2023年9月号|特集 TM NETWORK

【Part4】<TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days〜DEVOTION~>|TM NETWORKドキュメンタリー 2021-2023

会員限定

解説

2023.9.20

文/兼田達矢

写真/山下深礼 Yamashita Mirai


【Part3】からの続き)

FANKSはライヴからの帰り道、様々な印象的シーンとともにそのモチーフを反芻することになる


 新宿から、私鉄の特急に乗った。

 途中、各駅停車への乗り換えはあるが、会場の最寄り駅まで30分余り。<TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days〜DEVOTION~>ツアーの初日(と言うよりは、“大きな物語”の第10節と捉えるべきなんだろうが)に相応しい天候が如何様なのか僕にはわからないけれど、長く続く酷暑が幾分和らいで出かけやすくなったのは、やはりTM NETWORKというグループの徳の高さゆえか。ただ、僕自身もそうなのだけれど、府中の森芸術劇場というホールには馴染みがないというFANKSは少なくないようで、最寄り駅から会場へ向かう道すがら、しきりにスマホで道順を確認する人、あるいは開演までに辿り着けるのかどうか不安になって小走りで先を急ぐ人が目についたし、それでなくても待ち遠しく思っていたライヴの当日というのは気持ちがワサワサするものだ。気持ちの高鳴り具合も月並みではないから、暑さが多少和らいだからといって、FANKSたちにはあまり関係のないことだったかもしれない。

 実際、会場に着くと、そこには確かにエネルギーの高まりがあって、それは平たく言ってしまえば「これから始まるライヴへの期待感」ということになるのかもしれないけれど、しかし他のコンサート会場で感じるワクワク感とは少し異質に感じられるのも確かで、それはおそらくTM NETWORKという独特なグループを支持し続ける上で求められる、ある種の根気強さや美意識を共有しているという連帯感から生じるものだろうと思う。

 それはともかく、他でもない新宿を起点にする路線の沿線に位置する会場から今回のツアーがスタートするのは奇遇以上の因縁を感じるし、現実にライヴを見終わって新宿に戻り、さらに自分の家の最寄り駅へ向かう路線に乗り換える束の間、新宿の喧騒に身を置くなかで反芻されるのは、ライヴで繰り返し暗示された、というか今回のステージのメッセージの核としてライヴ全体に通底しているように感じられたモチーフだ。結局のところ、新宿とはそのモチーフをビビッドに伝えるための象徴であって、だから例えば次の公演地である仙台でも、あるいはその次の静岡でも、つまりは日本のどこにいても、今という時代を生きている限り、FANKSはライヴからの帰り道、様々な印象的シーンとともにそのモチーフを反芻することになるはずだ。


©北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
©2023 Sony Music Labels Inc.






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9月21日(木)TM NETWORK 『CAMP FANKS '89 at YOKOHAMA ARENA』(劇場版5.1chデジタル・リマスター)
10月12日(木)TM NETWORK 『TMN final live LAST GROOVE[5.18]』(劇場版5.1chデジタル・リマスター)
10月19日(木)TM NETWORK 『TMN final live LAST GROOVE[5.19]』(劇場版5.1chデジタル・リマスター)


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