連載|私が欲しいレコード

第24回【能町みね子】 エッセイスト/イラストレーター

2022.4.18

第24回【能町みね子】 エッセイスト/イラストレーター

ケースの中にはまるくてなかなか重みのある円盤が入っているわけで、それが黒くなかったりしたらまた最高。ピクチャーレコードだというだけで購買意欲がバカ増ししてしまう。



 音楽について「初めて買った○○」という話をするとき、レコードと言うかCDと言うかで年齢がバレてしまう。私はギリギリ、初めて買ったのが「CD」の世代なのである。若さアピール?いや、もはやそうでもないですね。現代はとっくにストリーミングが行き渡っている。「音楽を買う」という概念すら希薄になってきたし、「初めて買った○○」の話はそのうちできなくなるのかな。ちょっとさみしいな。

 ちなみに、初めて買ったCDは小学生の時、たまのアルバム『さんだる』です。イカ天そのものは深夜だから見ていなかったけど、たまのブームは小学生にも降りてきていたのだ。

 音楽をCDで揃えていた私がアナログに手を出したのは、なんのことはない、「なんかオシャレな感じがするから」という程度のものでした。実家にあった父の古いレコードプレイヤーをもらって、ジャケットが気に入ったものはレコードで買ってみよう、と思ったのだ。初めて買ったレコードは、記憶が確かならばTahiti 80の『Puzzle』じゃないかと思う。


Tahiti 80『Puzzle』
(1999)



 以降、特にマニアというわけじゃなく、なんとなくアナログで欲しいなあと思うものをたまに買うという程度の意欲で、レコードはごくわずかずつ増えています。最近は趣味が回りに回って、ディスクユニオンで、日本各地の民謡とか、なんだか分からない企画ものとかのドーナツ盤を買うようになってしまいました。
 私が欲しいと思うレコードの条件は、ジャケットの良さが相当な割合を占めています。円盤そのものが強烈なものはもっとです。

 なぜレコードが欲しいかって、「大きいから」「物(フィジカル)だから」にほかならない。ジャケットを眺めたい、絵として楽しみたい、という要素がかなり大きい。この大きさの写真や絵を買うと思えばかなり安いし、なんたって音まで出る。最高。ケースの中にはまるくてなかなか重みのある円盤が入っているわけで、それが黒くなかったりしたらまた最高。ピクチャーレコードだというだけで購買意欲がバカ増ししてしまう。聴かずにしばらく撫でたり匂いを嗅いだりしてしまう。

 だから私は、とにかくみんなもっと色の付いたレコードかピクチャーレコードを出してほしいと、そういうことです。透明で鮮やかな色のLPはゼリーみたいで、いくら眺めても飽きない。Luke WylandのソロユニットであるAUの『Verbs』というアルバム、私はCDで持っているんだけど、ピンクがかった乳白色のLPも出ているようで、これが写真で見ると寒天みたいでたまらない。ほしい。


AU『Verbs』
(2008)



 “colored vinyl”で画像検索すると、いろんなアーティストがマーブル柄とか集中線のような柄とか、様々な円盤を出しています。私はそういうものをさほど持っていないのだ。なにせレコードを「盤面の模様でサーチして購入する」なんて方法はなかなかないから、調べ方も難しいのだ。

 サイケデリックな曲が、美しいマーブル柄の盤面から流れ出てくるレコードを探してます。特定のミュージシャンにお願いしたいわけではなく、盤面の柄からして唯一無二の、私にとって最高の一枚を探してます。





能町みね子 最新情報

新刊に、愛猫・小町のことを描いたエッセイ『私みたいな者に飼われて猫は幸せなんだろうか?』(東京ニュース通信社)、卒園までの半年間を5歳の目線で描いた小説『私以外みんな不潔』(幻冬舎文庫)、「週刊文春」の時事コラム連載をまとめた『皆様、関係者の皆様』(文春文庫)、「散歩の達人」のお散歩連載をまとめた『ほじくりストリートビューザ・フューチャー』(交通新聞社)など。


『私みたいな者に飼われて猫は幸せなんだろうか?』(東京ニュース通信社)



『私以外みんな不潔』(幻冬舎文庫)



『皆様、関係者の皆様』(文春文庫)



『ほじくりストリートビューザ・フューチャー』(交通新聞社)