2026年9月号|特集 Chara
第3回:映画『スワロウテイル 4Kリマスター』|Chara 35th Anniversary 2025-2026
スペシャル
2026.9.9
文/大窪由香

『スワロウテイル 4Kリマスター』 ©SWALLOWTAIL PRODUCTION COMMITTEE
第3回:映画『スワロウテイル 4Kリマスター』
「だいたいの涙は我慢しなくていいと思っているんだけど、なんかちょっと私は我慢しようっていう感じで、涙を我慢して観てたかな。(なんで? と聞かれて)わからない。それが私の性格」
Charaがそう答えたのは、9月4日にTOHOシネマズ日比谷で開催された映画『スワロウテイル4Kリマスター』の初日舞台挨拶でのこと。それを聞いた時に、30年ぶりにグリコに出会った気がした。
’96年9月に公開された岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』で、Charaが演じたグリコは、“円都(イェンタウン)”と呼ばれる無国籍都市で生きる娼婦出身の歌姫。過去を背負いながら、歌うことで自分の居場所をつくり、フェイホン(三上博史)とともに夢を追いかけていく。一方で行き場のない少女(伊藤歩)を受け入れ、彼女にアゲハという名前を与える。アゲハにとってグリコとの出会いは、人生そのものを変える出来事だった。そして、グリコもまたアゲハと出会ったことで変わっていく。アゲハは彼女が守るべき存在であると同時に、グリコ自身の人生を映し出す存在にもなったのだ。映画『スワロウテイル』は、“愛”“別れ”“夢”“喪失”、そして人と人が出会うことによって人生が変わっていく、そんな物語を描いている。グリコは自分の感情をすべて言葉にする女性ではなかった。むしろ言葉数が少ないゆえに、その沈黙や表情、視線や立ち姿に感情がにじんでいた。だからこそ「涙を我慢して観てた」というChara自身の言葉に、30年前のグリコの面影が重なったのだろう。