2023年5月号|特集 大江千里 Class of ’88
【Part2】Life of S.O.~大江千里のライフ・ストーリー[N.Y.編]|2012-2015
解説
2023.5.10
文/大窪由香
(【Part1】からの続き)
2012年夏、渡米約4年半の決算、ジャズ・アーティストとしての出発、アルバム『boys mature slow』を発表
2012年5月、千里さんは約4年半通ったニュースクールを卒業した。N.Y.に降り立ったばかりの頃から考えると、随分と荷物も増えたし、大切な仲間も増えた。これからは自分自身で学んでいくのだと心新たにする。「新しいジャズのスタンダードになるかもしれないような曲を生みたい」、そんな想いも膨らんでいた。
N.Y.での約4年半で何ができるようになったのだろうか? と振り返ると、“ジャズの勉強もさることながら、どんな現場に行っても動じない度胸がついたこと”もそのひとつだと語る。学校を卒業した後もN.Y.で活動を続けるために、千里さんは4つのやるべきことを掲げた。①自分自身によるジャズの曲を生み出し、アレンジをすること ②自分のバンドを作り、N.Y.で有名なベニュー(会場)と自分で交渉してコンサートをすること ③自身のレーベルを立ち上げること ④ビザを申請すること。いずれにしても“動じない度胸”が必要な事柄ばかりだ。
まずは自身のレーベルを設立した。社名は「P.N.D. Records & Music Publishing Inc.」。“P.N.D.”のPは“Peace”のP。ともにN.Y.にやってきた愛犬の名前でもある。“Peace never dies(ピースは死なない)”の頭文字を取ったそうだ。レーベルが立ち上げると、約4年半の決算といえるジャズアルバム『boys mature slow』の制作に取り掛かる。スタジオ選びと予約入れ、メンバー選びやレコーディングエンジニアへのオファーと、すべて自身で行なった。メンバーは、ジョー・ベーテイ(tb)、ジョナサン・パウエル(tp)、ジム・ロバートソン(b)、オーベッド・カルヴェール(ds)。卒業制作であり、ジャズ・アーティストとしての出発のアルバムでもある今作は、10曲すべてが千里さんのオリジナル曲。肌で感じたN.Y.の空気をパッケージした、心地よいグルーヴ感のある作品となった。
大江千里
『Boys Mature Slow』
2012年9月6日発売
大江千里
『Class of '88』[初回生産限定盤]
2023年5月24日発売
MHCL-3032~3034/¥8,800(税込)
●Disc-1:CD 『Class of '88』 ※通常盤と共通
●Disc-2:CD 『Senri Jazz 〜First Decade〜』
●Disc-3:DVD 『大江千里Piano Concert ~Remember Homeroom!~』
大江千里
『Class of '88』[通常盤]
2023年5月24日発売
MHCL-3035/¥3,300(税込)
-
【Part3】Life of S.O.~大江千里のライフ・ストーリー[N.Y.編]|2016-2019
解説
2023.5.23