連載|伊波真人のシティポップ短歌

今月のお題「南佳孝 / SOUTH OF THE BORDER」

2023.5.15

今月のお題

南佳孝 /SOUTH OF THE BORDER1978年


‘73年にアルバム『摩天楼のヒロイン』でデビューした南佳孝が、CBSソニーに移籍し『忘れられた夏』(1976年)に続いて発表した通算3作目。スティールパンが入った「夏の女優」に始まり、大貫妙子とデュエットしたスロー・サンバの名曲「日付変更線」、ファンキーなサンバ・テイストの「夜間飛行」、マンボ調のリズムが印象的な「ワンナイト・ヒーロー」など、全編エレガントなラテン・テイストに彩られているのが最大の特徴。アレンジを手掛けたのが若き日の坂本龍一で、後のYMO人脈といわれるメンバーがこぞって参加。来生えつこや松本隆が手掛けたエキゾチックで大人っぽい世界観を歌い上げている。

夢のよう貴方は去った枕辺のコロンの香りだけを残して夢のよう貴方は去った枕辺のコロンの香りだけを残して



伊波真人(いなみ・まさと)

歌人。1984年、群馬県高崎市生まれ。早稲田大学在学中に短歌の創作をはじめる。2013年、「冬の星図」により角川短歌賞受賞。雑誌、新聞を中心に短歌、エッセイ、コラムなどを寄稿。ポップスの作詞家としても活動中。ラジオ、トークイベントへの出演なども行う。音楽への親しみが深く、特にシティポップ、AORの愛好家として知られる。著書に、歌集『ナイトフライト』などがある。