2022年10月号|特集 70年代女性SSW

第1回 金延幸子|70s女性シンガーソングライター名鑑

コラム

2022.10.3


金延幸子『み空』
1972年9月1日発売

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どの時代を生きる人たちにも真っ直ぐに届く素直で伸びやかな声

 作詞・作曲・編曲と分担業が主流だった時代、女性ミュージシャン自ら曲を作り歌うSSW(シンガー・ソングライター)は主流の中ではまだ珍しく五輪真弓、荒井由実も1972年にデビューしているが、金延は彼女たちより年上であり金延の過ごしてきた時代背景を鑑みても女性SSWの草分け的存在とも言えるだろう。時代を超えた名盤といわれる作品の数々には長い時間を経ても未来の人たちに響く“何か”が内包されているように思う。その“何か”は端的に言ってしまえば普遍ということなのかもしれないが、普遍とはどの時代であれ“今”を生きる人たちに瑞々しさを与えるものだと思っている。
 ’72年、インディーズレーベルURCより発売された金延幸子1stアルバム『み空』もそのひとつであり、彼女の眼差しを通して見る景色や人間の持つ複雑な情感がシンプルに詩的に綴られた歌詞とたゆたうようなメロディ。またそれらを活かす衒いのない素直で伸びやかな“声”こそ、どの時代を生きる人たちにも真っ直ぐに届く要因のひとつであるように思う。以前より交流のあった細野晴臣にアルバムプロデュースを依頼、エンジニアに吉野金次、プレイヤーとしても参加している細野晴臣、また林立夫、中川イサト、鈴木茂(吉野金次も1曲チェレスタを弾いている)というサウンドメイキングにも長けたメンバーと共に作られた賜物のような1枚。

文/見汐麻衣