連載|伊波真人のシティポップ短歌

今月のお題「笠井紀美子 / TOKYO SPECIAL」

2024.2.16

今月のお題

笠井紀美子/ TOKYO SPECIAL1977年


1960年代半ばからジャズ・シーンで頭角を現し、マル・ウォルドロンやギル・エヴァンスなど錚々たるジャズメンたちと共演することでグローバルな活動をしていた笠井紀美子だが、「日本語でジャズを届けたい」という想いで、日本人の作家の楽曲を集めて制作したという珍しい作品が本作である。山下達郎の「バイブレイション(LOVE CELEBRATION)」を筆頭に、ジャジーでソウルフル、そしてスタイリッシュなナンバーをムードたっぷりに歌い上げる。サウンドのキーマンであるコルゲンこと鈴木宏昌の采配が見事で、市原康、岡沢章、松木恒秀、鈴木勲といったジャズやクロスオーヴァーの腕利きミュージシャンの演奏も聴きどころだ。

恋愛はだれかと出会い遠ざかる 惑星軌道を巡るかのよう恋愛はだれかと出会い遠ざかる 惑星軌道を巡るかのよう



伊波真人(いなみ・まさと)

歌人。1984年、群馬県高崎市生まれ。早稲田大学在学中に短歌の創作をはじめる。2013年、「冬の星図」により角川短歌賞受賞。雑誌、新聞を中心に短歌、エッセイ、コラムなどを寄稿。ポップスの作詞家としても活動中。ラジオ、トークイベントへの出演なども行う。音楽への親しみが深く、特にシティポップ、AORの愛好家として知られる。著書に、歌集『ナイトフライト』などがある。