2024年3月号|特集 作詞家の世界

【Part2】小西康陽が語る「私が好きな作詞家たち」

会員限定

インタビュー

2024.3.8

インタビュー・文/馬飼野元宏



【Part1】からの続き)


見出し


――前回、お話いただいた「詩人」という枠には、まだまだ挙げていただいた方がいます。短歌の歌人でもある俵万智さんが作詞した「銀ちゃんのラブレター」(’99年)。NHKの「おかあさんといっしょ」で作られた曲で、茂森あゆみさんと速水けんたろうさんが歌っています。この曲はピチカート・ファイヴでもカヴァーしていましたね。

小西康陽 ちょうどこの曲を聴いた時は、僕にも幼い子供がいましたので、それでNHK教育テレビを見る時間が多かったんです。今は大きくなっていますけど(笑)。これはダイヤモンドの原石みたいな、詩魂そのものみたいな歌。曲を書いた福田和禾子さんも素晴らしい作曲家ですね。


ピチカート・ファイヴ
「メッセージ・ソング」
※「銀ちゃんのラブレター」収録

1996年12月21日発売



――続く寺山修司さんも、元は俵万智さんと同じ歌人で、その後詩人、劇作家として、60年代終盤から70年代にかけ、当時の若者カルチャーに絶大な影響を与えました。寺山さんの作詞では浅川マキさんの「かもめ」(’69年)、カルメン・マキさんの「時には母のない子のように」(’69年)を選ばれています。

小西康陽 「かもめ」は、僕が夏木マリさんのアルバム『パロール』(’02年)をプロデュースした際に、カヴァーしてもらいました。僕は浅川マキさんの歌が大好きで、何度も聴いていたんですが、夏木マリさんに歌ってもらうに際し、じつは字余りの部分を勝手に直しちゃったんです。


浅川マキ
『浅川マキの世界』
※「かもめ」収録

1970年9月5日発売



――かなり原曲よりテンポも上がっていました。

小西康陽 でも、パッと聴いて原曲のイメージは変えていないつもりですが、非常に歌いやすい譜割りに書き換えた箇所がいくつかあるんです。夏木マリさんとは何枚か作りましたけど、それらはどれもなにかしら浅川マキさんのイメージを念頭に置いて作ったもので、その辺りはマリさんもわかってらっしゃると思います。夏木マリさんって面白い人で、僕は、高田渡さんと一度だけ電話で喋ったことがあるんですが、それはマリさんが繋いでくださったんです。映画監督の小林政広さん。あの方、元々林ヒロシの名前でフォーク・シンガーだったじゃないですか。高田渡さんの周辺のお1人という感じで、マリさんも小林さん経由で渡さんと繋がったそうなんですよ。渡さんの「鎮静剤」という曲も、マリさんでカヴァーしています(アルバム『13のシャンソン』 ’98年収録)。

――「かもめ」はストーリーになっている点も素晴らしいです。一方で同時期に書かれた「時には母のない子のように」ですが、歌うカルメン・マキさんは元々寺山さんが主宰する劇団・天井桟敷にいらした方。

小西康陽 一度、NHKのラジオ番組で、市川実和子さんでカヴァーしたことがあります。とても気に入ったアレンジを書くことができたので、そのカヴァーをいつか世に出したいと思っているんです。この曲はCBS・ソニーができた頃の最初のヒットですよね。





小西康陽(こにし・やすはる)
●1959年、北海道札幌生まれ。作編曲家。
1985年にピチカート・ファイヴのメンバーとしてデビュー。
解散後も、数多くのアーティストの作詞/作曲/編曲/プロデュースを手掛ける。


3.22 fri
『コーヒーハウス・モナレコーズ』
LIVE : 豊田道倫・金田康平・小西康陽
DJ : 福富幸宏
at 下北沢 mona records
開場 / 開演 19:00
https://www.mona-records.com/livespace/18307/

4.21 sun
『ノラオンナ58ミーティング デビュー20周年「風の街へ流れ星を見に行こう」』
LIVE : ノラオンナ(声とウクレレ)
MUSICIANS : 柿澤龍介(ドラムス)・橋本安以(ヴァイオリン)・外園健彦(ギター)・藤原マヒト(ピアノ)・古川麦(声とホルン)・宮坂洋生(コントラバス)
GUEST : 小西康陽(声とギター)
DJ : juri
at 吉祥寺 スターパインズカフェ
開場 18:00 / 開演 19:00
https://mandala.gr.jp/SPC/schedule/202040421/





↑↑↑↑『山上路夫ソングブック-翼をください-』スペシャルサイトはこちら↑↑↑↑