2022年8月号|特集 郷ひろみと音楽

【Part1】川江美奈子(シンガーソングライター)|Letter to GO ~ 郷ひろみへの作品提供者からの手紙

コラム

2022.8.1



郷ひろみ様

暑い日が続きますね。お変わりありませんか。

先日の国際フォーラムでのライヴ、拝見しました。いやぁもう!素晴らしかった!!世の中の皆さんが抱く「郷ひろみ」への期待に完璧に応えつつ、さらにそこを軽々と超えてハッとさせてくれるような、濃厚なパフォーマンスでした。どれほど日々ストイックに己と向き合えば、この境地へ辿り着くのだろうと、またもや「裏・郷ひろみ」に思いを巡らせてしまいました。

私が初めて楽曲提供(シングル「ありのまままでそばにいて」)をさせて頂いたのは2008年。それ以来、お忙しいひろみさんとお目にかかれるのは数年に一度、という感じですが、いつお会いしても風のようにさらっとそこに現れ、ひととき相手の目をまっすぐに見て笑顔でお話しされ、また魔法のように去って行かれる。私はひろみさんのその不思議な魅力の謎を知りたくて、いつぞや少し失礼な質問をしました。「ひろみさんもさすがにプライベートでは力を抜いてだらっとなさったりするのですよね?」と。すると「川江さんボクはね、ずっとこのままなんです。24時間郷ひろみなんですよ。それが別段つらくもなく、ずっとそうやって生きてきたんです」と確かそんなふうにお答えになったと思います。四六時中どこから切り取っても郷ひろみで居ること。そう心がけているでもなく、当たり前なのだと。

それって大変そう…とその時の私は安直に思いました。あれからまた時を経て、先日のひろみさんのライヴを観て、考えが変わりました。ステージでのトーク、歌、佇まい、お客さんとのやりとりすべてにものすごく「人間・郷ひろみ」を感じたからです。大先輩に向かって生意気を承知で言うなら、ひろみさん、何か重いヨロイを脱いだみたいに柔らかくなられた…という感じ。ストイックであればあるほど、変化していくのも難しいはずなのに、なんと素敵に歳を重ねていらっしゃるのでしょう。今こそまさに、心から自由に「郷ひろみ」を楽しんでいらっしゃるのではないか、そんなふうに感じたのでした。

ひろみさんがデビューされた1972年に、私は生まれました。人生の街の中にいつもひろみさんの歌がありました。ブラウン管TVの時代、おもちゃのマイクで合わせて歌った幼い自分が、大人になって大先輩と巡り合い、音楽で繋がれる、こんな幸せなことはありません。最新シングルのカップリング曲「約束」は、この50年のあいだ「郷ひろみ」さんに惹かれてきたすべての方とひろみさんご自身を繋ぐ楽曲にしたい、という思いで書かせて頂きました。リリースに先駆け、ステージでフライング披露してくださったその歌は、もう長年歌われてきたかのようにすっかり郷ひろみさんのものとなっていて、うわぁと胸がいっぱいになりました。永く響いていく曲になったら嬉しいです。

そうそう!先日のステージではJAZZYなテイストも見せてくださいましたね!思わず釘付けになった私。次回チャンスがあれば私も是非そんなグルーヴィな曲書き、トライさせて頂きたいです!私はこれからも郷ひろみさんという方の魅力に触れるのが、楽しみで仕方がないのです。また風のように現れて、元気をください。そしてひろみさんご自身も誰かに元気をもらって、心やすらぐ時がありますように。残暑の折、どうぞお身体にお気をつけてお過ごしくださいね。

川江美奈子



川江美奈子(かわえ・みなこ)

●東京生まれ。シンガーソングライター

シンガーソングライターとして歌い続けながらも、
数多くのアーティストに楽曲を提供している。
これまでに書き下ろしたアーティストは、
郷ひろみ、中島美嘉、今井美樹、一青窈、平原綾香などと実力派ばかり。
ピアノを弾き、歌う、その声は時代に流される事はない。
また、楽曲を提供してきたアーティスト達からも信頼が厚いその作品力は、
心が織り成す風景を丁寧に描き出す作風で、多くの支持を集める。

実力派アカペラグループTRY-TONEのメンバーとしてデビュー。
その後留学を決意し、米国バークリー音学院を卒業。
'99 年に帰国、様々なアーティストへの楽曲提供を始める。
'04 年10 月 ドリーミュージックより「願い唄」で、
シンガーソングライターとしてメジャーデビュー。
現在までに5枚のアルバム(内1枚は朗読アルバム)と6 枚のシングルをリリース。

www.minakokawae.com

川江美奈子|郷ひろみへの主な提供曲:
2008年10月29日発売91thシングル「ありのままでそばにいて」作詞・作曲
2010年10月20日発売95thシングル「愛してる」作詞・作曲
2022年8月3日発売108thシングル(カップリング)「約束」作詞・作曲