2023年9月号|特集 TM NETWORK
【Part1】小室哲哉|TM NETWORKスペシャル・パーソナル・インタビュー
インタビュー
2023.9.1
日本を代表する音楽ユニット、TM NETWORK。ユニット形態〜シンセサイザー&打ち込みサウンド〜ダンスミュージック〜オールジャンルミックス〜アニメソングなど、あらゆるデジタルシーンのパイオニアとなったレジェンド的存在だ。だがしかし、TM NETWORKは令和時代を迎えた現在も懐古することなくフレッシュに進化し続けている。
今年6月14日にリリースした全11曲収録の最新プロダクツ『DEVOTION』に続いて、9月6日、最新シングルCD『Whatever Comes』をリリース。ヒットの真髄を感じられるポップネスの極みはもちろん、中盤以降、時間軸を自在に操るダンサブルなマジックを繰り広げる新機軸のアンセムだ。9月7日からは、全国11都市16本の全国ツアー『TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days 〜DEVOTION〜』を、府中の森芸術劇場どりーむホールを皮切りにスタート。9月8日にはオープニングテーマ「Whatever Comes」などを手掛ける映画『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』も公開。エンディングテーマ「Get Wild」人気も再燃することだろう。
2024年4月21日に40周年を迎えるTM NETWORK。小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登それぞれに、インタビュー日は異なるが、過去と現在と未来について合計4万字で聞いてみた。
TM NETWORK
「Whatever Comes」
2023年9月6日発売
©北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
©2023 Sony Music Labels Inc.
「僕らにとっては珍しく、“アーバン”というか“都市”、“街”をイメージしていますね」
―― 本日、取材の場所はツアーのリハーサルスタジオとなりました。明日(8月26日)は、シークレットで<Animelo Summer Live (アニサマ)2023 -AXEL->へサプライズ出演となります。入口に、デニーズのお弁当がたくさん届いてましたけど、連日リハが続いてますね?
小室哲哉 そうですね、毎日のようにやってます。
―― 全国11都市16本の全国ツアー<TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days 〜DEVOTION〜>へ向けて、リハの状況はいかがですか?
小室哲哉 ライヴ前のリハーサルって、ずっとルーティンがあるんです。正直言えば、ちょっとそれが狂っちゃっていて。明日もアニサマにシークレットで出演するので。「Whatever Comes」と「Get Wild」はツアーともアレンジが違ったりして、そっちを覚えちゃうとこっちができないみたいな(苦笑)。総合的にも、ひさびさに忙しいTM NETWORKを感じています。多忙なTM NETWORKというのは、30周年のときもなかったんじゃないかな?
―― 期待値が高まっている感が伝わってきますよね。何より9月8日公開、映画『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』との連動が楽しみです。
小室哲哉 もちろん、それが一番大きいと思います。いろんな偶然が重なっての9月7日からのTMの全国ツアー初日で、9月8日は映画『シティーハンター』公開日だからね。
―― 9月6日にはシングルCD「Whatever Comes」もリリースされますし、連日盛りだくさんです。
小室哲哉 そうだね。6日の「Whatever Comes」CDリリースは後付けだとしても、7日と8日はミラクルだよね。ライヴ会場だってそんなに簡単に取れるわけじゃないし、しかも僕らの地元の府中の森芸術劇場どりーむホールからスタートですから。
『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』
2023年9月8日(金)全国ロードショー
©北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
―― ツアーは、前回からの物語が続いているという流れがあります。本日のインタビュー(※4週連載の1回目)は、ツアー開始前の9月1日掲載の記事になるので、あまり多くは語れないと思うのですが、言える範囲でお話いただければと。
小室哲哉 そうですね、ほとんど言えないですねえ(笑)。
―― そりゃそうですよね。それがTM NETWORKですから。でもまあ、言える範囲で。
小室哲哉 長年、もう何十年とやっていて、僕は僕なりにいつもルーティンじゃないですけど……いつも考えるのは観客席視点なんです。観客席やPA席で卓に座って自分たちのライヴを観ている自分をイメージしています。以前は、本当にPA席から演奏したいと言っていたこともあるぐらい、ステージ全体を俯瞰で見たい思いが強かったんです。そういえば一時期、自分のキーボードのシンセのブースに、モニターのカメラをつけて、客席からのサービス映像をそのまま見せてもらいながら演奏していました。
―― TMN終了となった、東京ドームの時もそうでしたね。
小室哲哉 そうそう。今回、ワケあってホール公演でやってますけど、ホールの驚かせ方と、アリーナクラスでの驚かせ方は違うんです。場所、サイズによって本当に様々なんですよ。今回、特に地方の会場の場所にも合わせてやっていくので、総じて言うとホールならではの距離感が楽しめるんじゃないかな。広い会場だと、どうしてもLEDや投影されたサービス映像を観て、音を聴きつつ、視覚的には“お客さんはたくさん入っているな、すごいな。みんなで見てるなぁ”という、大きなディスプレイの画面を観ている状況になりがちで。でも、ホールだと裸眼で僕たちを観てもらえる長所があるんですよ。それとアリーナやスタジアムはコンサートホールとはまったく違いますから。音響という意味で、コンサートホールは良くも悪くも全部を聴かれてしまうんです。細かいところまで聴こえるんですよ。逆にいえば、アリーナやスタジアムはごまかせる部分もあって。そんな意味で、ホールはごまかせないんですよ。なので、音楽的にはホールの方が音はとてもシビアです。クラシックのコンサートを想像していただければおわかりいただけると思うんですけど、PAがなくても、全部聞こえるというホールもたくさんあるので。しかも今回はステージに立つのはメンバー3人だけなので、何をやっているかは直視できるし、音も直接聴こえてくる。ということでギミックが使えないんですよ。
―― 観たままに聴いたまま、ダイレクトに届くということですね。
小室哲哉 そうなんです。
―― TM NETWORKのライヴは照明やセットなど、視覚的にもとても強いこだわりがありますよね。ライティングの光にも、小室さんはこだわられていて。
小室哲哉 うん……、こだわっているんですけど、最近、他のアーティストさんたちもすごいでしょ? だから僕たちが今、極めてすごいというワケではないんだよね。
TM NETWORK
『LIVE HISTORIA VISUALIZED T』
2022年9月21日発売
TM NETWORK
『LIVE HISTORIA VISUALIZED M』
2022年9月21日発売
―― そのパイオニアがTM NETWORKで、80年代、TMのコンサートから広がっていきました。
小室哲哉 いち例だけ挙げると、あるTMのツアーのときに、演奏中にどうしてもライトの光量が足りない感じがして、スタッフに相談して、増やしてもらったことがあるんですよ。ちょっと偉そうに“自費でもいいから増やしてほしい!”というようなことを言った記憶があります。その頃は、いかにステージが白くなるかという感じを出したくって。白も昔の色はオレンジに近くて、今は再現度の高いLEDがメインですから、本当の白が出せるんですよ。昔の白というのはパーライトという、それこそバリライトとかもない時代は、白が白じゃないんですよ。ちょっと温かみのある暖色の白だったんですよね。あれがどうしても僕はイヤで。“洋楽のライヴでは、あんなに真っ白なのになぁ”と思ったりしていました。もし僕らをパイオニアと言っていただいているとしたら、その頃かな。“海外ではライティングまで自分たちで開発してやっているのになぁ”、“ピンク・フロイドもライヴ中に、後ろのスクリーンにまったく違う映像を流して、映画まで撮影していたのになぁ”など。願望だらけでいた時期もありました。いつぐらいですかね……。1987年頃、「Get Wild」をリリースしたぐらいかな。最初に武道館でライヴをやった頃から、コンサート全体のクオリティーとは別に、納得いかないことがいっぱいで。その前なんてもう全然納得いかなくて。もともと僕は、“エンタテインメントの質と、スポットライトの光の量は正比例する”と、真剣に思っていましたからね。
―― 海外の機材もいち早く使われるなど、日本初の試みも多かったですよね。
小室哲哉 うん、そうですね。レーザーも含めて。“日本ではなぜ緑だけなの?”みたいなことを言ってましたね。
―― そんな疑問から改革がなされていくのでしょうね。ちなみに、今回のツアーの演出面でキーワードがあるとしたら、どんな感じでしょうか?
小室哲哉 僕らにとっては珍しく、“アーバン”というか“都市”、“街”をイメージしていますね。
―― おおお、面白いですね。
小室哲哉 今までは宇宙空間やスペイシーとかSFのイメージでしたけど、どちらかというとそっちのイメージになるかな。
―― そこが『シティーハンター』を経由した2023年のTM NETWORKの表現であり、それこその3人のアニメ風イラストになったアーティスト写真の背景からも、“街”というキーワードは繋がっていますね?
小室哲哉 本当にそうです。こんな偶然はなかなかないので。僕たちもツアーで全国を回って、映画『シティーハンター』も全国で上映しているという。昔、“本から読むか映画から観るか”みたいなキャッチコピーがありましたけど、ライヴを観てから映画を観るか、映画を観てからライヴを観るかみたいなことができるのは、表現者として幸せだと思います。昔、僕が夢見ていたメディアミックスみたいなことで、本当にやりたかったことなんですよ。それこそ、以前に『CAROL』でやらせてもらいましたけど、またそれにちょっと近いかもしれないね。
(【Part2】に続く)
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9月21日(木)TM NETWORK 『CAMP FANKS '89 at YOKOHAMA ARENA』(劇場版5.1chデジタル・リマスター)
10月12日(木)TM NETWORK 『TMN final live LAST GROOVE[5.18]』(劇場版5.1chデジタル・リマスター)
10月19日(木)TM NETWORK 『TMN final live LAST GROOVE[5.19]』(劇場版5.1chデジタル・リマスター)
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【Part2】小室哲哉|TM NETWORKスペシャル・パーソナル・インタビュー
インタビュー
2023.9.8