2024年2月号|特集 筒美京平
【Part2】萩田光雄×半田健人|スペシャル対談
対談
2024.2.15
進行・文/真鍋新一 取材協力/馬飼野元宏 写真/島田香
僕としてはヒットの宿命を背負ってしまった京平先生の曲よりも自由に息抜きされている曲のほうが好きですね(萩田光雄)
曲を聴きながら「あぁ、これが本来の京平先生のバイオリズムなのかな」と思う瞬間があるんです(半田健人)
(【Part1】からの続き)
── 南沙織さんの「この街にひとり」を経て筒美さんの目にかなった萩田さんは、太田裕美さんのデビュー・シングル「雨だれ」のアレンジャーに起用されます
半田健人 太田さんの場合、萩田先生がデビュー曲のアレンジャーに起用された直接的な理由ってご存知ですか? もちろん京平先生の意向によるところが大きいと思うのですが……。
萩田光雄 いやぁ、それは考えたこともなかったです。きっと(CBS・ソニー)ディレクターの白川隆三さんの判断もあったと思います。
太田裕美
1stシングル
「まごころ」
作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:萩田光雄
1974年11月1日発売
── 白川さんは太田さんのデビューにあたって、小坂明子さんと高木麻早さんのようなイメージを持っていたそうです。おふたりともヤマハのポプコン出身で萩田さんがアレンジをされていましたから、コンセプトにぴったりはまると。
萩田光雄 なるほど。高木麻早さんはデビュー曲、僕のアレンジャーとしてもデビュー曲(「ひとりぼっちの部屋」’73年)を歌っているし、小坂明子さんのほうも「あなた」のアレンジは宮川泰先生だけど、アルバム(『あなた/小林明子の世界』’74年)ではけっこう僕がアレンジをさせてもらいました。
半田健人 太田さんの「雨だれ」のアレンジって、本当にいわゆる”王道”のアレンジですよね。60年代から続いてきた歌謡曲のパターンというか。
萩田光雄 そうですね。サビに来るときにブラスが入って厚みを出して盛り上げるようなやり方は、たしかにあの当時の主流のアレンジなんだろうと思います。そこに彼女のお嬢さんらしさとクラシカルなピアノのテイストをドンと載せて、 どうだと(笑)。
アレンジャー萩田光雄が自ら選ぶ
『筒美京平(作曲)× 萩田光雄(編曲)の10曲』
・南沙織「この街にひとり」(’74)・太田裕美「雨だれ」(’74)
・太田裕美「木綿のハンカチーフ」(’75)
・小柳ルミ子「来夢来人(ライムライト)」(’80)
・森光子「カーテン・コール」(’95)
・岩崎宏美「二重唱」(’75)
・桑名正博「哀愁トゥナイト」(’77)
・ペドロ&カプリシャス「カリブの夢」(’78)
・太田裕美「海が泣いている」(’78)
・尾関美穂「メコンの憂鬱」(’06)
[発売順]
── 今回、対談事前に、萩田さんに選んでいただいた筒美京平(作曲)×萩田光雄(編曲)10曲のうち、太田裕美さんの楽曲が3曲も選ばれました。「雨だれ」(’74年)、「木綿のハンカチーフ」(’75年)、 「海が泣いている」(’78年)。
萩田光雄 どうしても彼女の曲が多くなってしまいますね。僕がアレンジした京平先生の曲で、わかっている分だけで240曲あるらしいのですが、そのうちのけっこうな数が太田裕美さん作品ですから。
半田健人 ’74年の「雨だれ」のデビューからある時期まで、太田さんとはずっとお仕事を一緒にされていますよね。
萩田光雄 太田さんの場合はシングルだけではなくアルバムを丸ごとアレンジすることが多かったですよね。
太田裕美 3rdアルバム
『心が風邪をひいた日』
1975年12月5日発売
「木綿のハンカチーフ」(アルバム・ヴァージョン)
作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:萩田光雄
ほか収録
── そんななかで名曲「木綿のハンカチーフ」が生まれます。これも最初はアルバム(『心が風邪をひいた日』)のなかの1曲だったそうですね。
萩田光雄 Hagita Mitsuo
1946年生まれ。’65年慶應義塾大学工学部電気科入学、同大学クラシカルギタークラブに在籍。のちにヤマハ音楽振興会作編曲コースで林雅彦氏に師事、同社録音スタジオ勤務の後、作編曲家を目指す。’73年高木麻早「ひとりぼっちの部屋」の編曲でデビュー。’75年『FNS音楽祭』最優秀編曲賞をはじめ、’75年、’76年、2013年に『日本レコード大賞』編曲賞を受賞。現在、日本作編曲家協会(JCAA)常任理事、演奏家権利処理合同機構(MPN)理事。著書に『ヒット曲の料理人 編曲家・萩田光雄の時代』(2018年/リットーミュージック)。レーベルの垣根をこえて自ら選曲した全92曲収録のCD5枚組BOX『音の魔術師/作編曲家・萩田光雄の世界』(2021年/ソニーミュージック)も発売中。筒美京平作曲の編曲は200曲以上手がけている。
半田健人 Handa Kento
1984年生まれ。『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』のファイナリストに選ばれたことをきっかけに芸能界入り。2003年『仮面ライダー555』乾巧(イヌイタクミ)/仮面ライダーファイズ役で初主演を飾る。『タモリ倶楽部』への出演を機に、高層ビル好きであることが知られるようになる。鉄道、昭和歌謡といったジャンルへの造詣も深い。俳優のみならず、音楽のフィールドでも精力的に活動を行っている。2014 年には自身初のオリジナル・フル・アルバム『せんちめんたる』を発売。2016年にはメジャー・デビュー・シングル「十年ロマンス」、2017年にはアルバム『HOMEMADE』を発売。筒美京平作品を集めたコンピレーションCD『筒美京平マイ・コレクション 半田健人』(2021年/ビクターエンタテインメント)も発売中。
▼半田健人オフィシャルサイト
https://handa-kento.com/
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