2022年9月号|特集 再生!アナログレコード

第1回:大貫妙子『MIGNONNE』|GREAT TRACKS アナログ傑作選 レビュー

レビュー

2022.9.1


大貫妙子
『MIGNONNE』
1978年5月23日発売 ※オリジナル盤発売日

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Side-A
1. じゃじゃ馬娘
2. 横顔
3. 黄昏れ
4. 空をとべたら
5. 風のオルガン

Side-B
1. 言いだせなくて
2. 4:00A.M.
3. 突然の贈りもの
4. 海と少年
5. あこがれ

アナログらしい優しくしなやかな音で、ヨーロッパ志向の萌芽も伺える3作目

山下達郎とのシュガー・ベイブ解散後ソロに転じた大貫妙子の1978年発表のソロ3作目。

本作は長い間本人にとっては“失敗作”という思いが強かったようだ。ところが2018年にバーニー・グラントマンのリマスターによるアナログ復刻盤を聴いた大貫は“嫌なところがどこにもない”と感じ、本作の普遍的な日本のポップスとしての変わらぬ輝きを再認識したらしい。どうやら“失敗作”という本人評価は撤回されたようだ。今回発売のアナログはその時と同じマスターを使っている。アナログらしい優しくしなやかな音だ。

前作『SUNSHOWER』と並びシティポップの名盤として定評のある作品である。だがファンキーでグルーヴィーで若やいだ華やかさのある前作に対して、本作はアレンジがシンプルになり、ストリングスなども加え本人の歌唱も大人の落ち着きが感じられる。次作以降で顕在化するエレガントなヨーロッパ志向の萌芽がうかがえ、従来のアメリカン・ポップスやフュージョン~AOR志向との端境期にあるアルバムという印象もある。過渡期の作品とも言えるが、だからこそ微妙な陰影に彩られた本作は他にはない魅力がある。

文/小野島大