連載|伊波真人のシティポップ短歌

今月のお題「上田正樹 / AFTER MIDNIGHT -バラードまでそばにいて-」

2023.6.15

今月のお題

上田正樹 /AFTER MIDNIGHT -バラードまでそばにいて-1982年


70年代初頭から関西のブルース・シーンで注目を集め、‘77年からソロ活動を開始した上田正樹。本作はアーバン・ソウル路線に転向した80年代初頭の代表作。なんといっても大ヒットした「悲しい色やね」がクライマックス。林哲司によるメロウなメロディに乗せた、康珍化による大阪弁の歌詞が強烈なインパクトを残すバラードの名曲だ。他にも、同じコンビによる「ストレート・ライフ」や「ベイビイ・レイディ」、安部恭弘作曲の「レフト・アローン」、藤本健一作曲の「ピュア・マインド」など和製AORの佳曲が揃う。ドアーズやドリフターズといった洋楽カヴァーも混在し、男の渋さがにじみ出たヴォーカル・アルバムに仕上がっている。

街灯がかがやいていた僕たちの <br />
 明日(あす)を占うコインのように街灯がかがやいていた僕たちの 明日(あす)を占うコインのように



伊波真人(いなみ・まさと)

歌人。1984年、群馬県高崎市生まれ。早稲田大学在学中に短歌の創作をはじめる。2013年、「冬の星図」により角川短歌賞受賞。雑誌、新聞を中心に短歌、エッセイ、コラムなどを寄稿。ポップスの作詞家としても活動中。ラジオ、トークイベントへの出演なども行う。音楽への親しみが深く、特にシティポップ、AORの愛好家として知られる。著書に、歌集『ナイトフライト』などがある。