後になって刺激されるようなことはありませんでしたか。
若林 2000年代の後半、現在のプロデューサーになる前はフランスに駐在して営業の仕事をやっていたんですけど、フランスで『シティーハンター』がすごい人気だったのを目の当たりにしたんですよ。 “やっぱりいい作品だよね。フランスの人だって、そりゃ好きになるよ”と改めて実感して。その再会は大きかったかもしれないですね。
「『Angie』のデモを映像と合わせてみたときに、“すごいハマり方だ”と一同が衝撃を受けたんです」
── そして、若林さんがプロデュースをご担当した作品についてお伺いします。『劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>』は過去のTM楽曲をフィーチャーする形でしたが、『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』では新曲が使用されました。
若林 『新宿プライベート・アイズ』はTMが活動していない時期の作品だったので叶わなかったんですが、『天使の涙』ではひょっとしたら新しい曲でご一緒できるんじゃないかって密かに期待していたんです。そんなとき「小室さんに新曲を作っていただけるかもしれない」という一報をいただいて、“来た!”という感じでした。
『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』キービジュアル
©北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
── 楽曲の発注はどのようにして行われたんですか。
若林 小室さんとの打ち合わせの前に、もう1人のプロデューサーであるサンライズの小形尚弘さんと話し合いをしました。そのうえで、TM NETWORKには作品の冒頭を飾るオープニングテーマを作っていただいて、エンディングテーマには「Get Wild」を使わせていただく形をご提案したい。その考えを持って、打ち合わせに臨むことになりました。
── 昨年6月に六本木で行われたプレス発表イベントに登壇された際、その会議がすごい大人数で緊張したと話されていましたね。
若林 そうなんですよ。ただ僕は、かつて小室さんが『シティーハンター』のタイアップ(「Get Wild」)が決まったと知らされた時、「オープニングじゃないんだ」とガッカリされたという話を聞いていたので、会議の最初に「小室さん、35年間お待たせしました。オープニングテーマをお願いします!」と言ったら皆さんが笑ってくれて。その緊張感が少しほぐれてから会議を始めることができたんです。そして、オープニングの曲は「Get Wild」と対になるような、明るい曲が欲しいですというお話をしました。
── オープニングテーマとなった「Whatever Comes」はどんな印象でしたか。
若林 デモを最初に聞かせていただいた時にはもう、まさに小室さんらしさがすごく感じられる曲だなというのがまず第1印象としてありました。それに加えて、こだま兼嗣総監督より今回の映画では前半と後半とで雰囲気を大きく変えたいというのが構成の狙いとしてありましたので、その前半のトーンを決める楽曲としてもふさわしいと思いました。
── 小室さんとの打ち合わせの前に、「劇中歌をお願いするのは難しいだろう」と考えていたそうですが、結果的に『天使の涙』の劇中ではTMの最新曲に加え、本作のための書きおろしの楽曲も使用されることになりました。こちらはどういった経緯だったのでしょうか。
若林 オープニングテーマのお願いをして、作品のストーリーについてもお話ししたあたりで、逆に小室さんサイドから「劇中にかかる音楽はどうですか?」という話が出たんです。これは再び“来た!”という感じで……というのも、「劇中歌をお願いするのは難しいだろう」と考えている時点で、裏を返せば劇中の曲が欲しいということなんですよね。だから、実は欲しいと思っていたんですというお話をすることにしました。完成した映画を見ていただくと、TM楽曲が多数使われることが最初から決まっていたような見え方ですが、実はその打ち合わせの時に生まれた流れで。非常にダイナミックというか、その場の話のなかで映画の重要なことが決まっていく打ち合わせになりました。そこから、私たちにとって最難関のパートに合わせて新曲を書いていただくところまで話が発展していくんです。これが最終決戦の場面で流れる「Angie」でした。
── なぜそのパートが最難関だったのでしょうか。
若林 獠は戦いを挑まれているけれど、獠からするとそれは望んでいない戦いなんです。その場面に、いかにも「戦いです」という感じの楽曲を付けてもうまくハマらないんです。「Angie」は、小室さんが作ってくださったデモを聴いた時には“こんなにシンプルで静かな曲なんだ!?”という印象で、少し意外に感じました。でも、それを映像と合わせてみたときに、“すごいハマり方だ”と一同が衝撃を受けたんですよ。予想外の曲をいただいて、しかもそれがものすごくハマっている。まさに、TM NETWORKの音楽と『シティーハンター』が組み合わさった時、予想と違うような、新しい意味が生まれてくる瞬間だなと思ったんです。
「進化するTM NETWORKとまた一緒にお仕事ができたらなと思います」
── 最初の打ち合わせがダイナミックだったというお話がありましたが、お話を聞いていると、作品のプロジェクト全体がすごくダイナミックに進んでいっているように感じます。
若林 そうですね。基本的には計画を立てて進めるのですが、TM NETWORKとのコラボレーションではおっしゃる通り、ダイナミックで流動的ななかでいろんなことが決まり、いろんなものができていく面白さを感じていました。
── こうしてTM関係者の方々にお話を聞いているなかで、“小室さんの仕事に関わっていると、作業は渦を巻くように進んでいって、でもどんなものが出来上がるかよくわからないからドキドキするんだけれど、出来上がりがすごいから結果オーライということになる”というようなことを、皆さんが異口同音におっしゃいます。若林さんにもそういった実感はありますか。
若林 (笑)、そうですね。その“渦”を一番最近になって体験した人間の一人かもしれません。
── そんな“渦”に40年も巻き込まれ続けているTMのメンバーはすごい、という話にもなるのですが、宇都宮さんと木根さんについてはどんなふうに思われますか。
若林 簡単には想像できないですが……小室さんは僕たちの想像を超えたものを出してくるから、そこで自分たちも試されることがあるんです。その繰り返しの“渦”のなかでずっと一緒にやっている宇都宮さん、木根さんもすごい人なんだと思いますね。
── 『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』は、7月31日にBlu-ray&DVDになって発売されるそうですが、ご覧になる方にプロデューサーとして何かメッセージはありますか。
若林 完全生産限定版のボックスが発売されるのですが、そこに収録されるブックレットに、メインスタッフやキャストの対談記事がいくつか入ります。原作者の北条司先生、総監督のこだま兼嗣さん達メインのクリエイターの対談の他、冴羽獠役の神谷明さんが、槇村香役の伊倉一恵さん、アンジー役の沢城みゆきさんとそれぞれ対談して作品を語ってくださっています。そして小室哲哉さんのソロインタビューも入ります。『天使の涙』の物語に対しては、主要参加者がそれぞれ自分なりの解釈でアウトプットをしているので、その解釈には人によってばらつきがある部分もあるのですが、今回は敢えてそのばらつきもある程度見える形でインタビューを収録したいなと思っているんです。それを読んでから本編を再度観たら、いろんな意図や思いが見えてくると思いますので、本作を好きな方にはぜひそんなふうにも楽しんでもらえたらなと思います。
── 最後に、今後のTM NETWORKに期待することや希望がありましたら聞かせてください。
若林 もっと進化していってほしい、という気持ちがすごくありますね。もしまた次にご一緒する機会があって、自分の想像を超えるような渦に巻き込まれたら大変だとは思うけれど、そこでは想像を超えるようなものを得られたり、成長にもつながるかもっていう期待感があるんです。だから、TM NETWORKにはずっと進化を続けていってほしいし、進化するTM NETWORKとまた一緒にお仕事ができたらなと思います。
若林豪(わかばやし・ごう)
1979年生まれ。東映アニメーションでの制作経験を経て、2016年よりアニプレックスにてアニメーション作品のプロデューサーを務める。担当・代表作として『劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>』(2019年公開)、『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』(2023年公開)がある。
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インタビューアーカイヴ[『PATi▶PATi』1994年6月号]
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・記事、広告の内容は1994年の当時のものです。
音楽雑誌『PATi▶PATi』1994年6月号を転載|ソニー・マガジンズ(当時)=ソニー・ミュージックソリューションズ(現在)許諾|再録記事は発売当時に適したもので現在に該当しない内容も含まれています。ご了承願います。
『PATi▶PATi』1994年6月号表紙/photo by H・CANNO @cannosan
〜H.CANNO 「SORAe 空絵」写真展〜
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