2023年5月号|特集 大江千里 Class of ’88

第2回:トレンディドラマ|Column of ’88 ~ 1988年のカルチャーシーンを斬る!

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コラム

2023.5.9

文/高島幹雄




『Class of ’88』にちなみ、1988年にフォーカスするカルチャーコラム。第2回目は誰もが憧れたトレンディドラマについて。

バブル好景気を背景にした男女の恋愛模様を描いたストーリー


 1988年はトレンディドラマ元年といっていいだろう。バブル好景気の80年代後半に、DCブランドの衣裳をまとった男女の恋愛模様をストーリーのメインにして、流行のスポットやアイテムなどを織り込みながら作られたテレビドラマがトレンディドラマと呼ばれるようになった。その原点はTBSが放送した『男女7人夏物語』(’86年)といわれているが、トレンディドラマという言葉が生まれた大きなきっかけは、’88年以降、フジテレビの月曜夜9時枠などで放送された数々の作品群だ。ここでは’88年に生まれたフジテレビのトレンディドラマを紹介していく。

 ’88 年の年明け早々、1月4日にフジテレビの月9で始まったのが『君の瞳をタイホする!』である。新番組の宣伝ポスターにあるキャッチコピーは「アフター5は、恋が仕事(ヤマ)」。「ヤマ」とは警察用語で事件を意味するが、事件ではなく仕事にヤマというよみがなを付けた斬新でオシャレな表現に、従来の事件捜査を中心に描いたフツーの刑事ドラマとは全く違うドラマになることが想像できた。

 舞台となる渋谷の道玄坂警察署刑事課の刑事たちのキャストは、第1話で赴任してくる沢田一樹役に陣内孝則と土門隆役の柳葉敏郎。彼らを迎えた刑事たちは田島鋭次役に三上博史と、その恋人でもある高田佐和子役の三田寛子。そして、シングルマザーでもある佐藤真冬役に浅野ゆう子といった顔ぶれ。その他にかつて沢田の恋人、須崎綾子役に石野真子。第1話で自殺しようとしたところを刑事たちに助けられる筒井静香役に工藤静香。

 本作は二十代の女性を中心にした層に向けたドラマを作りたいと考えた山田良明と大多亮の両プロデューサーが、かつての『男女7人夏物語』の日常的な恋愛の描き方、主題歌(石井明美「「CHA-CHA-CHA」」)の使い方や大ヒットに触発されて生まれたという。渋谷や原宿方面でのロケを多く行い、オープニング映像にはスペイン坂、ロフト(当時の名称は西武ロフト館)、渋谷109などのスポットが登場。コメディタッチのドラマに状況説明のテロップが挿入されることもあり、バラエティ番組的な映像表現も加味。毎回のラストにある「P.S.Talk ホールド・アップ!」と題されたキャストによる素のフリートークも楽しみだった。このコーナーは渋谷のオシャレなスポットや衣裳に使ったブランド服の販売店などで収録。店の紹介テロップも挿入していた。

 主題歌は久保田利伸の「You were mine」。当時はまだ一般的に知名度は低かったが、この曲で初のチャートトップ3入りを果たしてビッグネームへと駆け上がっていった。3月21日までの間に全12話が放送され、最高視聴率は最終回の21.4%。陣内、柳葉、三上は、その後のトレンディドラマの常連俳優になる。また浅野ゆう子も娘のことに一生懸命なシングルマザー真冬への女性から共感により新たなファン層を得た。


久保田利伸
「You were mine」

1988年2月26日発売