2024年4月号|特集 大滝詠一 EACH TIME
⑤「木の葉のスケッチ」|Disc1-5|『EACH TIME 40th Anniversary Edition』全曲解説
レビュー
2024.4.5
文/柴崎祐二
「木の葉のスケッチ」
非常にジェントルでエロチックさすら漂う映画的な名曲
冒頭のアコーディオンの響きが、ミュゼットやタンゴの薫りを運ぶ中、ゆったりとした変則リズム・パターンが、かつての恋人を駅のホームで発見して心揺らぐ男の様子を巧みにトレースしていく。一歩踏み出して声をかけてみたいような、やっぱり怖いような。胸の高鳴りと諦念が織り混ざった、ビター・スウィートな冬のある日。非常にジェントルでありながら、どこかエロチックさすら漂う大人の世界だ。ベテラン・ジャズ・ミュージシャン北村英治が奏でるクラリネットの音色にも、温かでありながら、ほのかに哀切が滲んでいる。これもまた、実に映画的な名曲である。
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