2024年3月号|特集 作詞家の世界

⑰売野雅勇|河合奈保子『STARDUST GARDEN -千・年・庭・園-』|作詞家名鑑・歌詞を味わう名盤

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レビュー

2024.3.26


河合奈保子
『STARDUST GARDEN -千・年・庭・園-』

1985年3月5日発売

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1. 暁のスカイパイロット
2. オリエンタル・アイズ
3. 海流の島
4. 八月の水鏡
5. 夏のキャンドル
6. チャイナタウン・ラプソディ
7. スターダスト・ガーデン
8. 南回帰線
9. 永遠のシネマハウス
10. 千年庭園



魅惑的なフレーズの一つひとつが大人の女性としての側面を引き出していく


 1曲目「暁のスカイパイロット」が、イントロからして前年に大ヒットしていたドン・ヘンリー「ボーイズ・オブ・サマー」に酷似していて、もちろん編曲の影響もあるのだろうが、さすがは作曲した筒美京平、洋楽の流行に敏感でい続けていたんだ、と今さらながらに気付かされる。ともあれ、この曲を含めた10曲すべてを筒美が、そして作詞を売野雅勇が担当したのが本作だ。

 売野といえばチェッカーズの一連のヒット曲や中森明菜「少女A」、郷ひろみ「2億4千万の瞳~エキゾチック・ジャパン~」、ラッツ&スター「め組のひと」(変名の麻生麗二名義)などの作詞で有名。いずれもヤンキー臭あるちょっと突っ張ったムード、ゴージャスで艶かしい風合いを表現するのがとても達者という印象なので、河合奈保子というデビュー当時から明るい笑顔、ハキハキとした受け答えが魅力のアイドルを手がけるというのは、制作サイドがさらに大きなイメージ・チェンジを目指していたのだろうことは推察できる。そして実際、売野が全作詞を、筒美が全作曲をした本作は河合の大人の女性としての側面を引き出すことに成功した意欲作だ。

文/岡村詩野




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