2022年8月号|特集 郷ひろみと音楽

第1回 郷ひろみ『男の子女の子』|郷ひろみを知るための厳選オリジナル・アルバム22枚

レビュー

2022.8.1


郷ひろみ
『男の子女の子』
1972年11月1日発売

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1. 男の子女の子
2. 理由なき反抗
3. せのびした16才
4. 愛の教室
5. 言えない友達
6. 夢をおいかけて
7. トゥー・ヤング
8. 涙のくちづけ
9. ゴー・アウェイ・リトル・ガール
10. 約束の海
11. 虹の世界へ -ひろみと共に-
12. おしゃべり


「男の子女の子」の意味に最も近づいた楽曲はジャスティン・ビーバーの「ベイビー」。

とにもかくにも声、である。誰もが郷ひろみの歌唱の特性を知る今となっては想像しがたいが、何かしらのエフェクターを通したように聴こえる唯一無二のヴォーカルは、リアルタイムにおいては歌謡界に飛び込んできた異物という認識すら覚えさせたに違いない。その喉を新たな楽器として解釈した筒美京平は、確信犯的に過剰なシュガーコーティングを施し、アイドル歌謡の新時代を切り開く。この1stアルバムは、筒美作品を軸に、ゴフィン&キングの「ゴー・アウェイ・リトル・ガール」、ナット・キング・コールの名唱で知られる「トゥー・ヤング」など、洋楽カヴァーも含めて構成されている。ところで、デビュー時の愛くるしいキャラクター、イメージを変化させつつスターの座を維持し続けたその後のキャリア、そして、何よりも存在自体がはらむ巧まざるユーモアなどを考え合わせると、「男の子女の子」の持っていた意味に最も近づいた楽曲は、ジャスティン・ビーバーの「ベイビー」なのではないか。

文/下井草秀