2023年8月号|特集 EPIC 45
【Part4】|EPIC 45 yearsストーリー1978-2023
解説
2023.8.25
文/大谷隆之
(【Part3】からの続き)
清新なロックだけでなく、コンテンポラリーの系譜とも言うべきものが脈々と流れていた
「毎晩どこかのライブハウスでエピック・ソニーのアーティストが歌っていた。私は白のポロシャツにジーパン、スニーカー、白髪頭という風貌で夜な夜なライブハウスに出かけた。どこから見ても丸山だとわかる。偉い人がライブに来て、熱心に見てくれるレコード会社。エピックが一種のブランドと化した」(日本経済新聞、丸山茂雄「私の履歴書」、原文ママ)
80年代も半ばに差し掛かると、EPIC・ソニー(当時)の勢いは目に見えて顕在化する。原動力になったのはマスメディアによる派手な露出ではなく、むしろ地道なライヴ活動だった。いつの時代でもオリジナリティに溢れるステージは、若くてアンテナ感度の高いリスナーの間で噂を呼ぶものだ。そうなればクリエイターは放っておかない。CMタイアップへの起用も増え、鮮烈なフレーズがヒットに結び付く。好循環が回り出す。
「『エピックと契約したい』。有望なロックミュージシャンもそう言い出すほどになった。音楽好きにとっては『エピックが認めるアーティストなら間違いない』と品質保証の意味を持った」(同前)
バービーボーイズ
『1st OPTION』
1985年2月25日発売
’85年2月25日には、バービーボーイズのファーストアルバム『1st OPTION』がリリースされている。こと登場時のインパクトやスタイルの斬新さにおいて、数あるEPIC・ソニー所属アーティストの中でもこの5人組に匹敵するバンドはいないだろう。KONTA(近藤敦)と杏子が丁々発止で渡り合う、男女混声編成。恋愛の機微を(多分にセクシャルな匂いを含みつつ)描く、下世話で艶っぽい歌詞。そしてリーダー兼ギタリストのいまみちともたかが書く、一度聴いたら絶対に忘れられない旋律の数々──。ヴォーカル2人の掛け合いから生まれるバービー独自の世界観は、もともとは別バンドで活動していた杏子をバンドに引き入れるため、無理やり編み出したものだったという。
「もともとバービーは男子4人組だったんですよ。私はたまたまライブハウスで対バンしたときに初めて観たんですけど、すごい衝撃を受けて。ギターのサウンドが突き刺すような感じで、KONTAくんはどこか病的で(笑)」(杏子)
「(杏子の所属していた)喝!タルイバンドはその頃、めちゃくちゃお客を集めてて。(中略)そのお客をバービーのライブにも呼んでもらいたくて、杏子に『うちのバンドにゲストで出てくれない?』ってお願いしたんだよ。もちろん杏子のボーカルがカッコよかったこともあるんだけど。それで女子パートのある曲を作ってみたらいい感じだったんで、KONTAと策略して、もうメンバーだってことにしちゃったんだよね」(いまみち ※音楽ナタリー、2018年11月21日掲載のインタビューより)
この際、いまみちが急きょ書き上げた初の男女ツインヴォーカル曲が「暗闇でDANCE」だ。この曲はCBS・ソニーSDオーディションでグランプリを獲得。’84年9月21日にデビューシングルとして発売された。その後、彼らは「もォ やだ!」「チャンス到来」「なんだったんだ?7DAYS」「女ぎつねon the Run」など、独特のセンスで存在感を高めていく。
渡辺美里
『eyes』
1985年10月2日発売
’85年には、“EPIC・ソニーの歌姫”とでも言うべき女性シンガーもデビューを果たした。全身から発するポジティブなオーラと、物怖じしない歌いっぷりで若者層の支持を集めた渡辺美里だ。集英社主催「ミス・セブンティーンコンテスト」で最優秀歌唱賞を獲得した彼女の才能を見出したのは、佐野元春やTM NETWORKを手がけていた小坂洋二氏。’85年10月2日リリースのファーストアルバム『eyes』の作家陣には小室哲哉、木根尚登、大江千里、まだデビュー前の岡村靖幸などがこぞって参加した。
翌’86年には4枚目のシングル「My Revolution」(1月22日)がチャート1位を獲得する大ヒット。同年8月には女性ソロシンガーとして日本初のスタジアム公演を西武スタジアムで成功させ、押しも押されもせぬスターの仲間入りをした。「My Revolution」という曲がまとっている希望に満ちた浮遊感、フレッシュな輝きは、この時期のEPIC・ソニーを象徴するカラーと言えるだろう。デビュー後なかなかヒット曲を出せずにいた小室哲哉にとっても、「My Revolution」を手がけた経験は大きかった。自伝にも次のような記述がある。
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