2023年5月号|特集 大江千里 Class of ’88

第5回:コンサート|Column of ’88 ~ 1988年のカルチャーシーンを斬る!

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コラム

2023.5.29

文/内本順一




『Class of ’88』にちなみ、1988年にフォーカスするカルチャーコラム。最終回の第5回目はビッグ・エッグを始め巨大化していったコンサート事情について。

音楽好き、ライヴ好きにとってちょっと特別な1年だった'88年


 バブル景気とは1986年12月から1991年2月頃までの期間を指すわけだが、とりわけ’88年は一般の人々がかつてなかった好景気を実感。東京の街に大資本が投下され、夜遊び好きたちの好奇心をくすぐるオシャレな飲食店やライヴスポットが乱立した。高級ディスコブームを象徴した六本木のディスコ、トゥーリアの照明装置落下による痛ましい事故(死者3名を出し、開店から半年あまりで閉店)で始まった年ではあったが、しかしライヴハウスでありながらクラブ的な機能も備えた1,000人前後収容の中規模店が立て続けにオープンし、ドリンク片手にライヴを観るという新しい楽しみ方が一気に定着した年でもあった。


JAGATARA
『ナンのこっちゃい HISTORY OF JAGATARA SPECIAL EDITION』(Blu-ray)

2021年1月27日発売


 まず3月、新宿の外れに収容人数700人の日清パワーステーションがオープン。地下2階がステージとフロア、地下1階がステージを俯瞰して観ることのできる客席で、今あるブルーノート東京やBillboard Live TOKYOのようにゆったり食事を楽しむこともできた。キャッチフレーズは「Rockin' Restaurant」。第2次バンドブームだった時期でもあり、自分もこの年に結成されたウルフルズを始め、後にビッグになっていく日本のいろんなバンドをそこで観たものだ。続いて6月にはパルコが運営する渋谷クラブクアトロが宇田川町にオープンした。750人収容で、バーカウンターの存在が大きく、音響設備も良好。日本のバンドに限らず海外アーティストも多数出演し、オープンした’88年から数年はワールドミュージックのアーティストの公演も盛んだった。今も続くこのベニューで自分はこれまで数百組のライヴを観てきたが、’88年といえば8月に観たJAGATARAの公演が忘れられない。