「ロックがまだ親に煙たがられていた時代、こっそりとレコードを聴いていた感覚」が欲しい。
それはもう手に入るはずはないものなのだが、よくそんなことを思う。
今、ライターとして様々なジャンルの原稿を書いているが、この仕事を目指したきっかけのひとつが、キャメロン・クロウ監督の映画『あの頃ペニー・レインと』。監督が15歳の頃から「ローリング・ストーン」誌でライターとして参加した実体験をもとにした映画なのだが、弁護士を目指す優等生だった少年がロックに目覚めるのは、母親とぶつかって家を飛び出した姉の部屋にあったレコードコレクションに接してからのこと。
母親に内緒でレコードに触れていたものの、ある時、バレてしまう。母親はレコードを手に取り、ジャケットを見て、この目はドラッグをやっているに違いない、などと次々と偏見をぶつけていく。親が煙たがるものであるほど、その存在に惹かれていくのは思春期の方程式。結果、彼は音楽ライターとなり、あるロックバンドに帯同、そこにいたグルーピーに恋をする。
- 武田砂鉄(たけだ さてつ)
- 1982年生まれ。出版社勤務を経て、2014 年よりライターに。2015年『紋切型社会』でBunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。他の著書に『日本の気配』『わかりやすさの罪』『偉い人ほどすぐ逃げる』『マチズモを削り取れ』『べつに怒ってない』『今日拾った言葉たち』『父ではありませんが』などがある。週刊誌、文芸誌、ファッション誌、ウェブメディアなど、さまざまな媒体で連載を執筆。TBSラジオ『武田砂鉄のプレ金ナイト』パーソナリティ。
http://www.t-satetsu.com/
■TBSラジオ『武田砂鉄のプレ金ナイト』
https://www.tbsradio.jp/prekin/
『父ではありませんが 第三者として考える』
2023年1月26日発売
1,760円(税込)
四六判/232ページ
ISBN:978-4-08-788081-6
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