2022年6月号|特集 大江千里
【PART11】作家・大江千里アンソロジー 第11回:「朝寝坊は三文の得」(「月刊カドカワ」より)
コラム
2022.6.30
音楽家としてだけでなく、文筆家としてもユニークな筆致で定評のある大江千里。その魅力に触れるシリーズのラストは、文章ではなく「月刊カドカワ」に掲載されたコミック。
※解説
初めてのコミック「朝寝坊は三文の得」は、江口寿史先生の仕事場を借りて、ご指導いただきました。「人の原稿でもできあがると嬉しいですね」と江口先生。ちなみに、十里庵はコミックを描くときのペンネーム。
【作家・大江千里アンソロジー・まとめ】
さて、いかがでしたか? 作家・大江千里アンソロジー。1990年に刊行された最初のエッセイ集『レッドモンキー・モノローグ』のあとがきにはこんなことが書かれている。
「半信半疑でぼくの指に握られた鉛筆は、ここまでコトが大きくなろうとは夢にも思わなかっただろう。しかし、なんと豪華なフェイントだろう。なんといい加減でグラマーで、そしておそれおおく仮名も多く、なんと門限破りのうんこずわりだったことか。めでたい。 ――中略―― これは新種の紙面格闘技である。制約なし。ルールなし。躊躇もなし。朝、昼、夜、関係なし。ただひとつ、紙はコクヨのケー10、20×20をたわわに使った。考えてみると、一年の生活の基本にあるのは移動である。動きながらモノを考え、その軌跡がこうやって一つ形になったのだから、はからずしてビデオや記録映画とはまたちょっとちがった、貴重なムコ入り道具になってしまった」
32年分の軌跡は、その都度いくつかの本になっている。今読んでも決して色褪せないのは、いつも現在進行形で頭をめぐらせ、心を動かす大江千里そのものが、ときには溢れそうになっても、文字に定着させているからだろう。しかも、エンターテインメントにすることを忘れない。それは、本当に、たぐい稀な能力だと思う。
「目で耳で皮膚でざっくり楽しんでもらうと、こいつは必ず育ちます」
ぜひ、読んでみてくださいね。
「作家・大江千里アンソロジー」監修・松山加珠子