2024年2月号|特集 筒美京平

①いしだあゆみ『ブルー・ライト・ヨコハマ』|筒美京平を知るアルバム名鑑

レビュー

2024.2.1


いしだあゆみ
『ブルー・ライト・ヨコハマ』

1969年4月25日発売

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1. ブルー・ライト・ヨコハマ
2. 恋する人形
3. 太陽は泣いている
4. ひとりにしてね
5. 大人のための子守唄
6. あふれる愛に
7. 涙の中を歩いてる
8. ふたりだけの城
9. 名前も告げず
10. 夢でいいから
11. 恋はそよ風
12. 明日より永遠に


コンポーザー/アレンジャーとしての才能を伝えたミリオン・ヒット

 熱心な音楽ファンには、ティン・パン・アレーと共同制作した粋なシティ・ポップ調の『アワー・コネクション』(’77年)も人気だが、オリコン・シングル・チャート1位を記録する大ヒットとなった「ブルー・ライト・ヨコハマ」前後の、作詞・橋本淳、作曲・筒美京平コンビがバックアップしていた頃が、歌手としてのいしだあゆみの黄金時代と言っていい。

 ’64年の歌手デビューから4年ほどのビクター時代は大きなヒットに恵まれなかったが、コロムビアに移籍し、作家陣が橋本・筒美となった最初のシングル「太陽は泣いている」(’68年6月/18位)以降、70年代前半までは人気歌手として大活躍している。本作は移籍第3弾シングルとして’68年12月に発売され、日本レコード大賞作曲賞を受賞した「ブルー・ライト・ヨコハマ」のヒットの余韻も冷めやらぬ’69年4月にリリース。150万枚以上のセールスを記録した1stアルバムだ(ビクター時代には多くのシングルを出しているにもかかわらず、アルバムとしてまとまった形になっていない)。

 本作発売直前に発売されたシングル「涙の中を歩いてる」までのコロムビア移籍以降最初4枚のシングルのA面、B面曲に4曲の未発表曲を加えた全12曲、すべて橋本・筒美コンビだが、やはりここで舌を巻くのは自らの曲を鮮やかに彩る筒美のアレンジだろう。「ブルー・ライト・ヨコハマ」のイントロのホーンと間奏になると一段と際立つストリングスによるドラマティックな展開は、港の見える丘公園の夜景……別れを伴った船の出帆の風景を連想させて実に映像的だ。特筆したいのは「涙の中を歩いてる」のB面曲「恋はそよ風」。リー・ヘイズルウッドが関わっていた時代のナンシー・シナトラやジャッキー・デシャノンを思わせる60年代ガール・ポップ調の仕上がりは筒美の真骨頂と言っていい。

「ブルー・ライト・ヨコハマ」で自身手がけた楽曲初のオリコン1位を獲得した筒美にとってコンポーザー/アレンジャーとしてその才能が伝わることになったきっかけは、頭抜けた歌唱力と表現力を持った歌手・いしだあゆみの出世作でもある本作だったのだ。

文/岡村詩野




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