2024年1月号|特集 ガールポップ’90s

ガールポップ’90s名鑑・名盤レビュー|⑦遊佐未森『モザイク』

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レビュー

2024.1.11


遊佐未森 
『モザイク』

1991年9月21日発売

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1. シリウス
2. Will
3. 空
4. 靴跡の花
5. だいじょうぶ
6. きみのなかに
Language of Flowers
7. ⅰ プロローグ
8. ⅱ フリージア[無邪気]
9. ⅲ すみれ[田舎の幸福]
10. ⅳ つゆくさ[小夜曲]
11. ⅴ われもこう[変化]
12. ⅵ ポインセチア[祝福]


アーティスト・遊佐未森、セカンド・シーズンへの過渡期の名作

 デビュー以来、トータル・コンセプトに沿ったアルバムのリリースを重ね、リスナーの多くは彼女の代名詞でもある童話、ファンタジーの世界が変わらず続いていくものと思っていただろう。しかしその予想は覆される。5枚目のアルバムとなる今作は、ファーストシーズンの終焉と新たな始まり両方を感じさせるいわば過渡期、プロデュースとして初めて遊佐未森の名前が掲載された作品。

 まず先行シングル、彼女最大のヒットとなった映画『アルスラーン戦記』主題歌「靴跡の花~アルスラーン戦記より」から変化の予兆は感じられる。カップリング曲「だいじょうぶ」で描かれるこれまでにない解放感。しかも作詞・作曲ともに本人が手がけたものであるということ。同様に本人詞曲の曲はあったがここまで開かれた印象のものはなかった。

 それから2ヶ月後、アルバムがリリース。遊佐未森を本人とともに作り上げ、セカンド・アルバム『空耳の丘』以降共同制作者としてコンセプトを手掛けてきた外間隆史氏の名前が「きみのなかに」の作曲以外見当たらない。作曲、サウンドプロデュースだけではなく氏による童話がブックレットに掲載されるなど初期作でその存在は極めて大きかった。また物語で重要な「言葉」を多く担ってきた作詞家・工藤順子氏の参加作の割合も減っている

文/うどんこ