2022年12月号|特集 平成J-POP

【Part2】トレンディドラマ|平成カルチャー再検証!Hello,Again~ヘイセイからある場所~

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コラム

2022.12.7

文/安川達也(otonano編集部)


トレンディドラマは『男女7人夏物語』から始まった


 トレンディドラマ。TRENDY DRAMA……限りなく透明に近い80’sな響き。なんとなくクリスタルなこの和製英語に身体が即応してしまうのは、アラフィフ世代=昭和、とりわけ80’sリアルタイマーなら仕方がない。それは、今から36年前の’86年(昭和61年)夏、金曜日夜9時、ブラウン管から突然やってきた(決して月9ではない)。華やかな打ち上げ花火のオープニング。石井明美が歌う主題歌「CHA-CHA-CHA」に乗ってスタッフテロップに挿入される映像は、東京ウォーターフロントに架かる橋、ランプが眩しい首都高速、東京マリオンに蛍光色で浮かび上がる人形時計……のちにトレンディドラマの先がけと言われるドラマ『男女7人夏物語』だ。東京を舞台に合コンで知りあった独身男女7人をお洒落に描いた群像恋愛物語。このドラマの果たした役割は徹底的な“時代の先取り”だった。

 フリーライターの桃子(大竹しのぶ)が、マイケル・ジャクソンのツアーに同行するために良介(明石家さんま)と別れ、単身アメリカに渡る最終回は視聴率31.7%を記録した(80年代ドラマ歴代7位)。その1年後、昭和62年(’87年)秋にメンバー4人が入れ替わった『男女7人秋物語』がスタート。舞台は神奈川県に南下、完成したばかりの川崎駅地下街アゼリアが一躍お洒落スポットに躍り出た。放送第1回は10月9日。奇しくもマイケル・ジャクソンの単独初来日旋風の真っただ中だった。「マイケルは来日したのに、どうして彼の同行取材にいった桃子ちゃんは一緒に日本に帰って来ないんだ!」と貞九郎(片岡鶴太郎)が良介に迫るセリフは、リアル過ぎた。あまりにもタイミングが良すぎて『夏物語』から決まっていた必然か、たまたまの偶然が重なった奇跡の時事演出かは、いまだに不明だ。