連載|伊波真人のシティポップ短歌

今月のお題「松田聖子 / Canary」

2023.11.15

今月のお題

松田聖子/Canary1983年


アイドルの中のアイドル、松田聖子が名実ともに絶頂期を迎えた時期の傑作アルバム。呉田軽穂(松任谷由実)が手掛けたヒット曲「瞳はダイアモンド」と、そのカップリング曲だった卒業ソング「蒼いフォトグラフ」が収められていることで知られている。他にも林哲司、井上鑑、来生たかおといった当時のシティポップのキーマンたちが楽曲提供しており、一流ミュージシャンが多数参加したアレンジも極上。松本隆による歌詞もアイドルの枠を超えた大人びた世界観を表現しているが、特筆すべきは聖子自身が作曲を手掛けたアルバム・タイトル曲「Canary」。ファンの中でも人気の名曲の誉れ高い一曲だ。

過去形を知るより前のおさなさが 古い写真のなかに浮かんで過去形を知るより前のおさなさが 古い写真のなかに浮かんで



伊波真人(いなみ・まさと)

歌人。1984年、群馬県高崎市生まれ。早稲田大学在学中に短歌の創作をはじめる。2013年、「冬の星図」により角川短歌賞受賞。雑誌、新聞を中心に短歌、エッセイ、コラムなどを寄稿。ポップスの作詞家としても活動中。ラジオ、トークイベントへの出演なども行う。音楽への親しみが深く、特にシティポップ、AORの愛好家として知られる。著書に、歌集『ナイトフライト』などがある。