2026年10月号|特集 TOKYO CITY POP
①高中正義『SEYCHELLES』|シティポップの-New Standard-名盤21
レビュー
2026.10.1
文/油納将志

高中正義
『SEYCHELLES』
1976年7月1日発売
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01. OH! TENGO SUERTE
02. トーキョーレギー
03. 蜃気楼の島へ
04. 憧れのセーシェル諸島
05. FUNKEE MAH-CHAN
06. サヨナラ・・・・・・FUJIさん
07. バードアイランド急行
08. TROPIC BIRDS
発売から50年“New Standard”として鳴り響かせる理由は…
サディスティックスの一員として活動していた高中正義が、’76年7月に発表した初のソロ・アルバム。日本でまだ「フュージョン」という呼称が一般的ではなかったクロスオーヴァーの時代に、訪れたことはなかったというインド洋のセーシェル諸島を、東京のスタジオで音楽に変えた架空のリゾート・サウンドである。
後年の鮮烈なギター・ヒーロー像とは趣を異にし、歪みを抑えた瑞々しいトーンが示すように、本作の真価は歌と楽器の境界を軽やかに行き来するポップスとしての佇まいにある。冒頭の「OH! TENGO SUERTE」ではTAN TANの伸びやかな歌声が軽快な演奏に溶け込み、「トーキョーレギー」では高橋ユキヒロの詞を高中自身が歌う。東京を冠したこの歌と、「憧れのセーシェル諸島」で言葉の代わりに叙情的な旋律を紡ぐギター。歌声と楽器の双方が主役を担う点に、本作ならではの豊かな輪郭がある。
林立夫のドラム、後藤次利の弾むようなベース、今井裕のキーボードに多彩なパーカッションが重なる演奏陣は、曲ごとに表情を変える。その白眉が約9分におよぶ終曲「TROPIC BIRDS」だ。井上陽水も加わる序盤のコーラスから、ジェイク・H・コンセプションのサックス、複雑なキメを伴うスリリングな展開へと進み、穏やかなリゾート像を鮮やかに揺さぶる。
心地よいリラクゼーションに安住せず、大胆な構築美までを呑み込んだこの音楽的振幅こそが、半世紀を経たいま『SEYCHELLES』を“New Standard”として鳴り響かせる理由だ。

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