2024年4月号|特集 大滝詠一 EACH TIME

①「SHUFFLE OFF」|Disc1-1|『EACH TIME 40th Anniversary Edition』全曲解説

レビュー

2024.4.1

文/柴崎祐二


「SHUFFLE OFF」


40年を経て初めて音源化された痛快なオープニング



 今回の40周年記念盤で初お目見えしたインスト楽曲。アルバムリリース前の’84年1月、渋谷陽一がパーソナリティを務めるNHK-FMの『FMホットライン』にて一度だけでオンエアされ、コアなナイアガラーの間で語り草となっていた1曲だ。レコーディングされたのは、’83年1月21日。『レコード・コレクターズ』誌’04年4月号に掲載された大滝へのインタビュー(訊き手:湯浅学)によると、「ところがメロディができなかった。あの後なんどかメロディをつけてみようと思ったけど、未だに出来ない。オケは完璧に出来上がってんですよ」とのことで、その言葉通り、主旋律の存在しないインスト曲になっている。しかし、それゆえに醸されるアトモスフェリックな感触が、『EACH TIME』という湿り気を帯びた作品の幕開けにピッタリとハマっているように感じる。

 特徴的なリズム・パターンと十八番の二拍三連を行き来する構成からして、フィレス・サウンド、およびレッキング・クルーへのオマージュを感じさせる。キーになっているのが、歪んだトーンのエレキ・ギターのストローク。少しパンク風とすらいえるドライヴィンな演奏が、フィル・スペクターがプロデュースしたラモーンズのアルバム『エンド・オブ・ザ・センチュリー』(’80年)を想起させたりも。痛快なオープニングだ。




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