2023年3月号|特集 シティポップ・ストーリー

DISC 2-Ocean Side-❶「夏に恋する女たち」 大貫妙子 from album 『SIGNIFIE』(1983)|コンピレーション『シティポップ・ストーリー』|オリジナル収録アルバム全レビュー

レビュー

2023.3.1


大貫妙子
『SIGNIFIE』

1983年10月21日発売

ダウンロード・再生はこちら ▶

1. 夏に恋する女たち
2. 幻惑
3. SIGNE <記号>
4. PATIO <中庭>
5. ルクレツィア
6. テディ・ベア
7. RECIPE <調理法>
8. アーニャ
9. SIESTA <ひるね>
10. エル・トゥルマニエ <虹の神>
11. みずうみ


音楽の旅の同伴者にする“1983年の都会のポップス”

 ’80年の『ROMANTIQUE』から続く“ヨーロッパ3部作”を経て、大貫妙子が新たな音楽的冒険に踏み出した傑作。1曲目「夏に恋する女たち」が同名テレビ・ドラマの主題歌に使用されたことにも助けられ、キャリア至上最も良いセールス(オリコン6位)を記録した。

 その「夏に恋する女たち」は、夏の夜に吹き込む一瞬の涼風を思わせるまことにセンシュアルな曲。大貫の儚げな歌声と繊細なメロディー、映像的な歌詞、そして坂本龍一によるみずみずしいアレンジが奇跡的な配合具合で混じり合う。現代のシティポップ解釈とは必ずしも合致しないかもしれないが、“1983年の都会のポップス”という意味では、これ以上に洒脱な例はほとんど存在しないだろう。

 その坂本龍一をはじめ、清水信之、鈴木慶一ら編曲陣の妙技も冴え渡る。それぞれの個性を浮かび上がらせながらも、しかしながら全体では“大貫妙子の色”に統一されているのが素晴らしい。冒険と楽曲への献身のバランス感のみごとさよ。

 テクノポップの時代の“その後”を思わせる、“ワールド・ミュージック”を先取りしたようなテイストも。西ヨーロッパから南米へ、そして東欧を経由して東京へ。旅するシンガー・ソングライター大貫妙子は、彼女の音楽に触れる我々もまたその旅の同伴者にする。

文/柴崎祐二




●究極のシティポップ定番コンピレーション!
<企画・選曲・解説: 栗本斉>
Various Artists
『シティポップ・ストーリー CITY POP STORY ~ Urban & Ocean』
2023年3月22日(水)発売
MHCL-30829~30
高品質Blu-spec CD2/2枚組