2023年6月号|特集 林哲司の50年

A-Side①竹内まりや「SEPTEMBER」|林哲司を代表する名曲レビュー

レビュー

2023.6.1


「SEPTEMBER」
竹内まりや

1979年8月21日発売
作詞:松本隆
作曲・編曲:林哲司

収録アルバム『LOVE SONGS』(上記ジャケット)

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王道を貫きながらも、どこまでも斬新なポップス

 この曲の魅力は、やはり爽やかな明るさにある。がしかし、明るい日差しを浴びていても季節は移りかわり、秋のおとずれを感じさせている。このような色彩感をもったレイヤーの重ねかたが林哲司であると思うのだ。

 ’79年の8月21日に発売され、竹内まりやの3枚目のシングルとなった。イントロの弾けるようなツイン・ギターの音色や、小気味の良いドラミングと考えられたベースラインの組み合わせなど、ポップスの王道を貫きながらも、どこまでも斬新だ。

 最大の特徴となっているのは、コーラスの使い方になるだろう。女性のコーラス・パートをデビュー間近だったEPOが担当し、男性部はこの曲のプロデューサーでもある宮田茂樹が受け持った。キーワードとなるサビの「September」の歌詞を、メイン・ヴォーカリストよりも先にコーラスが歌うというのは、随分と大胆なアレンジメントだ。サビのセカンド・ヴァースでは、その順番が逆になるという洒落た遊び心も用意されている。

 満を持して登場してくるCメロもドラマチックだ。辞書を切り抜くという歌詞とともに、鮮烈なイメージを残してくれる。透明感のあるストリングスの響きや、木管楽器の優しさを活用したオブリガードなど、総力で竹内まりやの歌声を支えていく。これが名曲の条件でもあるのだ。

文/小川真一