2024年3月号|特集 作詞家の世界

【Part3】小西康陽が語る「私が好きな作詞家たち」

会員限定

インタビュー

2024.3.18

インタビュー・文/馬飼野元宏



【Part2】からの続き)


サビに英語を使うような歌詞は、絶対にやりたくないと思った


――小西康陽さんが、名作詞家たちの作品を語る、その第3回は「作詞家」枠です。最初は吉田旺さん。吉田さんの代表作といえば、何といってもちあきなおみさんの「喝采」(’72年)になりますが、そのB面である「最后の電話」(’72年)も同時に挙げていただきました。

小西康陽 ジミー・ウェッブが書いた「恋はフェニックス」という曲がありますよね。ジョニー・リヴァースが’65年に歌って、’67年のグレン・キャンベルで大ヒットした曲。いわゆるストーリーがある詞で、ポップスに文学要素も入れた歌。それ以前にもそういったものはあったかもしれないですが、日本の歌でそれに当たる曲が、自分にとっては「喝采」だったんです。それで調べてみたら、物語になっている歌謡曲の詞では、阿久悠さんがペドロ&カプリシャスに書いた「ジョニィへの伝言」(’73年)よりも「喝采」の方が早かったんです。それで、この曲に関していえば、吉田旺さんと作曲の中村泰士さんは、何となくできちゃったのではなく、絶対に最初から狙って作っていますよね。


ちあきなおみ
「喝采 / 最后の電話」

1972年9月10日発売



――「喝采」はサビの部分で回想に入るところも含めて、作詞家と作曲家が構成を練りに練って作った歌だとわかります。

小西康陽 その点もすごいし、もちろん「喝采」はいい曲だけど、「最后の電話」を聴いた時に、吉田さんと中村さんはバート・バカラック&ハル・デイヴィッドのようだと思ったんです。作詞家と作曲家のコンビとして、もっとこの曲は評価されるべきだと思った。この2人が、あの時代のちあきなおみさんに書いた曲はどれもいいんです。でも「最后の電話」は、もしかしたら僕にも書けるかもしれないけど、「喝采」は書けない。日本にもいろいろな作家コンビがいますが、このお2人のコンビも、もっと評価してほしいと思うな。

――続いては松本隆さん。はっぴいえんどの『風街ろまん』に収録されている「空色のくれよん」(’71年)と、大滝詠一さんのソロ作品「空飛ぶくじら」(’72年)。いずれも松本さんがはっぴいえんどのドラマーだった時代に書いた作品です。

小西康陽 「空色のくれよん」の「ぼくは きっと風邪をひいてるんです」、こういう歌詞って、それ以前にはなかったものだった気がする。松本さんの詞は、その後売れっ子になってから書かれたものより、はっぴいえんど時代の作品の方が好きです。ただ松本さんは元ドラマーだったから、詞に曲が載せやすく、曲先のメロディーにもピッタリの言葉を載せてくる、と筒美京平さんはおっしゃっていました。正直、松本さんの詞はすごく好きだったけれど、やっぱり自分なりに考えて、この人の真似をしてもしょうがない、というようなことを思いました。


はっぴいえんど
『風街ろまん』
※「空色のくれよん」収録

1971年11月20日発売







小西康陽(こにし・やすはる)
●1959年、北海道札幌生まれ。作編曲家。
1985年にピチカート・ファイヴのメンバーとしてデビュー。
解散後も、数多くのアーティストの作詞/作曲/編曲/プロデュースを手掛ける。


3.22 fri
『コーヒーハウス・モナレコーズ』
LIVE : 豊田道倫・金田康平・小西康陽
DJ : 福富幸宏
at 下北沢 mona records
開場 / 開演 19:00
https://www.mona-records.com/livespace/18307/

4.21 sun
『ノラオンナ58ミーティング デビュー20周年「風の街へ流れ星を見に行こう」』
LIVE : ノラオンナ(声とウクレレ)
MUSICIANS : 柿澤龍介(ドラムス)・橋本安以(ヴァイオリン)・外園健彦(ギター)・藤原マヒト(ピアノ)・古川麦(声とホルン)・宮坂洋生(コントラバス)
GUEST : 小西康陽(声とギター)
DJ : juri
at 吉祥寺 スターパインズカフェ
開場 18:00 / 開演 19:00
https://mandala.gr.jp/SPC/schedule/202040421/





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