2022年12月号|特集 平成J-POP
【Part1】|クリス松村が語る平成J-POPの愉しみ方
インタビュー
2022.12.1
インタビュー・文/大窪由香 写真/増田慶
平成初期はストリーミングやサブスクはないですから。思い出っていうものを自分でひとつひとつ買っていく。そういう時代だったんですよ(クリス松村)
──発売されたばかりの“平成J-POP”をピックアップしたコンピレーションアルバム『クライマックス うきうき平成J-POP』と『クライマックス うるうる平成J-POP』を元に、クリス松村さんに“平成J-POPの楽しみ方”についてお伺いします。まず、一口に“平成J-POP”と言いますが、昭和から平成に変わって、音楽の楽しみ方はどのように変化していったのでしょうか?
クリス松村 平成時代っていうのはまさに“うきうき”っていう言葉と重なるかのような時代なんですね。平成が始まった頃はすでに経済のバブルは崩壊していたんですけど、CDバブルっていうのがその後にきたんですね。90年代にアナログ盤がなくなっていき、気軽にCDが買えるようになった。だって、LP10枚持つことを想像してみて。本当にLPが2枚3枚と増えるたびに、“持って帰れるかな?”っていう世界だったんですから。その後にMDが出てきますよね。MDといえば浜崎あゆみさん。パナソニックのMD(Dockin'styleシリーズ)のCMに出ていたんですよ。ブラウン管の中からあゆが買えって言うから、私も買っちゃいました(笑)。だけどMDの時代はすぐに終わっちゃった。当時は音楽ソフトとしても暗中模索をしていた時代だったんですね。8㎝CDと言われていたCDシングルも10年しかもたなかった。宇多田ヒカルさんが出てきた1998年にはマキシシングルの時代になっているんです。そうやって再生メディアも移り変わってきたんですね。発売されたコンピCD『うきうき平成J-POP』や『うるうる平成J-POP』のタイトルを見て、“うきうき”したり、“うるうる”するような世代の方たちにとって、まだこの頃はダウンロードも含めるストリーミングやサブスクの時代には入っていないから、まさに思い出っていうものを自分でひとつ一つ買っていくっていう、そういう時代だったんですよ。
──“思い出をひとつ一つ買っていく”、素敵な時代ですね。今作のラインナップを見てみると、現代と比べてテレビがとても強い時代だったんだなということも感じました。
クリス松村 若者が元気だったんですよ。70年代後半から大学生がリゾートなんかに遊びに行くっていう感覚があったんだけど、その頃はまだ飛行機に乗って海外に行くなんてすごく大変なことだったんです。それからツアーが組まれるようになって、旅行がどんどん気軽なものになっていった。だからスキー用品店アルペンのCMソングだった広瀬香美さんの「ロマンスの神様」('93年/平成5年)や、JR東日本<JR Ski Ski>CMソングだったZOOの「Choo Choo TRAIN」('91年/平成3年)のヒットが、そんな時代背景とリンクしていないとは言えないわけなんです。米米CLUBの「浪漫飛行」('90年/平成2年)もそうですよね。元々は昭和時代にリリースしたアルバムに収録されていた曲だけど、JALの沖縄旅行のキャンペーンソングとしてヒットしてシングル化されたんです。平成の最初の頃は、沖縄っていう場所はまだ遠かったんです。だけどこういうキャンペーンのおかげで沖縄というパラダイスが近くにあるってことで、若者が行きやすくなったんです。
──今ピックアップしていただいた楽曲は、『クライマックス うきうき平成J-POP』のDISC1に収録されていますね。
クリス松村 そうですね。DISC1のこういったリゾート系が好きかな。「浪漫飛行」も大好きだし、「ロマンスの神様」の広瀬香美さんのあの声にはビックリしたし。今年発売されたレコードも買っちゃったし。もちろんZOOの「Choo Choo TRAIN」も好きだったし、リゾート系ではないけれども、THE BOOMの「風になりたい」('95年/平成7年)も好きでした。この頃、仕事で忙しかったから、こういう歌を聴いてテンションを上げたかったんです。大事MANブラザーズバンドの「それが大事」('91年/平成3年)とかウルフルズの「ガッツだぜ!!」('95年/平成7年)みたいな自分を鼓舞するような曲よりも、私の場合はどちらかと言うと「浪漫飛行」や「ロマンスの神様」みたいな柔らかいというか、テンションを上げながら心を癒してくれるような楽曲が好きでしたね。
米米CLUB「浪漫飛行」
c/w 「ジェットストリーム浪漫飛行」【東日本版】
1990年(平成2年)4月8日発売
米米CLUB「浪漫飛行」
c/w 「そら行け!浪漫飛行」【西日本版】
1990年(平成2年)4月8日発売
──私はバブル時代を経験していない世代なのですが、90年代初頭は旅行にスキーにと、少し上の世代の人たちがキラキラとしていて羨ましかった記憶があります。
クリス松村 私自身は仕事で忙しかったと言いましたけど、まさに若者のパワーを感じられたのが90年代だったと思いますよ。このコンピには入っていないけれど、牛若丸三郎太さんの「勇気のしるし〜リゲインのテーマ〜」って曲があったじゃないですか。“24時間戦えますか”って、今の時代では絶対に歌えないだろうけど(笑)、さっき言った「それが大事」や「ガッツだぜ!!」もそうなんだけど、頑張るためにそういう歌を聴いて自分に魔法をかけるわけですよ。それから、もうひとうつパワーを感じたのは、収録されていますけどSPEEDの「STEADY」('96年/平成8年)や中島美嘉さん(NANA starring MIKA NAKASHIMA)の「GLAMOROUS SKY」('05年/平成17年)。こういった新しい若い子たちが出てきましたよね。そういう人たちに共通して言えるのは、若くてかわいいだけじゃない、みなさん実力を持って出てきているというところ。かわいければデビューできるっていう時代もあったけれど、そういう世界がどんどんなくなっていったんです。JUDY AND MARYのYUKIさんの声や個性的な歌詞も素敵ですよね。ピチカート・ファイヴの野宮真貴さんも含め、個性的なシンガーがたくさん出てきて、歌がうまいというのはもちろんですけれど、個性的な声の方たちが大ヒットを飛ばしていた面白い時代でもありました。
(【Part2】へ続く)
クリス松村●担当音楽番組
【ラジオ】
◎MBSラジオ『クリス松村のザ・ヒットスタジオ』
◎ラジオ日本『クリス松村の「いい音楽あります。」』
◎Bay-FM『9の音粋』 木曜担当DJ
【テレビ】
◎MX『ミュージック・モア』
【連載】
◎動画『クリス ミュージック プロマイド』
クライマックスうきうき平成J-POP
●Blu-spec CD2 ●2枚組 ●34曲 ●¥2,970(税込)●Now on Sale!
DISC-1
1. ココロオドル -original version- / nobodyknows+
2. CRAZY GONNA CRAZY / trf
3. ロマンスの神様 / 広瀬香美
4. Choo Choo TRAIN / ZOO
5. STEADY / SPEED
6. 風になりたい / THE BOOM
7. 二人は恋人 / 森高千里
8. 愛は勝つ / KAN
9. これが私の生きる道 / PUFFY
10. 浪漫飛行 / 米米CLUB
11. それが大事 / 大事MANブラザーズバンド
12. ガッツだぜ!! / ウルフルズ
13. STAMINA / ブラックビスケッツ
14. 日曜日よりの使者 / ザ・ハイロウズ
15. Over Drive / JUDY AND MARY
16. GLAMOROUS SKY / NANA starring MIKA NAKASHIMA
17. さくらんぼ / 大塚 愛
DISC-2
1. 恋しさと せつなさと 心強さと / 篠原涼子 with t.komuro
2. PIECES OF A DREAM / CHEMISTRY
3. 夏を待ちきれなくて / TUBE
4. GOING GOING HOME / H Jungle With t
5. HIGH PRESSURE / T.M.Revolution
6. Bomb A Head! / m.c.A・T
7. 大切なあなた / 松田聖子
8. No.1 / 槇原敬之
9. 亜麻色の髪の乙女 / 島谷ひとみ
10. TOMORROW / 岡本真夜
11. KNOCKIN' ON YOUR DOOR / L⇔R
12. 翼をください / 川村かおり
13. だってそうじゃない!? / LINDBERG
14. 夏祭り / Whiteberry
15. 愛のために / 奥田民生
16. DNA / 川本真琴
17. ワダツミの木 / 元ちとせ
クライマックスうるうる平成J-POP
●Blu-spec CD2 ●2枚組 ●全31曲 ●¥2,970(税込)●Now on Sale!
DISC-1
1. LOVE LOVE LOVE / DREAMS COME TRUE
2. TRUE LOVE / 藤井フミヤ
3. Hello, Again~昔からある場所~ / MY LITTLE LOVER
4. secret base ~君がくれたもの~ / ZONE
5. 優しい雨 / 小泉今日子
6. ハナミズキ / 一青窈
7. fragile / Every Little Thing
8. ひとり / ゴスペラーズ
9. Can't Stop Fallin' in Love / globe
10. Squall / 松本英子
11. ドルフィン・リング / 杏里
12. ZUTTO / 永井真理子
13. 花 / ORANGE RANGE
14. あなたのキスを数えましょう~You were mine~ / 小柳ゆき
15. 瞳をとじて / 平井 堅
DISC-2
1. メロディー / 玉置浩二
2. Swallowtail Butterfly~あいのうた~ / YEN TOWN BAND
3. 人魚 / NOKKO
4. プライマル / ORIGINAL LOVE
5. さよなら大好きな人 / 花*花
6. my graduation / SPEED
7. 壊れかけのRadio / 徳永英明
8. M / プリンセス プリンセス
9. 強く儚い者たち / Cocco
10. You're the Only… / 小野正利
11. 明日への扉 / I WiSH
12. 冬のファンタジー / カズン
13. 最後の雨 / 中西保志
14. 悦びに咲く花 / ACO
15. 桜 / 河口恭吾
16. SEASONS / 浜崎あゆみ
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【Part2】|クリス松村が語る平成J-POPの愉しみ方
インタビュー
2022.12.9