2023年1月号|特集 Japanese R&B

①MISIA『Mother Father Brother Sister』|Japanese R&Bディーバ名盤レビュー 1998-2007

レビュー

2023.1.5


MISIA
『Mother Father Brother Sister』

1998年6月24日発売

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1. Never gonna cry! strings overture
2. K.I.T
3. 恋する季節
4. I'm over here ~気づいて~
5. Interlude #1
6. Tell me
7. キスして抱きしめて
8. Cry
9. Interlude #2
10. 小さな恋
11. 陽のあたる場所
12. 星の降る丘
13. つつみ込むように…(DAVE "EQ3" DUB MIX)
14. Never gonna cry!
15. Never gonna cry!(JUNIOR VASQUEZ REMIX RADIO EDITION)

国内の先駆者たちが耕した土壌で芽吹いた“和製R&B”

 MISIAのデビュー・アルバム。オリコンの週間チャートで1位を記録し、日本レコード大賞のベスト・アルバム賞も受賞している。デビュー・シングルの「つつみ込むように…」(シングルとはヴァージョン違い)や「陽のあたる場所」が収録されている。このアルバムでもしばしば披露されるミニー・リパートンとタメを張るようなハイノートは当時もインパクトがあったが、今聴いてもフレッシュだ。
 MISIAの登場以降、当初は“和製R&B”というワードとともに新しいタイプのポップスとして受容されていたように記憶している。実際、TLCの「ウォーターフォールズ」や「クリープ」を彷彿させるサウンドプロダクションが施されており、アメリカ産のR&Bからの影響は明らかだ。歌いまわしにおけるタイム感やブルーノートに対する慣れた手付きもフレッシュだった。他方、今改めて聴いてみると、新しく感じられていた面よりもむしろ過去の蓄積との連続性のほうに自然と意識が向く。“和製R&B”なる新たなポップスも国内における先駆者たちが耕した土壌のうえに成立したものだと再認識した次第だ。要するに「K.I.T」や「Cry」といった曲に山下達郎の影響を感じると言いたいのだ。作曲は全14曲のうち12曲を島野聡が担当している。

文/鳥居真道