2023年11月号|特集 はっぴいえんど+URCレコード
⑥高田渡『ごあいさつ』|はっぴいえんど関連作品ディスクレビュー
レビュー
2023.11.9
高田渡
『ごあいさつ』
1971年6月1日発売
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1. ごあいさつ
2. 失業手当
3. 年輪・歯車
4. 鮪に鰯
5. 結婚
6. アイスクリーム
7. 自転車にのって
8. ブルース
9. おなじみの短い手紙
10. コーヒーブルース
11. 値上げ
12. 夕焼け
13. 銭がなけりゃ
14. 日曜日
15. しらみの旅
16. 生活の柄
17. 自転車にのって(ファンキーヴァージョン)
身体に染みてくる“僕(や、あなた)の暮らし”のうた
中学生の頃よりピート・シーガーやウディ・ガスリーを愛し、アメリカの古い音楽に惹かれ、マウンテン・ミュージックに傾倒していく。同時に明治時代の演歌師、添田唖蝉坊や詩人・山之口漠からの影響も生前に公言されていた。その音楽遍歴を鑑みても高田渡が一貫してうたい続け、うたい継いでいたものは“僕(や、あなた)の暮らし”ではないだろうか。少し強引だが民謡だってそうだ。民衆の日々の労働、生活の中から生まれ、うたい継がれてきたもの、うたい継がれていく歌。本来、フォークソングという言葉が指していたものである。
高田渡は飄々と朴訥と“詞”というより“詩”を、ただ“うたう”というより“節を付け語りかける”。彼のスタイルともいえる外国の曲に他者(詩人)の“詩”をはめこんでうたうという手法は彼の性分から生まれたものだろう(オリジナル本作に寄せられた音楽評論家三橋一夫の文章を読むべし)。谷川俊太郎、吉野弘、ラングストン・ヒューズ、山之口漠ほか、本作16曲中、12曲は詩人の詩をうたっている。その中でも歌詞、曲共に高田渡のオリジナルは素朴でありながら味わい深く、口に出して読むと、聴くよりもなお、身体に染みてくる。それはやはり“僕(や、あなた)の暮らし”でもあるからだろう。センチメンタルな日々の“想い”などではない。実際の“暮らし”すなわち、生活だ。普遍過ぎるものが持つ尊さが短い言葉に、曲に凝縮されている。
文/見汐麻衣
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