2024年1月号|特集 ガールポップ’90s
【Part4】|ガールポップ’90s対談:長井英治×栗本斉
対談
2024.1.25
文/真鍋新一
(【Part3】からの続き)
ガールポップ・シーンは、90年代の7、8年の間に花開いたファンタジー
――「ガールポップ’97年終焉説」が語られましたが、その後はどう変化していったのでしょうか。
長井英治 コーネリアスの『FANTASMA』が出た直後(’97年8月)だったかな。HMVの渋谷店で働いていた時、さんピンCAMP一派が異常に売れていたのを憶えているんですよ。それから少しして、MISIAがデビュー・シングルの「つつみ込むように…」からアナログ盤(’98年1月)を出していて、あれもすごく売れた。もはや渋谷系の時代ですらなくて、クラブ文化が勢いづいてきた。
栗本斉 僕も当時、一気にヒップホップやR&Bにハマって、渋谷のHMVで膨大な量のCDを買った記憶があります。UAが「情熱」でブレイクしたのが’96年6月で、ヒップホップとか、クラブミュージック界隈の人もクリエイターになって、R&Bも歌えそうな人がガールポップのシーンにも混じってくるじゃないですか。渋谷系か、ソウル系かということになって、そうなると従来のガールポップらしさの立ち位置というか、軸足の置き方が難しくなってきたんでしょうね。この時期になると90年代初期からのガールポップのサウンドはとっくに古びたものになっていましたし。
UA
『11』
1996年10月23日発売
長井英治 偶然なんですけど、ガールポップの時代はアナログレコードからCDに切り替わった時期から盛り上がっていて、それまでレコードを買わなかった人がCDを買い始めた頃なんです。同じように今もまたアナログが流行りだして音楽の聴き方が変わったことで、客層や流行る音楽がまた変わってしまった。ガールポップを聴く人たちはレコード文化じゃないから、大半の人たちは次のシーンについていけてない。
長井英治(ながい・ひではる)
●1967年東京生まれ。1990年から2006年まで、都内大手CDショップにて勤務。その後は、音楽ライターとしてCDの監修等を手掛ける。2013年、書籍『日本の女性シンガー・ソングライター』刊行(シンコーミュージック)。現在、『ラジオ歌謡選抜』、『ファムラジオ』(FMおだわら)、『ミュージックチャージ』(InterFM)と、ラジオのレギュラー3本に出演中。その他、QVCに出演しソニーミュージックの通販BOXの販売も行っている。最新の仕事のひとつに、通販向けCD-BOX『春の歌~J-Spring~』の全曲解説などがある。
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栗本斉(くりもと・ひとし)
●音楽と旅のライター、選曲家。ウェブマガジン「otonano」エディター。1970年生まれ。レコード会社勤務時代より音楽ライターとして執筆活動を開始。退社後は2年間中南米を放浪し、帰国後はフリーランスで雑誌やウェブでの執筆、ラジオや機内放送の構成選曲などを行う。開業直後のビルボードライブで約5年間ブッキングマネージャーを務めた後、再びフリーランスで活動。2022年2月に上梓した『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』(星海社新書)が話題を呼び、各種メディアにも出演している。最新刊は2023年9月に発表した『「90年代J-POPの基本」がこの100枚でわかる!』(星海社新書)。
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対談
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